日本の水田の自然を守る取り組みについて
2018/02/17
先日、事務局で「水田・水路の生物多様性と農業の共生プロジェクト」についてのプレゼンテーションをしました。
WWFには、自然保護活動の担当者だけでなく、総務や募金、支援者の方々への対応などを仕事とするスタッフも多くいます。
活動をサポートするこうした仲間たちにも、現場のことをしっかり伝えるため、お話しする機会が設けられているのです。
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九州大学の調査チームによる、投網を使った水田での調査
私が今回話をしたこのプロジェクトは、日本の貴重な生態系を守る取り組みで、特に危機が深刻な水田の自然や、そこにすむ魚類の保全を目指しています。
水田はもともと人が作り出した「二次的な自然」ですが、その環境だからこそ生きられる動植物は少なくありません。
そして、この二次的な自然が今、各地で危機に瀕しています。
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水路の深いところはこんな感じ。調査も大変です。
「メダカが絶滅危惧種になった」というお話を聞かれたことのある方もいらっしゃると思いますが、そうしたニュースもこの危機の顕れです。
そんな状況の中で、私たちはプロジェクトのフィールドとして、九州北部の水田地帯を選び取り組みを始めました。
ここはカネヒラやアリアケスジシマドジョウ、ヤマノカミなど、絶滅が心配される淡水魚が今も息づく、国内でも屈指の豊かな自然が残る地域です。
すでに現地では、九州大学の鬼倉徳雄先生のご協力のもと、140地点で魚類の調査が進んでおり、調査全体の4分の1が終わりました。
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調査で確認された魚。外来種の魚も獲れます。下は希少なタナゴの一種カネヒラ。
目指すのは、この情報を基に希少な生物が集中する「重要なエリア」を明らかにする地図を作ること。
そして、日本の水田保全のモデルとなるような取り組みを実施してゆくことです。
まだ始まったばかりですが、現場の様子などまたお伝えしてゆきますので、ぜひご注目いただければと思います。(自然保護室 並木)
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フィールドでの調査の様子。調査で捕獲した魚はその場で記録し、水に戻します。