ビジネスセクターによる脱化石燃料キャンペーンが本格始動
2023/12/07
- この記事のポイント
- 2023年に開催された国連の気候変動会議COP28でも注目され、大きな論点となった、化石燃料フェーズアウト(段階的廃止)。ビジネス界からも、化石燃料フェーズアウトを求める声が上がっています。その国際的な動きの一つとして、企業や投資家の気候変動対策を推進する国際NGOなどの連合体 We Mean Businessでは、Fossil to Cleanキャンペーンを展開。その概要と取り組みを紹介します。
脱化石燃料へ、高まる機運
2023年11月末からアラブ首長国連邦ドバイで開催された、気候変動に関する国連会議COP28の大きなテーマの一つが、化石燃料のフェーズアウト(段階的廃止)です。
2022年末に開催されたCOP27では実現こそしなかったものの、80か国以上の国が石炭火力だけではなく、全ての化石燃料のフェーズダウン(段階的削減)を交渉の成果文書に盛り込むことを要求。
また、2023年日本で開催されたG7でも、G7各国は排出削減対策のとられていない化石燃料のフェーズアウトを進めていくことにコミットしました。
COP28は、それまでの化石燃料フェーズアウトへの機運の積み重ねの上に迎えたCOPであり、締約国が化石燃料のフェーズアウトについてなんらかの合意ができるかが大きな焦点です。
そうした中、ビジネス界からも化石燃料フェーズアウトを求める声が上がっています。
ビジネス界発の脱化石燃料新キャンペーン
企業や投資家の気候変動対策を推進する国際NGOなどの連合体 “We Mean Business”は2023年9月、COP28に先駆け、ニューヨークで開催された気候ウィークの中で新たなグローバル・キャンペーンを発表しました。
その名も”Fossil to Clean campaign (化石燃料からクリーンエネルギーへキャンペーン)“。
3年間にわたり実施される予定のこのキャンペーンは、エネルギー需要家である企業が、政府や、発電事業者、金融機関に対し、化石燃料から、安くて安全、信頼のできるクリーンエネルギーへの移行を加速するよう求めるものです。
200を超える企業が公開書簡を発表
このキャンペーンに賛同を表明した200社あまりの企業は、COP28に先駆け、各国政府に対し、排出削減対策の取られていない化石燃料のフェーズアウトを求める共同の公開書簡を発表しました。
この書簡では、先進国では遅くとも2035年までに、それ以外の国では遅くとも2040年までに、電力システムを脱炭素化し、クリーンなエネルギーへ移行することを求めています。
この書簡にはボルボ、ユニリーバ、ネスレ、ハイネケン、アストラゼネカ、イケア、ソニーグループなど世界の有名企業が名を連ねています。
これらの企業収入額を合計すると1.5兆ドル(約220兆円)を超えます(2023年12月5日現在)。
▼関連情報:公開書簡(キャンペーン公式ウェブサイトより)
https://www.wemeanbusinesscoalition.org/cop28-businesses-urge-governments-to-phase-out-fossil-fuels/
COP28でもメッセージを発信
ドバイでのCOP28においても、世界中から首脳レベルのリーダーが集まる12月2日に、キャンペーンの一環として、ビジネスリーダーや交渉官を巻き込んだサイドイベントを実施。
なぜ、企業が化石燃料フェーズアウトを求めるのか、企業が化石燃料フェーズアウトに果たす役割について、以下のような熱い議論を交わしました。
- 自社のネットゼロ目標に向けて、スコープ1、2対策を積極的に進めているが、スコープ3の脱炭素は化石燃料フェーズアウトなしでは進めることができない。
- 1.5度経路から脱線しないためには、再エネ拡大やエネルギー効率の向上が重要であり、企業は積極的に取り組んでいる。しかしそれだけでは1.5度には足りない。化石燃料フェーズアウトは「欠けているパズルピース」である。
- 交渉官や政策決定者にとっても、化石燃料フェーズアウトを推進するためには、ビジネスの声は重要だ。企業ひとつひとつの声を束ねて、力強いメッセージを発信してほしい。
ビジネス界からの声が気候政策を前進させる
国際交渉において化石燃料フェーズアウトの機運が高まる中、交渉の外にいるビジネス界からも出されたこうした強いシグナルが、COP28での議論の追い風になることは間違いありません。
以前は、企業が気候変動政策に関して声を上げたり、政府に働きかけ(ロビー活動)をする際は、気候変動対策にネガティブな文脈で実施されることが主流でした。
しかし、今回のキャンペーンのように、ビジネス界の声が気候政策を前進させる大きな推進力にもなり得るという認識は、今確実に広まりつつあります。
気候変動対策を遅らせるような、ネガティブな企業ロビー活動をなくし、ポジティブな企業ロビー活動をもっと増やしていくために、企業のロビー活動を評価する団体もでてきており、機関投資家や市民団体もそうした評価への注目を高めています。
日本企業のTCFD対応やSBT取得数は、世界でもトップレベルですが、政策関与や積極的に声を上げるのは苦手、とも言われています。
今後はこういったグローバル・キャンペーンも活用しながら、世界に向けてポジティブなメッセージ発信をし、国内外の気候政策の前進に貢献していくことが期待されます。