ワンプラネット・サミット閉幕 保護区30%目標に日本も賛同
2021/02/16
「生物多様性ワンプラネット・サミット」の開催
2021年1月11日、フランスのパリで「生物多様性ワンプラネット・サミット(One Planet Summit for Biodiversity) 」が、フランス政府、国際連合、世界銀行の共催によって開催されました。
フランスのマクロン大統領の進行のもと、イギリスのジョンソン首相、ドイツのメルケル首相、カナダのトルドー首相、グテーレス国連事務総長などの世界の指導者たちがオンラインで出席しました。
このサミットで、参加者たちは、深刻な生物多様性の減少を抑えるため、保護区拡大への賛同や、資金提供の意思を表明。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的感染の拡大を受け、自然破壊が感染症のパンデミック(世界的大流行)のリスクを高めることを強調し、国際的な協調に基づいた対策の必要性を明らかにしました。
2030年までに保護区の面積を30%に
この会合では、フランスとコスタリカの呼びかけによる「自然と人々のための高い野心連合(HAC; High Ambition Coalition for Nature and People)」が発足。
これに参加する50カ国以上の国々が、2030年までに世界の陸域と海域の30%を保護区とすることを約束しました。
日本もこの野心連合に参加し、小泉進次郎環境大臣がビデオメッセージを発表し、賛同を表明しました。
気候変動への資金提供とパンデミック対策
イギリスとフランスは、気候変動(地球温暖化)対策の海外への公的資金の30%を、「自然に根ざした解決策(Nature-based solutions)」に充当することを発表しました。
また、ノルウェーとドイツも追加の資金提供を約束。
生物多様性の減少を抑えて、次のパンデミックの予防を支援する取り組みとしては世界初となる、PREZODEイニシアチブ(Prevention Zoonotic diseases Emergence)の立ち上げも決まりました。
これは、フランスの主導による新たな国際協調のしくみで、ヒト・動物・環境の諸分野を専門とする、各国研究者と機関が協力し、パンデミックの予防をめざすものです。
議論から行動へ CBD-COP15の成功に向けて
今回のサミットに参加した、グテーレス国連事務総長は、「気候変動のパリ協定、持続可能な開発目標SDGsとともに、世界を持続可能な社会に変革していこう。すべての人がもっと行動を」と呼びかけました。
同じく会議に参加していたWWFインターナショナル事務局長のマルコ・ランベルティーニは、次のように述べています。
「ワンプラネット・サミットで発表されたイニシアチブと資金提供は、2021年後半の生物多様性条約の締約国会議で、2030年を目標とした生物多様性保全の議論に弾みをつけるものです。これに向けて世界は、行動に移す段階に入ったと言えるでしょう。持続可能な未来を確保するためには、この行動をさらに野心的で迅速にする必要があります」
実際、「2021年秋に開催予定の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)に向けて、今回のワンプラネット・サミットで各国が表明した積極的な姿勢は、「愛知目標」に続く、世界の生物多様性の保全に向けた、新たな目標への合意をめざす上で、大きな力となるものです。
そのためには、各国が必要な協力体制が構築できるか。そして、グテーレス事務総長の言う「すべての人がもっと行動を」とれるかどうかが、大きなカギとなります。
日本政府への期待と要望
WWFジャパンは今回のサミットにおいて、日本政府が、野心的な2030年目標および、世界の保護区30%目標に賛同を表明したことを歓迎。
ただし、この目標を実現するためには、先住民族や地域社会の権利が尊重され、確保され、その人々が実現した保全した結果の利益を得られるようにする必要がありますまた同時に、政府が今後、持続可能な生産や消費に対する野心的で計測可能な目標を設定することも重要です。
小泉環境大臣の表明した「経済社会再設計、リデザイン」が、気候変動対策と生物多様性の保全策との両方に貢献する策となり、現実に実行されていくことが、これからの日本の経済社会の行く末を大きく変えることになるでしょう。
WWFは、2030年までにネイチャー・ポジティブ(生物多様性回復軌道へ)社会に変革するため、野心的なポスト2020生物多様性枠組みの迅速な実現を求めていきます。