渡り鳥たちの姿を見る場所を引き継いでゆこう
2016/01/15
自然保護室の前川です。
昨年末、40年近い歴史をもつ千葉県市川市の行徳野鳥観察舎が閉鎖となりました。
施設の老朽化と耐震基準を満たしていないことがその理由です。
県の行政改革審議会の中でも、すでに廃止の方向で検討が進められており、耐震補強や再開の予定はありません。
これに対し、東京湾の干潟やシギ・チドリなどの渡り鳥の保全、またその観察などに取り組む市民団体が、観察舎の存続を求める声を上げました。
行徳鳥獣保護区でこれまでに確認された野鳥は、およそ250種。かつて東京湾に面していましたが、周辺の埋立が進んだ結果、内陸に取り残された形の湿地になりました。
戦後の急速な開発により、干潟の実に8割が消失した東京湾にあって、まさに貴重な野鳥の楽園といえるでしょう。
行徳の観察舎が建設されたのは、1979年
私が訪れたのも20年以上前になりますが、この建物が高い位置から行徳の湿地を広く見渡せる、数少ない場所の一つであり、自然観察の大事な拠点であったことは、間違いありません。
今回の件は、保護区を開発する、というようなものではありませんが、こうした貴重な観察場所が失われることで、人が自然とふれあい、理解する機会が減ることは確かです。
また、保全の施策に必要なノウハウを蓄積する上でも、こうした場所は貴重な鍵になるといえるでしょう。
それにもかかわらず、行政改革による判断の中には、これに逆行する動きが見られます。
大阪南港野鳥園(大阪市住之江区)では、経済的合理性が低いことを理由に、2013年に一部施設の閉鎖と職員の常駐が廃止されました。
人と自然とのふれあいの価値や、人の関心、蓄積されたノウハウは、直接的な経済価値だけでは判断できません。
私たちWWFジャパンも、1月15日付けで県知事宛に要望書を提出しました。千葉県には長期的な視点で、観察舎の存続の再検討を期待します。
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