60団体が共同声明!スマトラの熱帯林に新たな脅威


貴重な熱帯林の破壊が今も止まらないインドネシアのスマトラ島で、いまだに自然林原料に依存する大手製紙メーカー、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)社が、スマトラ中部に、世界最大規模ともいわれる新たなパルプ製造工場を建設しようとしていることが報道されています。周囲の環境・社会への配慮が問題視されるその操業に、世界中から批判が集まる中でのこの動きに対し、WWFを含む世界約60の団体は、同社への融資をしないよう求める共同声明を金融機関に向けて発表しました。

10年以上続くスマトラでの問題

インドネシアのスマトラ島で主に原料調達を行なう、シナル・マス・グループのアジア・パルプ・アンド・ペーパー社(以下、APP社)は、1984年にスマトラでパルプの生産を開始して以来、その関連会社と共に、これまでに約200万ヘクタールにもおよぶ熱帯林を、紙の原料調達のために破壊し、アカシアなどの植林地に変えてきたとされています。

貴重な熱帯林を大規模に皆伐することにより、生物多様性豊かな森林の価値が著しく損なわれていること、また周囲に暮らす人々との土地の利用権をめぐる争いなどからも、同社の原料調達のあり方に世界中で批判的な声と、市場の反応を受けています。

APP社は、こうした批判に対し、さまざまな環境保護や持続可能性に関する宣言を繰り返してきました。
2003年には、WWFの呼びかけと提案を受け、森林を適切に管理に関することに向けた同意書に調印。スマトラ島リアウ州およびジャンビ州にある、APP社のパルプ工場への原料木材の供給源となっていた森林の保全について、いったんは合意しました。

しかし翌年の2004年、この合意に基づき作成されたアクションプランには、保護価値の高い森林(HCVF)の保護や、地域住民との社会的紛争の解決、長期的な持続可能な木材供給の達成といった、根本的な問題点を改善する内容が含まれていないことが判明。その後も同社は、自然林伐採を一時停止するよう求める再三にわたる要望に応じていません。

認証機関も認めたAPPの操業問題

こうした問題について、世界的な森林認証制度であるFSC(森林管理協議会)は2007年、個別の森林区画や工場単位ではなく、企業単位でAPP社に対し一切の認証を停止することを発表しました。操業全体を見れば問題のある企業が、部分的な認証の取得を理由に、環境配慮をアピールした場合、認証制度自体の信頼性が損なわれる可能性があるためです。

その一方で、APP社は、PEFC-COCやLEI(インドネシアエコラベル協会)の認証を取得していることなどを根拠に、「持続可能な森林管理の実施」を主張してきましたが、同社が取得しているPEFC-COC認証は、あくまで加工・流通部門が審査対象であり、森林管理を対象とした認証ではありません。
LEIに関しても、LEIは「APP社の全操業データを持っているわけではない」と 、認証が部分的なものであることを認めています。

また同社は、2007年にはスマトラオランウータンの野生復帰が進められている、ジャンビ州のブキ・ティガプルの森で、約2万ヘクタールの自然林を皆伐。しかもその一部は、インドネシアの法律に反して行なわれた可能性が指摘されました。

こうしたAPP社による行為は、いずれも国際的な批判の対象となっており、WWFやグリーンピースなどの環境保全に取り組む団体のみならず、森林認証審査や保護価値の高い森林の調査などを行なう独立した第三者機関であるレインフォレスト・アライアンスや、FSCやPEFCといった組織・団体からも、問題の指摘や調査の要求が突き付けられています。

新工場建設に反対の声

このような状況にあるにも関わらず、APP社が、スマトラに世界最大規模のパルプ工場を建設予定であることが、製紙産業などのメディアで報道されています。

現在でさえ、工場の生産能力を満たすだけの植林木の原料調達が行なわれておらず、周囲の自然林への原料依存が続く中で、新工場建設により生産能力がさらに拡大されれば、残された自然林への脅威が、より高まることは確実です。

この新たな脅威に対し、世界の60を超える環境や開発などに関わる団体が、世界の金融機関へ向けて、APP社の新工場建設プロジェクトに対し、さまざまなリスクの観点から慎重な審査を求める声明を発表しました。

声明の内容はこちら

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