日本の「エネルギー基本計画」の課題
2011/05/20
いま、求められる新たな方針
「エネルギー基本計画」とは、日本のエネルギー政策の基本となる計画で、「エネルギー政策基本法」という法律に基づいて作られています。
これは、国の将来にわたるエネルギー計画を左右する非常に重要な計画です。
しかし、2010年6月に策定された、現在のエネルギー基本計画には、課題となる点として、たとえば以下のような内容が盛り込まれています。
2010年6月に策定された「エネルギー基本計画」の課題
- 現行の基本計画は、原子力の大幅推進を中心としている。
2020年までに9基、2030年までに14基の新しい原子力発電所を建設することを計画している
⇒ もちろん原発の新設は全て白紙に!
- 引き続き化石燃料に強く依存しており、海外を含めた化石燃料の新開発を大幅推進する内容となっている
⇒ 化石燃料使用を増加させない将来像を!
- 「2020年までに一次エネルギー供給に占める再生可能(自然)エネルギーの割合ついて10%に達することを目指す」となっている
⇒ 「自然エネルギー100%」を達成するには不十分!
- 人口減少が予測される将来像においても、日本のエネルギー消費量を全体的に大幅に下げていく目標がない。また省エネについての、日本全体の目標が設定されていない
⇒ 具体的な数値を定めた目標を設定するべき!
私たちがこれから求める、新しい「エネルギー基本計画」の策定は、こうした諸課題が解決されたものでなければなりません。
未来に向けた「エネルギー基本計画」5つのポイント
原発の段階的廃止と自然エネルギー100%を実現した、新しいエネルギー社会をつくるためには、新しいエネルギー基本計画に、以下の5つのポイントが盛り込まれる必要があります。
1.自然(再生可能)エネルギー100%を目指すこと
- 新たな基本計画では、2020年に供給される全ての電力のうち、まず「25%」を自然エネルギーとすること
- 同じく、一次エネルギー供給の中での割合については、「15%以上」とすること
2.電力の自由化を進め、発電と送電を分離するなど、自然エネルギーを大幅導入するための次世代電力システムの整備を実施すること
- 新規再生可能エネルギー事業を妨げている地域独占型の電力10社体制(東京電力、中部電力、など)を見直し、いっそうの電力の自由化を進めること
- 発電と送電を分離し、系統を強化することによって、現在は不安定と敬遠される再生可能エネルギーの参入を促進すること
3.原子力に頼らない未来を実現すること
- 原子力発電所の新規増設計画を全て白紙にすること
- 既存の原子力発電所については、安全性を確保しつつ、原則として運転開始から40年を期限として段階的に廃止していくこと
- ただし、地震等による危険性がより高いと判断される発電所については、より早く廃止するべきこと
4.地球温暖化を解決するため、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)への依存から脱却し、下の目標を達成すること
- 温室効果ガス排出量を「2020年までに1990年比で25%削減する」とした日本政府の約束を守ること
- 現行のエネルギー基本計画で見込まれている、2030年までに1990年比で「30%程度もしくはそれ以上の(CO2)削減」を着実に実行すること
5.今よりずっと少ないエネルギーで暮らせる省エネ社会の実現を目指し、利便性を保ちつつ持続可能な生活を送ること
- エネルギーの全消費量(一次エネルギー供給)を減少させていく目標を数値化して持つこと
- 日本としての「省エネ」についての数値目標を入れること
「縦割り」を打破した横断的な検討を
また、この計画が、政府のどの部署によって検討されるかについても、配慮が必要です。
「エネルギー基本計画」の中で描かれる未来は、政策や国民生活のさまざまな分野のゆくえを決定する、将来的な影響力を秘めています。
したがって、これを再改定するための議論は、これまでのように単一の省庁(経済産業省資源エネルギー庁)が主導するべきものではありません。政治がリーダーシップを発揮し、さまざまなステークホルダーの意見を取り入れながら、全体的な視野で議論をとりまとめる組織が主導するべきものです。
よって、WWFではこの要請を、内閣総理大臣、内閣官房長官、国家戦略担当大臣、経済産業大臣、環境大臣、節電啓発等担当大臣に対して行なうことにしています。
今こそ、新しいエネルギー社会を作る時!120万人署名にご協力を
WWFジャパンでは、このエネルギー基本計画の見直しと、再生可能な自然エネルギーの拡大を、日本政府に対して求めることにしています。
そしてその要望を、日本中の皆さんと一緒に政府に届けたいと考えています。
目標は120万人。日本の総人口の約1%です。
これだけの人が、一つの政策の改善を訴えてアクションを起こした例は、過去にはほとんどありません。
今の日本の自然エネルギーのシェアも1%台ですが、変化はまさに、ここから始まります!
確実に日本の未来を変えていく、そのための一歩として、賛同の署名にご協力ください。
- この賛同署名の最終〆切は、2012年1月末です
- 皆さまからの署名はWWFが責任を持って、内閣総理大臣、内閣官房長官、国家戦略担当大臣、環境大臣、経済産業大臣、節電啓発等担当の各大臣に届けます
- ※セキュリティ管理のため署名フォームはトライコーン株式会社のWEBマーケティング用CRMシステム「クライゼル」を利用しています。
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