楽天がオンライン店舗での象牙製品販売を停止


楽天株式会社が楽天市場での象牙製品の販売行為を今後認めないことを明らかにしました。現在、日本国内で合法的に販売されている象牙製品は、近年のアフリカゾウの密猟とは因果関係がないとされています。しかし、トラフィックの新たな調査でも、急成長を続けるeコマースを通じた象牙取引については、法律の整備が追いつかず、対応しきれない状況が続いていることが明らかになっており、WWFジャパンとトラフィックも厳しい措置を求めていました。日本のeコマース企業の判断としては、大規模な今回の楽天の決定が、他企業にもより厳しい対応を迫るものとなることが期待されます。

楽天が象牙の取扱い停止を表明

2017年7月6日、楽天株式会社(以下、楽天)が、楽天市場での象牙製品の販売行為を今後認めないことを明らかにしました。

これにより、楽天市場の出店店舗には、2017年6月30日付で規約変更の通達が送られ、約1カ月の猶予期間後は販売停止となります。

この措置の対象に含まれる主な商品は、象牙で作られた印鑑(ハンコ)、アクセサリーや彫刻、数珠、三味線や琴などの和楽器で使われるパーツ、箸をはじめとする食卓用具など。

さらに楽天によると、象牙に加えて、べっ甲などウミガメの甲羅を使った製品も同時に取引禁止商材に加えられるとのことです。

楽天は2014年にも、楽天市場での鯨肉の取り扱いが、海外の愛護団体などにより強い非難を受け、販売を停止した経緯があり、今回の決定も、象牙市場の閉鎖を求める国際世論に配慮したものと考えられます。

これまでのところ、日本国内で合法的に販売されている象牙製品は、以前からある在庫に頼っていると見られているため、近年激化しているアフリカゾウの密猟の直接の要因になっているとは考えられていません。

しかし、最近トラフィックの調査から明らかになったように、インターネット上での象牙取引に関しては多くの問題があるため、業界大手の楽天によるこの積極的な対応は、非常に重要な意味を持ちます。

日本におけるインターネットでの象牙取引の問題と業界の取り組み

このインターネットを介した象牙取引の拡大には、WWFジャパンとトラフィックも早くから注目していました。

トラフィックが2014年に実施した調査では、楽天市場やヤフーオークションで象牙製品を販売している事業者の多くが、「種の保存法」で象牙を取り扱う業者に義務付けられる届出を行なっていないなどの実態が明らかになりました。

この指摘に対し、楽天とヤフー株式会社は、出店店舗やユーザーに遵守を徹底させる自主的取り組みを開始。

その結果、2017年5月に実施した再調査では、未届の業者はほとんど見られず、eコマース企業の取り組みの成果が確認されています。

しかし一方で、販売されている個々の象牙製品が、どのような由来の原料を使ったものかを明らかにする「トレーサビリティー」に関しては、まだ課題が見られました。

こうしたトレーサビリティーを確立するための手段として、「種の保存法」では製品認定制度を設定し、希望する業者に対し製品ごとの認定を行なっていますが、ウェブ店舗上で取引されている象牙製品については、この制度の利用状況は依然として低いままです。

さらには、インターネットオークションや近年台頭してきたフリーマーケットサイトで、業者が個人を装って象牙製品を取引するケースも多数認められているほか、近年アジアやアフリカから個人が、ワシントン条約に違反して、日本に持ち込んだと思われる象牙のアクセサリーの販売も見つかっています。

WWFジャパンとトラフィックは、アフリカゾウ保護のため、日本の象牙の国内市場を「適正な管理」の徹底を強く求めてきましたが、こと現状のeコマース業界に関しては、取引の停止を視野に入れた、企業による厳しい措置の導入が必要と考えています。

その意味で、今回の楽天の決定は、これから先の象牙をめぐる流れを見据えた先駆的なものです。

WWFジャパンとトラフィックはeコマース業界全体で象牙製品の取引を停止するよう強く要望します。

引き続き求められる日本の取り組み

しかし、日本がとるべき措置としては、これだけでは決して十分とはいえません。

日本政府はこうした業界の努力を後押しする意味でも、インターネット上での象牙取引の実態を踏また、象牙の管理・規制制度改革を早急に検討する必要があります。

また今回の件が、あくまで楽天市場という流通経路の一つにおいてなされた改善に過ぎないことにも、留意する必要があります。

2017年11月には、ワシントン条約(絶滅のおそれのある動植物種の取引に関する条約)の常設委員会が予定されていますが、ここでも象牙は注目される話題となります。

国際的なアフリカゾウ保護の流れに貢献できる政策と施策の実現が、日本にも求められています。

関連リンク(トラフィックのサイト)

関連記事

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP