奄美大島エコツアーガイド認定制度講習 自然環境の持続可能な利用に向けた課題と協力体制にむけて 自然環境の保全の視点からの要望
2018/01/30
要望書
奄美大島や徳之島が世界自然遺産登録に向けて手続きが進む中で、今後の奄美群島全体での観光客の増加が見込まれております。これに伴い観光関連産業の発展とともに、地域社会・経済の振興につながることが期待されます。 一方で、奄美群島内では島ごとにその面積のスケールはさまざまであるものの、「閉鎖的な陸域生態系」と呼ばれる、限られた生き物同士が均衡したバランスの中ではぐくまれ、進化を遂げてきた世界的にもかけがえのない地域です。
この度のエコツアーガイドの認定制度が、群島内の自治体が参画する奄美広域事務組合により、民間の事業者らとの連携のもと企画実施されていることは、国内でも先進的な取り組みといえます。今後この地域の貴重な自然環境を地域の資源として、損なうことなく、その保全と利用が継続するエコツーリズムの実現することが期待されます。 2017年前期に開催されました第1回の研修内容を踏まえ、一層充実した研修内容となり、持続可能なエコツーリズムの実践体制となるよう、今後の実施に向け以下ご提案申し上げます。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
① 現在抱える奄美大島での環境課題の内容の充実
- 地域における外来生物の定着状況と在来種への具体的な影響の解説の充実
マングース、ネコ、アメリカハマグルマをはじめ様々な外来生物が地元生態系に影響を与えている事象や、地元の民間NPOらによる保全活動・啓発活動の取組みや自治体の条例及び規制制度に関する情報の追加 - ロードキルのデータやその発生状況に関わる情報の充実
自家用車、レンタカー、観光事業者を問わずロードキルの発生状況と安全運行ルールや方法に関する内容。また対策優良事例として他のエコツーリズム先進地の予防や規制事例情報 - 生息域において野生生物に影響を与える人間行動(特に車などの乗り物)に関する情報の充実
森林生態系(とくに夜行性生物)の生態学的情報と影響を与える光や音をはじめとした人間活動による要因とその予防策 - 離島の資源利用やごみ処理及び違法な廃棄の実態のデータ
観光客や住民を問わず、離島におけるゴミの処理または違法な遺棄の実態情報 - 地域の農業や開発による経年的な生息地の変化と在来生物への影響情報
希少植物や昆虫、爬虫類をはじめとした希少動物の島内での密猟、盗掘の問題と過去の摘発事例や流通の実態情報
② エコツアー実施にあたっての拡充すべき内容や事業者らによる保全への連携協力推進
- 観光客の参加者に対し、保全上の統一的な事前ガイダンスマニュアルの提供
- 入域の心構えや装備の案内の際、自然環境保全上の不適切な行為・要因となる内容説明。(例、ライトの使い方、声、トイレ、歩き方、衣服装備品、人数や年齢制限etc.)また、地域に生息する昆虫や爬虫類をはじめ、小型で俊敏性にかける希少生物の行動生態と影響を避けるための観察者の注意点
- 行政によるゾーニング計画や事業方針と観光産業の協力の重要性
今後増加が予想される車の往来に関し、重要地域・林道のゾーニングと利用規制ルールの検討。(科学的評価に基づくエコツアーやレンタカーの乗入れ・利用規制) - 観光事業者間での連携した広報活動の呼びかけ活動
パンフレット作製配布、利用客への説明内容の定期検討会合、住民向け啓発イベント実施など - 観光事業者による保全貢献活動や相互協力体制
地元の保全団体や行政との間で、希少種や加害生物に関する情報の収集・共有体制の構築、保全や普及活動の協働実施(住民や地元小中学生対象の、地元自然や生き物についての環境教育活動や体験ガイドツアーの開催など) - 環境保全への資金拠出の制度の検討
売り上げの一部を自然環境の保全維持に拠出する仕組みや基金の設立の検討及び、観光客への地元エコツアーの社会貢献性によるプレミアム価値の醸成効果。また参考となる他地域(例、富士山、慶良間、やんばるetc.)での実施事例勉強会や交流会合の開催など
以上