国内初!宮城県で環境と社会に配慮した国際的養殖認証(ASC認証)カキが本審査入り
2015/10/29
記者発表資料 2015年10月29日
東日本大震災からの「暮らしと自然の復興」への大きな一歩
【日本、東京発】環境と社会に配慮した、責任ある養殖業を認証する国際的な認証制度、ASC認証の本審査を、宮城県漁業協同組合志津川支所の戸倉事務所が、11月12日~13日に、カキ養殖で受けることになりました。ASC認証は、世界で急速に拡大する養殖業による自然環境や地域社会(人権や労働等)への負の影響を最小限に抑えることを目的とした厳格な基準にそって養殖場管理や運営を認証する国際的な制度です。さらに認証を取得した養殖場で生産された水産物にエコラベルを付けて流通させることで、生産現場から食卓までのトレーサビリティを確保するとともに、消費者の選択により責任ある養殖業を支援し、自然環境の保全と地域の人々の暮らしを両立させようという仕組みです。
日本国内ではASCの認証を受けた例はなく、今回認証が取得されれば、国内初のASC認証養殖業の誕生となります。順調にいけば、来年初めにもASC認証を受けたカキが誕生することとなります。
今回、志津川湾でのカキ養殖業がASC認証の本審査に入ることは、WWFジャパンが2011年7月に着手した「暮らしと自然の復興プロジェクト」の着実な進捗の一つです。以前から、養殖の過密化を原因とするカキの成長不良や品質低下という問題に直面していた戸倉事務所は、2011年3月の東日本大震災以後、豊かな海の自然を守りつつ経済的にも持続可能な水産業の実現という真の復興をめざして、WWFジャパンと協働でプロジェクトを進めてきました。
同プロジェクトの一環として、志津川湾の環境および漁業経済調査を実施しつつ、主として漁協と漁業者の方と、震災後の養殖業のあり方について意見交換を続け、ASCという2010年に生まれたばかりの養殖認証の取得の可能性を検討し、その取得を目指して活動してきました。
WWFジャパン自然保護室水産担当の前川聡は、新しい認証制度であるASC認証をこれから日本国内で拡大してゆくにあたり、次のように述べています。
「世界的にみると、水産物に対する需要の拡大に伴い、養殖業は今後も成長を続けていくと予想されています。国内でも商品への差別化やオリンピック対応などを通じて、ASC認証に対する需要はますます増大していくと思われます。国内初のこの取り組みに当たっては、生産者側の準備態勢だけではなく、流通体制の整備から社会全体の持続可能な水産物に対するニーズを高めるなど、さまざまな課題がありました。戸倉のチャレンジをきっかけに、 ASC認証の意義や必要性が日本でも広まることを期待しています。」
WWFジャパン水産プロジェクトリーダーの山内愛子は、日本初の認証取得に次のようにコメントしました。
「国際的にも水産大国である日本で、地域の関係者を主体にASC認証を目指す取り組みが進んでいることは非常に意義のあるものです。持続可能な水産物の推進を日本の関係者がリードしていることにWWFは敬意を表します。」
また、今回のカキ養殖でのASC認証取得を受けることとなった、宮城県漁協志津川支所 支所長代理の阿部富士夫氏は日本初の認証取得に向けて、次のように期待をしています。
「南三陸戸倉では、ギンザケやワカメ、カキの養殖が盛んですが、とりわけカキについては震災前から過密養殖による生産性の低下が課題になっていました。震災からの復興に際しては、元に戻すという意味の復興だけではなく、「ここで生活していくための、よりよい未来を目指した持続可能な漁場環境作り」をしたいという思いが強くありました。しっかりとした漁場を作り同時に環境を守ることを通じ、戸倉のカキの価値を高めていきたいと考えています。」
今後、カキ養殖での認証取得には厳しい本審査とその後のパブリックコメント手続きを通過する必要があります。無事認証を取得した場合でも、その後の販売や更新手続きなどまだ多くの課題が控えています。WWFは関係者の協力を得ながら、これらの課題を一つずつ乗り越え、日本初のASC認証誕生に向け活動を続けてゆきます。
ASC認証について
ASC(水産養殖管理協議会)は、責任ある養殖業の認証制度を管理する、独立した国際非営利団体です。WWFとIDH(Dutch Sustainable Trade Initiative=オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援を受けて2010 年に設立されました。認証された製品に付けられるASCラベルは、その水産物が自然環境と社会への影響を最小限に抑えて育てられた製品であることを、消費者に約束するものです。
【ASC認証のこれまでの経緯】
2012年:最初のASC認証製品(ティラピア)が国際市場に流通
2014年:ASC認証サーモンが日本で販売開始
2015年:カキをはじめとする二枚貝の審査体制が整備
2015年9月1日現在:認証取得した養殖場の数:187か所・22か国(うち二枚貝は8か所・2か国) 認証製品数:3658製品(47か国)
暮らしと自然の復興プロジェクトについて
WWFはASC認証取得に向けた活動と同時に、災害時の緊急エネルギーとしても重要な自然エネルギー機器の設置支援や、南三陸町戸倉の環境、文化、暮らしを子どもたちに伝える環境教育・交流事業も行い、より深く関係者のニーズや関心を探るよう努めてきました。詳しくは下記のURLをご参照ください。
/activities/resource/cat1305/wwf_4/index.html
関連情報
お問い合わせ
WWFジャパン広報室 03-3769-1714 press@wwf.or.jp
ASC養殖場認証審査の概要およびご取材について
以下の日程・内容で公開審査を行います。ご取材希望の方は下記までこちらの申込書をお送りください。
- 日時:2015年11月13日 9:30集合~12:00
- 審査内容:ASC養殖場認証
- 審査対象者:宮城県漁協共同組合 志津川支所
- 審査対象:同支所 戸倉海域
- 集合場所:南三陸町戸倉波伝谷漁港 カキ処理場前
※ご取材に際しては、「ASC養殖場認証審査見学 申込書および誓約書」に同意のうえ署名してご提出いただく必要があります。
【取材受付】
アミタホールディングス株式会社 共感資本チーム 前田・藤本
- [TEL]075-277-0795
- [FAX]075-255-4527
- [E-mail]press@amita-net.co.jp
ご取材いただける場合は、11月12日までに上記連絡先までご連絡ください。