鳥獣保護法改正法案は、鳥獣が生態系の一部であることを見失っている
2014/04/02
生物多様性保全・法制度ネットワークとしての意見書
2014年4月2日
鳥獣保護法改正法案に対する意見
今回の法改正の目的は、数の増加と分布の拡大がとくに著しいシカによる被害対策である。とりわけ生態系に対する被害の深刻さが法改正の大きなきっかけとなっている。しかし、いかに大量・効率的に数を減らすかに目を奪われるあまり、シカも生態系の一部であるという科学的理解の基本が欠落したものとなっている。
そのため、「保護」は増やすか維持すること、「管理」は減らすことというように野生鳥獣への接し方を二項対立させ、「管理」される鳥獣は生態系の敵と言わんばかりの色分けをすることにつながっている。
さらに、改正法案で鳥獣の捕獲、販売等の許可を「生態系の保護のため」に制約する現行法の文言がことごとく削除されていること、鳥獣の生息地管理の推進についてまったく取り上げられていないことも、鳥獣と生態系を対立させる発想が反映した結果ではないかと疑われる。
野生鳥獣の「管理」の本来の意味は、鳥獣の数や生息地の範囲を一方向に操作するという狭いものではない。鳥獣を長期的に存続させつつ被害を軽減するために、数や生息地の伸縮を調整し、あわせて生息地管理と被害防除を行うことである。さらに、「管理」は生態系の反応をも考慮したものであるべきである。順応的管理が重要とよく言われるのもそのためである。
改正法案は、生物多様性の確保、生態系の保護という法律の根本的な目的からそれようとしている。一定のシカの数の減少と分布の縮小が必要であることはそのとおりであるが、その実現のためにも、鳥獣を生態系の一部として広い意味の管理の対象とすることを改めて明確にすべきである。
そこで、次のとおり、改正法案の修正されるべき点について意見を述べる。
- ※残された課題について
今回の鳥獣保護法改正法案は、「ニホンジカ、イノシシ等については、これまで以上に捕獲圧を高め、個体数を望ましい水準まで低下させるため、捕獲等を積極的に推進するための仕組みの構築」(環境省資料より)を行うためのものとされている。鳥獣保護法のカバーする施策のうち非常に限定された範囲の改正であることには留意が必要である。本法の適用される鳥獣の範囲、鳥獣の捕獲・販売・飼養規制等については、長らく本格的な見直しが行われておらず、次回の改正では是非取り上げられるべきである。
意見1(改正法案 第1条、第2条第2,3項関係)
鳥獣の「管理」は、鳥獣による人間の生活環境、農林水産業及び生態系に係る被害を防止するために、当該鳥獣の個体群を長期的に存続させつつ(ただし、当該鳥獣が外来生物の場合はこの限りでない。)、当該鳥獣の個体群管理(生息数を調整するための捕獲を含む。)、生息環境の管理及び被害防除を総合的に実施することとして定義するとともに、その趣旨を目的規定で明らかにすべき。
- ※上記「管理」概念を前提とすれば、被害が大きい場合に生息数を減少させることも、被害が小さい場合に個体数を維持・増加させることも「管理」に含まれる。したがって、「管理」の対概念としての「保護」をことさら定義する必要もない。
【改正法案の問題点】
・「管理」はmanagementの邦訳であるが、生態学者・鳥獣管理技術者は、「(ワイルドライフ)マネージメント」(日本語では「保護管理」、「科学的管理」または単に「(鳥獣)管理」と呼ばれる)の意味に用いている。
この「(ワイルドライフ)マネージメント」とは、鳥獣個体群の長期的な維持存続を図りながら、鳥獣による生活環境・農林水産業・生態系に対する被害を防止するため、個体群管理、生息環境管理および被害防除を総合的に実施することをいう。
今回の改正の方向性に関する平成26年1月中環審答申においても、「今回重点的に検討を行った、個体群の積極的管理を含む鳥獣の取扱全般を表す言葉として鳥獣管理という語を用いることとする。」とされており、そこにいう「鳥獣管理」は「(ワイルドライフ)マネージメント」の意味で用いられている。
また、生物多様性基本法第15条第2項は、「国は、野生生物が生態系、生活環境又は農林水産業に係る被害を及ぼすおそれがある場合には、生息環境又は生育環境の保全、被害の防除、個体数の管理その他の必要な措置を講ずるものとする」と定めているが、ここにいう「必要な措置」も「鳥獣管理」すなわち「(ワイルドライフ)マネージメント」を意味している。
ところが、法案の定義は、「管理」を単に生息数を減少させ又は生息地を縮小させることとするもので、「(ワイルドライフ)マネージメント」のごく一部を切り取ったものとなっている。このような「管理」概念は鳥獣管理の実務に混乱をもたらす。さらに、戦後、林野庁、環境庁、民間団体および文化人の努力によって鳥獣保護思想が国民に一定程度根付いているため、法案の「保護」には違和感をもたれ、同「管理」に対しては強い拒絶反応を引き起こすおそれもある。
・法案では、「『管理』とは、生物の多様性の確保、生活環境の保全又は農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に減少させ、又はその生息地を適正な範囲に縮小させることをいう。」とされているため(第2条第3項)、都道府県知事はもっぱら「農林水産業の健全な発展」を図る観点から、生息数の「適正な水準」を定め、生息数を減少させることができる。その場合、「適正水準」をゼロに設定することも可能と考えざるを得ない。鳥獣個体群の長期的存続を保障するよう「管理」概念を見直さない限り、個体群の地域的絶滅を許す法律になってしまう。
【改正法案の修正事項】
第一条
この法律は、鳥獣の保護及び鳥獣の個体群を長期的に存続させつつ、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止するための管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
第二条
1 (略)
2 この法律において鳥獣について「保護」とは、生物の多様性の確保、生活環境の保全又は及び農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に増加させ、若しくはその生息地を適正な範囲に拡大させること又はその生息数の水準及びその生息地の範囲を維持することをいう。
3 この法律において鳥獣について「管理」とは、生物の多様性の確保、生活環境の保全又は及び農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に減少させ、又はその生息地を適正な範囲に縮小させることをいう
鳥獣による人間の生活環境、農林水産業及び生態系に係る被害を防止するために、当該鳥獣の個体群を長期的に存続させつつ(ただし、当該鳥獣が外来生物の場合はこの限りでない。)、当該鳥獣の個体群管理(生息数を調整するための捕獲を含む。)、生息環境の管理及び被害防除を総合的に実施することをいう。
意見2(改正法案 第7条及び第7条の2関係)
特定計画を「1種」「2種」に区分すべきではない。現行法どおり1種類の特定鳥獣保護管理計画(改正後の名称は「特定鳥獣管理計画」)として実施すべきである。
・意見1の「管理」概念を前提とすれば、特定計画を「1種」「2種」に区分する理由はない。
・鳥獣を管理するための計画を、個体数増加・生息地拡大のための計画と個体数減少・生息地縮小の計画に2分することは非現実的である。
具体的な鳥獣の個体群は、空間的にも時間的にもダイナミックに変動する。例えば、ある個体群は全体としては孤立化が進んでおり分布を拡大する必要があるが、一部の個体が市街地で被害を出している状況があれば、その部分については分布を縮小する必要がある。また、分布拡大の計画を進めるうちに、時の流れの中で上記のような事態が生じることもある。
このような場合、1種、2種両方の計画を立てなければならないのか、1つならいずれを選ぶべきなのか、途中で切り替えが必要なのか等取扱にも混乱が生じ、行政事務の煩雑・重複等の非効率、時間・経費の無駄が生じるおそれがある。
したがって、鳥獣管理の計画制度を2種に区分することに合理性はなく、従来通り1種類の計画の中で、(生息地の範囲についてであれば)人間の土地利用との関係で凹凸をつけていくよう措置していくのが合理的である。
【改正法案の修正事項】
第七条
*法第7条は現行法どおりとする(改正法案第7条の2及び3は削除する)。ただし、「特定鳥獣保護管理計画」の名称は、「特定鳥獣管理計画」と改めるものとする。
意見3(改正法案 第18条の2第2,3項、第7条及び第7条の2関係)
・都道府県知事は、条例で定めるところにより特定計画の実施等に当たる「鳥獣保護管理計画官」(特定計画等に関する事務を行う、鳥獣管理の専門的技能及び知識を有する職員)を置くことができるものとする。
・「鳥獣捕獲等事業」を実施する者は、「鳥獣保護管理計画官」を置いた都道府県の知事の認定を受けることができるものとする(「鳥獣保護管理計画官」を置いていない都道府県では認定が受けられない)。
・「指定管理鳥獣捕獲等事業」は、「鳥獣保護管理計画官」を置いた都道府県又は国の機関が実施するものとする(「鳥獣保護管理計画官」を置いていない都道府県では「指定管理鳥獣捕獲等事業」を実施できない)。
【改正法案の問題点】
・改正法案が新たに設ける「鳥獣捕獲等事業の認定」(法案第14条の2)と「指定管理鳥獣の捕獲等事業」(法案第18条の2)とは、シカ等の捕獲効率化の2つの柱である。これらの方策は専門的知見を有する職員を配置している都道府県については効果を発揮するかもしれないが、そのような職員配置が進んでいないことがそもそも問題である。特定計画がこれまで成果を十分あげられなかったひとつの理由は、その策定・実施者である都道府県に鳥獣管理(ワイルドライフ・マネージメント)の専門家ポストがなかったことにある。
・ところが、法案によれば、捕獲等事業者の認定に当たっては、捕獲等(捕獲及び捕殺をいう(法第2条第3項)。)の技能・知識が要求されるに過ぎず(法案第18条の5第1項第3ないし5号)、鳥獣管理(ワイルドライフ・マネージメント)全体についての専門性、例えば鳥獣の生態・行動全般、生息地管理、被害防除等に関する技能・知識は担保されていない。それにもかかわらず、法案は「指定管理鳥獣の捕獲等事業」の「全部」の実施を認定捕獲等事業者に委託することができるものとしている(法案第14条の2第7項)。
これでは、捕獲が進みシカ等の個体数がある程度減少した段階で臨機応変に「ブレーキも利かせ」、または被害防除や生息地管理を巧みに組み合わせるよう「ハンドル操作する」といった対応は不可能である。個体群保全のために事業の実施を科学的見地から抑制もできる司令塔/安全装置として、鳥獣管理の専門家を配置することは必須である。
・都道府県に専門職員のポストが設けられれば、従来から環境省が実施している「鳥獣保護管理に係る人材登録制度」(鳥獣保護管理に関する取組について専門的な知識や経験を有する技術者を登録して、地方公共団体等の要請に応じて、登録者の情報を紹介する仕組み)と運用上リンクさせて専門技術者を供給することができるし、大学等における専門技術者等の養成も加速する。
【改正法案の修正事項】
第七条の〇:改正法案には無い規定
都道府県知事は、条例で定めるところにより鳥獣保護管理事業の実施等に当たる鳥獣管理計画官を置くことができるものとする。
2 鳥獣保護管理計画官には、都道府県職員であり、かつ環境省令で定める鳥獣の管理に関する専門技能及び知識を有する者をあてる。
3 鳥獣保護管理計画官は、以下の事項に係る業務を行なう。
一 特定鳥獣管理計画に基づく事業の監理
二 鳥獣捕獲等事業の認定にかかる事務
三 希少種保護事業、特定希少種管理事業、その他鳥獣保護管理に関して都道府県知事が定める事務
4 国は、都道府県による鳥獣保護管理計画官の配置及び維持に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。
第七条の二
2 第二種特定鳥獣管理計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 ~ 四 (略)
五 第二種特定鳥獣が指定管理鳥獣であり、かつ、第七条の〇の定めるところにより鳥獣保護管理計画官を置く都道府県又は国の機関が当該指定管理鳥獣の捕獲等をする事業を実施する場合においては、当該事業(以下「指定管理鳥獣捕獲等事業」という。)の実施に関する事項
第十八条の二
鳥獣の捕獲等をする事業(以下「鳥獣捕獲等事業」という。)を実施する者(法人に限る。以下「鳥獣捕獲等事業者」という。)は、その鳥獣捕獲等事業が第十八条の五第一項に規定する基準に適合していることにつき、第七条の四の定めるところにより鳥獣保護管理計画官を置く都道府県の知事の認定を受けることができる。
意見4(改正法案第9条第3項第2,3号、同条第5項、10条第1項第2号、第24条第9項第2号、第25条第6項第2号)
鳥獣の捕獲、販売及び輸出の許可に際し、環境大臣又は都道府県知事が「生態系の保護のため」に一定の制約を加えることができるとする現行法の定めを削除すべきでない
【改正法案の問題点】
・現行法では、鳥獣の捕獲、販売及び輸出の規制に関し、環境大臣又は都道府県知事が「生態系の保護」のためには、行為者に対し一定の制約を加えることができるものとされている。ところが、法案では、この制約をすべて取り払っている。
このような改正は、鳥獣保護法上の捕獲、販売及び輸出の規制が生態系の保護(生態系は生物多様性の一つの階層であり、鳥獣はその構成要素である)をも目的としていることを無視するものである。
【改正法案の修正事項】
・現行法第9条第3項第2号における「生態系に係る被害を防止する」を削除しない。
・同法同条同項第3号における「生態系の保護」を削除しない。
・同法同条第5項における「生態系の保護」を削除しない。
・同法第10条第1項第2号における「生態系の保護のため必要があると認めるとき」を削除しない。
・同法第24条第9項第2号における「生態系の保護のため必要があると認めるとき」を削除しない。
・第25条第6項第2号における「生態系の保護のため必要があると認めるとき」を削除しない。
意見5(改正法案第7条の3, 4関係)
・「特定希少鳥獣管理計画」(法案第7条の4)を定めようとするときは、その前提として、当該鳥獣に関する「希少鳥獣保護計画」(法案第7条の3)を定めなければならないものとすべきである。
その上で、前者を後者の下位計画と位置付け、「特定希少鳥獣管理計画」の作成に関する事項を「希少鳥獣保護計画」に定めるものとすべきである。
・「特定希少鳥獣管理計画」においては、希少鳥獣個体群の長期的存続を図るために特に十分配慮するものとすべきである。
・「特定希少鳥獣管理計画」を策定・実施する場合は、当該希少鳥獣の生息地の範囲において農林水産業を営む者の、その保護に関する理解と関心を深めるために必要な措置を講ずるものとすべきである。
【改正法案の問題点】
・鳥獣保護法上の希少鳥獣の選定は、事実上レッドリスト絶滅危惧1・2類から行われており、種の保存法の国内希少種の選定候補も同様である。つまり、鳥獣保護法上の「希少」性と種の保存法上の「希少」性(絶滅のおそれ)とは基本的に異なるところはない。
この点、種の保存法が独立した法律として制定され、希少種について特別な措置を講じていることを考えれば、鳥獣保護法上の「希少鳥獣」についても同法上特に手厚い保護を図らなければ、法律間で趣旨が一貫しないというべきである。
ところが、法案では、「特定希少鳥獣管理計画」(特定地域において希少鳥獣の生息数を減少させ又は生息地の範囲を縮小する計画)を立てようとする場合(改正法案第7条の4)、当該鳥獣全体についての「希少鳥獣保護計画」(同第7条の3)を必ずしも立てていなくても構わないこととなっている。これでは、「希少鳥獣」として特に保護されるべき鳥獣のカテゴリーを設定した意義が失われると言わざるを得ない。このような制度のもとでは、希少鳥獣の絶滅のおそれがますます高まる懸念がある。
【改正法案の修正事項】
第七条の三
1 (略)
2 希少鳥獣保護計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 希少鳥獣の種類
二 希少鳥獣保護計画の計画期間
三 希少鳥獣の保護が行われるべき区域
四 希少鳥獣の生息数の適正な水準及び生息地の適正な範囲その他希少鳥獣の保護の目標
五 第七条の四第一項に規定する特定希少鳥獣管理計画を作成する場合においては、その作成に関する事項
五六 その他希少鳥獣の保護を図るための事業を実施するために必要な事項
第七条の四
環境大臣は、特定の地域において、その生息数が著しく増加し、又はその生息地の範囲が拡大している希少鳥獣がある場合において、当該希少鳥獣について希少鳥獣保護計画が定められており、かつその生息の状況その他の事情を勘案して当該特定の地域において当該希少鳥獣の管理を図るため特に必要があると認めるときは、当該希少鳥獣(以下「特定希少鳥獣」という。)の管理に関する計画(以下「特定希少鳥獣管理計画」という。)を定めることができる。
以上
改正鳥獣保護法に対する意見書 2014年4月8日
環境大臣 石原 伸晃 殿
(公財)世界自然保護基金ジャパン事務局長 樋口 隆昌
拝啓 時下益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。
日頃、自然環境の保全に関してご尽力を賜り誠にありがとうございます。
さて、今般、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(以下、鳥獣保護法)が「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(以下、改正鳥獣保護管理法)に改正され、内容も大きく改正されようとしております。
WWFジャパンでは、1999年の同法改正以来、度々、意見を述べさせて頂きましたが、今般の改正につきましても、以下ご意見申し上げます。
1)改正鳥獣保護管理法は、生態系の保全に関する配慮がされていない。鳥獣保護法は、生物多様性基本法の理念に従って、生物多様性の保全に寄与する内容であるべきである。
2)保護管理の基本的な考え方を「保護」と「管理」に分離して定義すべきではない。1999年の鳥獣保護法の改正により、著しく個体数が増加した動物、及び著しく個体数が減少した動物について、科学的計画的に保全管理する制度となっており、生態系の変化に応じて、適切にコントロールできる制度であった。即ち、生態系の変化に柔軟に対応できる仕組みであった。ところが、改正鳥獣保護管理法では、保護と管理に分離することにより、弊害が及ぶ生物に関する配慮が欠落している。例えば、ツキノワグマについては、四国の絶滅の恐れのある地域個体群や西中国山地のツキノワグマ個体群については、保護に重点を置いた取り組みが必要であるが、隣接する個体群を管理すべきクマとした場合、隣接する行政地域の取組に齟齬を生じる可能性があり、広域的な管理が困難になる。
3)増大するニホンジカやイノシシに関してダイナミックに個体数を減少させることについては、異論はない。しかしながら、鳥獣を保全、管理する各行政の担当部局に野生鳥獣を科学的計画的に分析、把握した上で、予算を確保することが可能な専門職官がおらず、専門官を配置する制度が欠落している。鳥獣保全管理計画官(仮称)の配置について努力する規定を設けるべきである。
4)十分に予算を担保することもセットで検討すべきである。これまでの特定鳥獣保護管理計画は、都道府県の限りある予算で取り組まれてきた。不十分な予算と適切な人員がいない状況の中で進めてきた結果が現在の状況である。必要とする予算が確保されない状況で実行するのは、実効性が伴わない可能性がある。
本件に関する問い合わせ先:
草刈秀紀(事務局長付)03-3769-1711、kusakari@wwf.or.jp