シベリアトラの密猟者に15万ドルの罰金刑
2017/09/14
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
2012年4月8日、極東ロシアのナホトカ市でシベリアトラ6頭、ツキノワグマ34頭、ヒグマ12頭などの大量の毛皮や肉が押収されました。容疑者は逮捕され、刑事告訴されましたが、一審では法の抜け穴を利用して、刑事罰を回避。逮捕から5年が経過した2017年2月1日、二審において15万ドルの罰金刑が言い渡されました。密猟に対してこうした大きな罰金刑が言い渡されるのはロシアでは初めてのことで、今後厳罰化に向けた動きが加速することが期待されます。
トラ6頭分の毛皮や肉を押収
極東ロシアの豊かな生態系の頂点に立つシベリアトラ(アムールトラ)。
2014~2015年の冬に極東ロシア全域で行われた総個体数調査では523~540頭という結果が出ており、1996年の415~476頭、2005年の428~502頭から順調に増加していることがわかりました。
ロシアでは次の寅年である2022年までに、野生のトラを700頭まで増加させる目標を掲げており、この目標を達成するには今なお続く脅威と問題への対策が欠かせません。

トラの中で最も北に生息し、最大の体躯を持つ亜種シベリアトラ(アムールトラ)。
そうした脅威のうち深刻なものの1つが密猟です。
2012年4月8日、極東ロシアの沿海地方ナホトカ市にあるコンテナ倉庫から野生動物の大量の肉や毛皮が発見されました。
その数は、シベリアトラ6頭、ツキノワグマ34頭、ヒグマ12頭、ニホンジカ7頭、オオワシ5羽、クロコンドル1羽、オシドリ1羽に上ります。
その後の捜査で、この容疑者は2011年6月から2012年4月までの10か月間にわたって、マフィアの資金調達のため、狩猟が禁止されている野生動物や鳥を違法に捕殺していたことがわかりました。
WWFは、犯人逮捕の当初から警察・検察に協力し、専門家として捜査や鑑定に携わってきました。
その結果、犯人はナホトカ市の裁判所で刑事告訴されました。
刑事罰を逃れる法の抜け穴
しかし、刑事告訴に対する世論の後押しにもかかわらず、容疑者はロシアの法律の抜け穴を利用して、刑事罰を回避。
2015年6月21日には、裁判所が時効を理由に訴えを棄却してしまいました。
WWFロシア極東支部の希少種保全ユニットの部門長を務めるパベル・フォメンコは、こうした法の抜け道について、次のように指摘しています。
「時効を理由に、重大な密猟者がいとも簡単に刑事罰を逃れていると私たちは何度も指摘してきました。
例えば、2012年にはアルセーニエフ市でトラ8頭の毛皮を所持していた密売人が刑事訴追から逃れてしまいました。
こうしたことが繰り返し起きているのです。
絶滅危機種を保護するには、法制度を見直し、密猟や違法取引に対する厳罰化が必要です」
過去最大の罰金刑
一審では検察の主張が十分に認められなかったため、ナホトカ検察は沿海地方裁判所に控訴しました。
そして、容疑者逮捕から5年が経過した2017年2月1日、沿海地方裁判所は被告人に対し15万ドル(約1,600万円)の罰金刑を言い渡しました。
こうした罰金刑が言い渡されるのは、これまでで初めてのことで、ロシアの環境法の歴史に大きな一歩を刻むものです。
トラをはじめ、野生動物の密猟を防止する手立てとしては、野外の現場でのパトロールや、違法な取引の取り締まりなど、他にもさまざまな手段があります。
そうした手立てに加え、こうした逃れることのできない厳罰がしっかりと適用されることは、密猟を抑止し、希少種を守る上で重要なことなのです。

極東ロシアの森
トラと日本をつなぐ木材取引
また、シベリアトラの脅威となっているもう1つの要因についても、対応が必要です。
それは生息地である森林の破壊です。
極東ロシアでは、今も違法伐採や、合法だが環境に配慮しない大規模な商業伐採が行なわれています。
そして、こうして伐採された木材は、直接、また間接的に日本にも輸入されており、日本の消費者も知らず知らずのうちにシベリアトラの生息地破壊に関与している可能性があります。
しかし、消費者が独自に木材製品の由来とその生産方法を調べるのは簡単なことではありません。
そこで、WWFでは消費者の方々にFSC認証が付いた製品を選ぶことを呼びかけています。

FSC認証を受けた、持続可能な木材製品。
FSCは、森林が持続可能な方法で管理されていることを証明しており、そこから生産された木材製品にはFSCラベルが付けられ、販売されています。
消費者がFSC認証製品を選ぶことは、破壊的な木材生産に対して「No」という態度を示し、持続可能な生産を支持することであり、トラのすむ森を守ることにつながります。
WWFでは、引き続き現地でトラの保護活動に取り組むとともに、日本でも企業や消費者に対して持続可能な木材の調達・購買を働きかけていきます。