太平洋クロマグロ 2030年までに初期資源量の20%超まで 回復させる目標への合意を求める
2017/08/22
声明 2017年8月22日
太平洋クロマグロのより確実な資源回復に向けて
日本は、太平洋クロマグロの最大の生産国であり消費国です。現在、太平洋海域では、乱獲に起因するクロマグロ資源の深刻な枯渇が確認されています。資源量を評価する北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の最新の報告では、すでに初期資源(漁業が開始される以前の推定資源量)と比べ、2.6%まで資源が減少している「枯渇状態」にあり、かつ「過剰な漁獲が続いている」と指摘されています。しかし、太平洋クロマグロ資源を安心できるレベルまで回復させる長期的な計画はいまだ合意されていません。さらに、現在導入されている暫定的管理措置についても、漁業を行う際に、毎年十分に遵守されていない状況が報告されています。
2017年8月28日~9月1日に韓国・釜山で開催される、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第13回北小委員会」では、太平洋クロマグロの次期管理目標の策定と目標を達成するための漁獲方策が議論されます。ここでは、遅くとも2034年までに推定初期資源量の20%への回復を60%以上の確率で達成するような目標を立てることが期待されています。
4月のステークホルダー会議において、ISCより太平洋クロマグロの回復目標別の漁獲管理シナリオが、複数示されましたが、WWFでは、2030年までに推定初期資源量の20%を超えるレベルまで親魚資源を回復させる、という条件を満たす漁獲シナリオで合意すべきと考えています。
日本代表団からは、北小委員会と全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の合同会議に向けて、太平洋クロマグロの新たな漁獲規制案に方向性を提案しています。それによると、親魚資源量の回復目標達成確率が65%を超える場合、漁獲上限を増加させる、としています。
WWFでは、回復目標を達成する前に、漁獲上限を増大させることは、科学的な議論が十分されていない観点から、予防原則に基づいて、資源回復措置としては受け入れられないと考えております。
WWFは、北小委員会とIATTCの合同会議において、予防原則に従った長期的資源回復計画、また、資源の減少や漁獲圧増大の判断根拠となる、科学的根拠にもとづく限界/目標管理基準値、及び確かな資源回復を図るための漁獲管理方策への合意がなされることを切望しています。
WWFジャパン自然保護室海洋水産グループ長の山内愛子は、次のように述べています。
「WWFは少なくとも推定初期資源の20%への回復を達成するような目標が必要と考えています。太平洋クロマグロの最大の漁業国であり、かつ消費国として、日本は、確固たる資源回復計画に向けて行動する、大きな責任があります。また、日本をはじめ、漁業国の遵守徹底が図られていない現状から、より強固な監視・管理体制の構築が急がれます」
「WWFは、長期目標への合意ができず、管理措置への遵守徹底がなされていない現状では、太平洋クロマグロを漁獲対象とする商業的漁業は、一時的に停止せざるを得ないと考えます」
漁業関係者、流通関係者、NGOや政府などのステークホルダーが、太平洋クロマグロの確実な資源回復に向けて、大きな一歩を踏み出すことが何よりも望まれています。
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