温暖化が進んでいることを証言する!「温暖化の目撃者」
2014/01/16
温暖化の目撃者① 「八重山の海から魚が消える」(日本)
「私は仲田森浩といいます。漁師の世界に入ったのは21歳の時です。漁師である父親の船に乗り込んで漁をはじめて28年目。私が海に入った頃は、サンゴはまだ健全でした。しかしまもなく、急速にサンゴが死滅し、魚が激減してきています。この八重山で、サンゴ礁無しに漁業はありえません。原因は、赤土の流入などによる被害と同時に、気候の変化も影響しているのではないではないでしょうか。」
<科学的根拠>
サンゴ礁は世界的な減少が深刻な問題となっている。環境省がまとめた報告書「気候変動への賢い適応」によると、すでに30%のサンゴ礁が甚大な劣化状態にあるという報告もある(Jackson et al;, 2001)。原因としては、漁獲に伴って物理的に破壊されること、埋め立てなどのよる物理的な改変、台風の巨大化と頻発化による破壊、オニヒトデの大量発生による食害などが指摘されている。中でも高水温に伴うサンゴの白化、及び病気の急速な拡大が1980年代以降各地で頻繁に報告されるようになった。
温暖化の目撃者② 「失われる白神山地・ブナの森」(日本)
「私の名前は工藤光治です。代々続くマタギ(猟師)の家系で育ち、わずか15歳のとき、マタギ集団に入りました。以来50年以上にわたって、白神山地の山に入り暮らしてきました。今は、エコツアーガイドとして、白神を訪れた人々に、ブナの森の素晴らしさや自然を残す重要さを伝えています。遠くから見ただけでは一見豊かに見えるブナの森も、ここ数年大きな異変が起きていると感じています。積雪が減り、毎年、ブナの実を食べる害虫が大量発生しているのです。」
<科学的根拠>
ブナ林は、日本を代表する落葉広葉樹林で、世界遺産の白神山地ブナ林が有名です。しかし、温暖化が進み、気温が上昇すると、ブナ林の分布域は大幅に減少すると予測されています。そのため、日本の森林生態系が大きな影響を受ける可能性があります。
環境省が2008年6月18日に発表した「気候変動への賢い適応~地球温暖化影響・適応研究委員会報告書~」によると、環境要因からブナ林の分布確率を予測する分類樹モデルによる解析では、現在ブナ林が分布する地域における分布領域は、2031~2050年には、最悪のシナリオでは44%に減少し、そして2081~2100年には、最悪シナリオで7%にまで減少すると予測されています。白神山地でも、ブナ林の分布適域は大きく減少すると予想されます。
温暖化の目撃者③ 「温暖化が人の健康をおびやかす」(日本)
「私の名前は、和久晋三です。大学の医学部を卒業後、大規模な大学病院から過疎の診療所まで、さまざまな現場で経験を重ねてきました。医師になって今年で18年間目。今、働いている兵庫県丹波市の診療所は、父が1958年(昭和33年)に開業した診療所です。父の代は小児科だったため、子どもの患者が多いのが特徴です。8年前にここへ戻ってきて感じるのは、以前に比べ、暑い日には頭痛や脱水症状を訴える子供が増えている、ということです。このまま、温暖化で気温が上がれば、熱中症のリスクはますます高まり、腸疾患や感染症も増えるのではないかと心配しています。」
<科学的根拠>
東京大学などの合同研究チーム(2004)によると、日本の真夏日(日最高気温が30度を超える日)は、相対的に見ると、現在の40日程度から、2100年には100日を越えると予測されている。(日本各地で一箇所でも30度を超えると、真夏日としてカウントされる方式)
環境省の「日本への温暖化影響総合予測」(2008年5月発表)によると、温暖化によって、健康への脅威が増すことが予測されており、特に日最高気温上昇に伴い、熱ストレスによる死亡リスクや、熱中症患者発生数が急激に増加することが指摘されている。特に高齢者へのリスクが大きくなる。
2007年夏の猛暑日(一日の最高気温が35度を超える日)には、65歳以上の年齢層で、患者発生の急激な上昇がすでに確認されている。
温暖化の目撃者④ 「島を襲うランド・ウンター」(ドイツ)
「私はルース・ハルトヴィク・クルーズといいます。私はドイツの最北にあるシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の西岸に浮かぶ「ハリグ(Hallig)」と呼ばれる小島の一つ、ノルトシュトラントイッシュモーア島に生まれ、以来ずっとこの島に住んでいます。私の家族は290年間、この小さな島で農家を営んできました。絶え間なく続く潮の変化によって形作られ、手付かずの自然に恵まれた独特な地域に住む私たちは、海が絶えず変化することや、海の持つ力に慣れ親しんできました。しかし、地球温暖化はそんな私たちに、多くの変化を及ぼし始めています。海水面が上昇してきたため、嵐が来ると高潮が起こり、暮らしが脅かされるようになったのです。」
<科学的根拠>
ハルトヴィク・クルーズさんによる、高潮時の上昇する海面と、ハリグ周辺の砂や堆積物の浸食に関する観察は、現在起きているこの地方の気候の影響及び海面上昇に関する詳しく審査された文献と一致しています。
彼女の観察は現在ある文献及びドイツ政府による特別報告書の内容とも一致しています。これらの文献は、1950年代以来ドイツ北海沿岸の平均満潮位(Mean Tidal High Water=MHW)が急速に上昇していることを示しています。その結果、高潮のときの海面の上昇はワッデン海域の浸食の悪化にもつながっていることを意味します。
変化する天候パターンに関する観察は、その他の科学的な観察とも極めて一致しており、西ヨーロッパの気候変動の経過を表しています。
(ミハエル・シルマー博士 ドイツ・ブレーメン大学)
温暖化の目撃者⑤ 「温暖化がもたらす凶作と病気」(ケニア)
「私の名前はジョセフ・コネスといいます。57年前にボメット地方のカバルソ村で生まれ、それ以来この村で暮らしてきました。この村には現在、約1万人が住んでいます。村の主な収入源は、トウモロコシとお茶の栽培です。私が若い頃は、雨季は11月から4月まで続き、定期的に雨が降りました。しかし今では、一年を通じて、季節に関係なく雨が降ります。雨の降る時期が予測できなくなってしまったことで、私たち農民は作物を植える計画を立てるのが、非常に難しくなってしまいました。何か大変なことがどこかで起こっているに違いないと思います。マラリアについても、そうです。私が若い頃、村で誰かがマラリアにかかった、という話はほとんどありませんでした。この地域でマラリアがどのように広まったのか、それはわかりません。」
<科学的根拠>
ボメット地方カバルソ村でのコネスさんの観察は、地域単位またはそれよりも狭い範囲で予想される温暖化の影響と一致しています。ボメット地方が非常に雨量の多い地域に位置しているという事実によれば、ここで述べられた気象現象は、豪雨や干ばつなどの異常気象の増加とより変化の激しくなった天候と、それに環境への人為的影響と関連があると思われます。
マラリアに関する観察は、過去にはマラリアが発生していなかった地域で温暖化によってマラリアが拡大しているという事実と一致しています。したがって、観察されたこと全てが、人為的な環境への影響、温暖化により広まると予想される(新しい)気候パターン、農業や保健衛生などの多くの分野で確認されている温暖化の影響についての専門家による科学的な文献と一致しています。
コネスさんの情報を総合的に判断すると、現在すでに起こっている気候の影響に関する文献とカバルソ村での観察は一致している部分があるといえます。
(ピーター・アンベンジェ博士 ケニア気象庁上級副部長)
★「温暖化の目撃者」については、さらに詳しい情報を下記にてご覧いただけます。世界各国から約70件の目撃情報を紹介しています。