公共事業評価に係る第三者委員会 評価予定案件への意見
2015/06/04
意見書 2015年6月4日
「京都府公共事業評価に係る第三者委員会」 御中
(公財)世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川 恒孝
拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、自然環境の保全にご尽力を賜り誠にありがとうございます。
世界自然保護基金ジャパンは、亀岡市において計画されている京都スタジアムの建設によって、国が天然記念物および種の保存法による国内希少野生動植物種として保護している希少淡水魚アユモドキが絶滅することを危惧し、京都府知事および亀岡市長に対してその保護を求める要望書を平成26年4月23日付で提出させて頂きました。
また、本年1月13日付で同計画に対し京都府知事および公共事業評価委員会委員長宛に、環境保全専門家会議の意見を尊重し、予防原則に基づき手続きが完了した上で、公共事業評価委員会に掛けるよう、慎重な対応をするよう要望書を提出致しました。
また、5月25日付で京都府知事、公共事業評価委員宛「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における京都スタジアム(仮称) 計画に関する公共事業評価に対する意見書」を提出しました。
今般「公共事業評価に係る第三者委員会 評価予定案件への意見」が求められているので以下、意見を提出致します。
【意見募集に関する資料について】
○今般、意見を求められている評価案件資料に不備があります。
評価調書に7行程度、関係する法令の記述はあるものの明らかに該当法律の説明資料が不足しています。
具体的には、添付資料3「京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」はあるものの、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年六月五日法律第七十五号))および文化財保護法(昭和二十五年五月三十日法律第二百十四号)に関する説明資料が欠落しています。また、環境大臣意見(南丹都市計画に対する環境大臣意見)についても添付されておりません。
事前評価する資料として不備があります。適切な判断が下せません。
【評価予定案件への意見】
公共事業事前評価調書に「アユモドキへの悪影響を回避する」として明記しているが、定量的、定性的な数値データーが全く示されていません。
アユモドキの生息や繁殖に具体的にどのように悪影響を及ぼすのか、あるいは悪影響を回避できるのかについて、科学的な数値やデータなど根拠に基づいた環境影響評価が出されていません。
また、柔軟に計画を変更するとは言うものの、見直しの基準や手続きは不明瞭で、アユモドキの存続が保障されるかどうか、今の時点では確証が得られていません。
実証実験結果さえ判明していないなか、水田や水路の消失などアユモドキ生息域の改変を伴う現予定地内での建設を前提とした「実施設計や建設工事」費の予算化を行うことは、アユモドキへの悪影響の回避や自然との共生が可能であるという根拠がなく到底支持できるものではありません。
このまま事業認可を行うと全国的にも先進的な公共事業評価システムの存在意義そのものが失われることになります。
「公共事業評価に係る第三者委員会 評価予定案件」については、事業認可を延期すべきと考えます。
以上。
参考情報
- 2014年4月23日 京都府知事宛「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における亀岡市都市計画および京都スタジアム(仮称)計画に対する要望書」
- 2014年4月22日 亀岡市長宛「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における亀岡市都市計画および京都スタジアム(仮称)計画に対する要望書」
- 2015年1月13日 京都府知事宛「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における亀岡市都市計画および京都スタジアム(仮称)計画に関する公共事業評価委員会に対する意見書」
- 2015年1月13日 公共事業評価委員会委員長宛 「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における亀岡市都市計画および京都スタジアム(仮称)計画に関する公共事業評価委員会に対する意見書」
- 2015年5月25日 京都府知事、公共事業評価委員宛「種の保存法政令指定種アユモドキの生息地における京都スタジアム(仮称) 計画に関する公共事業評価に対する意見書」
本件に関する連絡先:事務局長付 草刈秀紀 (03-3769-1711、kusakari@wwf.or.jp)