ゾウに乗って、ゾウにおびえて、キャンプして...


自然保護室の川江です。
先日、WWFジャパンが支援するインドネシアのブキ・バリサン・セラタン国立公園に行ってきました。

今回の目的は、プロジェクトの進捗確認と来期の計画作りだったのですが、フィールドでは予想外のことが起こるのが常。今回も色々なことが起きました。

まずは支援活動の1つである植林の現場の視察です。
植林面積は合計90haにおよび、国立公園の周りを取り囲むように長く続いているため、歩いて見て回るのはなかなか大変。

そこで、ゾウパトロールで活躍するマフート(ゾウ使い)に協力してもらい、ゾウの背に乗って視察に向かいました。

このゾウ乗り、最初は楽しいのですが、上り道や下り道ではゾウからずり落ちないように、マフートの背中にしがみつくのに必死です。

そして、その日の夜は地域コミュニティーのパトロールにも参加。農作物が野生のゾウに荒らされないようにするもので、国立公園と畑の境界付近にある小屋で見張りをします。

見張りが終わりそろそろ帰ろうとしている時、他のパトロール隊から携帯に電話が...

「今、そっちの方に野生のゾウが向かったから、気をつけろ!」

野生のゾウは気性が荒く、帰る途中に遭遇するととても危険。そこで見張り小屋での一泊が決定しました。

ゾウ撃退用の花火をかまえながら、こんな小屋なら建物ごとゾウに倒されるんじゃないかとソワソワしてほとんど眠れません。ちょっと野生のゾウを見たい気もしましたが、幸いにもゾウは現れず、朝になり無事村に帰ることができました。

これに懲りず、翌日は野生動物の生息調査を視察するため、国立公園の山岳地帯へ。

森の中を山登りしながら、途中何度か休憩していると、ヒルが長靴やズボンをつたって服の中へ入り込み、完全防備していたのにお尻をかまれました。

日が暮れると次はトラの活動時間になるので、夕方5時ごろにはキャンプ地を決めてテントを張ります。

みんなでご飯を作って、ワイワイ盛り上がって、さあ寝るぞと思ったら、現地スタッフが寝袋を忘れ、今度は寒くて寒くて眠れません。結局私を含めた3人は朝までブルブル震えていました。

1週間のフィールド視察を終えて、現地事務所に戻って来たのは、土曜日に日付が変わった深夜3時半。フィールドの大変さ、楽しさを、改めて実感する機会になりました。

関連情報

ゾウの背に乗って植林地へ

一泊した見張り小屋。野生ゾウ接近の知らせがあるまでは、和やかな雰囲気でした。

テント設営中

森で見つけたマレーバクの足跡

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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