種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における亀岡市都市計画および京都スタジアム(仮称)計画に関する京都府知事および公共事業評価委員会委員長に対する意見書
2015/01/14
声明 2015年1月13日
京都府知事 山田 啓二 殿
拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、自然環境の保全にご尽力を賜り誠にありがとうございます。
(公財)世界自然保護基金ジャパンは、亀岡市において計画されている京都スタジアムの建設によって、国が天然記念物および国内希少種として保護している希少淡水魚アユモドキが絶滅することを危惧し、京都府知事および亀岡市長に対してその保護を求める要望書を平成26年4月23日付で提出させていただきました。
その後、京都府および亀岡市によって環境保全専門家会議が設置され、スタジアム建設に係るアユモドキ等への環境影響を評価し保全対策を講ずるための検討が行われており、その行方を注視してまいりました。
環境保全専門家会議においては、現時点でも、スタジアム建設に係るアユモドキ等の環境影響を評価するために必要な科学的データが十分に得られておらず、今後さらにどのようなデータ・調査が必要であるかについての議論が進められていると承知しております。
さて、京都府公共事業評価システムでは『京都府が実施する公共事業の効率性及び実施過程の透明性の向上を図るため、長期間を要している事業については、「再評価」、新規事業については「事前評価」を実施し、完了事業については「事後評価」を試行し、一連の過程で効率性・透明性を高める公共事業評価システムを確立する』としております。
本京都スタジアム(仮称)計画においても同様の事業評価がされるものと考えます。
前記した通り、環境保全専門家会議においては、環境影響を評価するために必要な科学的データが十分に得られていないと伺っております。
生物多様性基本法の第3条3項の基本原則(*1)は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多く、一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であること、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法が重要であるとしております。また、1992年の環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)リオデジャネイロ宣言の第15原則に基づく予防原則(*2)(環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする考え)に基づいて判断しなければなりません。
今般、計画されている「京都スタジアム(仮称)」は、国際的にも希少であり、日本国内の数カ所にしか生息しておらず、特に高い優先度で保全すべき種とされるアユモドキの生存に脅威を及ぼすものと考えられますので厳格に予防原則に基づき手続きを進めなければなりません。 貴職におかれましては、環境保全専門家会議の意見を尊重し、予防的な保全対策の方針が確定するなど、予防原則に基づく手続きが完了した上で、公共事業評価委員会に掛けるよう、十分慎重にご対応くださるよう、お願い申し上げます。
敬具
(公財)世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川恒孝
公共事業評価委員会 委員長 小林潔司 殿
拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、自然環境の保全にご尽力を賜り誠にありがとうございます。
(公財)世界自然保護基金ジャパンは、亀岡市において計画されている京都スタジアムの建設によって、国が天然記念物および国内希少種として保護している希少淡水魚アユモドキが絶滅することを危惧し、京都府知事および亀岡市長に対してその保護を求める要望書を平成26年4月23日付で提出させていただきました。
その後、京都府および亀岡市によって環境保全専門家会議が設置され、スタジアム建設に係るアユモドキ等への環境影響を評価し保全対策を講ずるための検討が行われており、その行方を注視してまいりました。
京都府の環境保全専門家会議においては、現時点でも、スタジアム建設に係るアユモドキ等の環境影響を評価するために必要な科学的データが十分に得られておらず、今後さらにどのようなデータ・調査が必要であるかについての議論が進められていると承知しております。
さて、京都府公共事業評価システムでは『京都府が実施する公共事業の効率性及び実施過程の透明性の向上を図るため、長期間を要している事業については、「再評価」、新規事業については「事前評価」を実施し、完了事業については「事後評価」を試行し、一連の過程で効率性・透明性を高める公共事業評価システムを確立する』としております。 本京都スタジアム(仮称)計画においても同様の事業評価がされるものと考えます。
前記した通り、環境保全専門家会議においては、環境影響を評価するために必要な科学的データが十分に得られていないと伺っております。
生物多様性基本法の第3条3項の基本原則(*1)は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多く、一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であること、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法が重要であるとしております。また、1992年の環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)リオデジャネイロ宣言の第15原則に基づく予防原則(*2)(環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする考え)に基づいて判断しなければなりません。
今般、計画されている「京都スタジアム(仮称)」は、国際的にも希少であり、日本国内の数カ所にしか生息しておらず、特に高い優先度で保全すべき種とされるアユモドキの生存に脅威を及ぼすものと考えられますので厳格に予防原則に基づき手続きを進めなければなりません。
貴職におかれましては、環境保全専門家会議の意見を尊重し、予防的な保全対策の方針が確定するなど、予防原則に基づく手続きが完了した上で貴委員会に掛けるよう、十分慎重にご対応くださるよう、お願い申し上げます。
敬具
(公財)世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川恒孝
*1)生物多様性基本法(平成20年6月6日法律第58号)
基本原則、第三条3項 生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法及び事業等の着 手後においても生物の多様性の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該事業等に反映させる順応的な取組方法により対応することを旨として行われなければならない。
*2)リオ宣言、第15原則
1992年の環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)リオデジャネイロ宣言の第15原則で以下のようにまとめられた。 原則15:環境を防御するため各国はその能力に応じて予防的取組を広く講じなければならない。重大あるいは取り返しのつかない損害の恐れがあるところでは、十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い対策を引き伸ばす理由にしてはならない。
記者発表資料 2015年1月14日
京都府亀岡市のスタジアム建設に際してはアユモドキ保全のために予防原則の徹底を求める
WWFジャパンは、本日、京都府知事および公共事業評価委員会委員長に対して、京都スタジアム(仮称)の建設に際し、「京都府公共事業評価に係る第三者委員会」に諮る前に、予防原則に基づく手続きを完了するよう求める意見書(1月13日付)を提出した。
京都府が亀岡市に建設を予定している「京都スタジアム(仮称)」は、天然記念物および種の保存法指定種(国内希少野生動植物種)であるアユモドキの生息に影響をおよぼす懸念がある。WWFジャパンは、事業計画の根本的な見直しを含む再検討を昨年4月以来、京都府と亀岡市に求めている。
京都府は、事業化を推し進めるために、「京都府公共事業評価に係る第三者委員会」に諮ることを検討しているとも言われる。しかし、いまだ議論の尽くされていない「京都スタジアム(仮称)」を、建設を前提として、この段階に進めるのは時期尚早である。本来、アユモドキの生息への影響の有無を綿密に評価すべき京都府の環境保全専門家会議において、評価をするための科学的データが不足しているとされる現状では、その点の改善に当面は注力すべきであろう。
ついてはWWFジャパンでは、「予防原則」に照らして、より一層の慎重な対応を求める。予防的な保全対策の方針を策定するなど、予防原則に基づく手続きを完了させることを求める意見書(1月13日付)を、本日、京都府知事および公共事業評価委員会委員長あてに提出した。京都府には、誠意ある対応が求められる。
この件に関するお問合せ
WWFジャパン 事務局長付 草刈秀紀 Tel: 03-3769-1711/広報室 Tel: 03-3769-1714 E-mail:press@wwf.or.jp