メルカリが象牙製品の取引を全面禁止


フリマアプリを運営する株式会社メルカリが、象牙製品の取引を禁止しました。急成長を続けるインターネット上の象牙取引。中でも、CtoC(個人間商取引)市場が規制の大きな抜け穴になっているとして、WWFジャパンは、eコマース企業に対し、取り扱いの停止を求めてきました。今回のメルカリの判断は、eコマース企業が、野生生物取引の問題に真摯に向き合う姿勢として、歓迎すべきものです。日本政府はじめ国内関係者にも、違法取引を許さない厳しい対応が求められます。

メルカリが象牙製品の出品を全面禁止

2017年11月9日、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)が、同社が運営するフリマアプリ「メルカリ」での象牙製品の出品を禁止したことが明らかになりました。

WWFジャパンがメルカリに確認したところよると、同社では、グローバルに事業を展開するにあたり、象牙市場の閉鎖を求める国際的な動向に配慮し、象牙製品を禁止商材に加えるに至ったとのことです。

急成長を見せるインターネットなどを介したCtoC(個人間商取引)市場では、ここ最近、象牙を扱った取引の事例が多く確認されています。

トラフィックが2017年5月に実施した調査によると、メルカリでは一週間に平均140点を超える象牙製品が出品され、中には、タイやコンゴといった海外の市場で購入した象牙製品の出品も見つかりました。

お土産品であっても、海外からの持ち込みは違法。アフリカやアジアの問題のある市場で日本人が象牙製品を購入することは、密猟を助長することにもつながります。

さらには、このようにして違法に持ち帰った象牙製品が、水際取締の網の目をくぐって国内に入り込んでしまうと、その後は自由に販売できてしまうという規制の抜け穴が存在するため、WWFジャパンは、日本政府に包括的な規制の早急な導入を求めるのとともに、eコマース企業には、自主的な取引停止を強く要望してきました。

そうした指摘や現状に関する情報のもと、メルカリやヤフーをはじめとするeコマース企業では最近、違法出品の監視に注力していました。

日本のeコマース企業としては、2017年7月1日に、楽天株式会社が、同社の運営するオンラインモールの「楽天市場」と、フリマサイトの「ラクマ」で、象牙製品の取り扱いを全面禁止する自主的措置を導入しました。

実際に海外から持ち帰った象牙製品を出品していた例。密猟が多発しているアフリカで入手したもの。違法と知らずに日本に持ち込んだものと思われる。

これに続く今回のメルカリの決断は、eコマース企業の社会的責任という意味でも、大いに歓迎すべきものです。

今後、メルカリでは、ルールに違反した象牙製品の出品を監視する努力に加え、ユーザーに対して、象牙をはじめ野生生物の取引に対する情報提供や注意喚起などといった、より幅広い取り組みがおこなわれることを期待します。

引き続き求められる日本の取り組み

しかし、一方で政府による規制の強化は現状の問題に追いついていません。

国内での象牙製品の取引については、「種の保存法(絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律)」で規制が設けられていますが、匿名の個人が昼夜、活発に取引が行なえるCtoC市場の現状に見合った改善は、いまだ行なわれていないのが現状です。

このため今は、ごく稀に出品される全形牙を除いて、「違法に持ち込まれた象牙でないこと」を確認する必要がないまま、誰でも自由な取引が可能な状態になっています。

ワシントン条約の分析によると、近年、日本にアフリカで密猟された象牙が直接密輸されているとは考えられていません。

しかし、世界全体の象牙の違法取引と、それを支える象牙製品への需要が引き金となり、アフリカでは、近年、毎年2万頭を超えるアフリカゾウが密猟の犠牲になっています。

こうした状況を受け、2016年10月に開催されワシントン条約の第17回締約国会議では、密猟または違法取引に寄与している国内市場に対しては閉鎖を求めるという厳しい勧告がなされました。

世界有数の象牙市場を持つ日本は、ワシントン条約の締約国として、自国内で行われるいかなる取引も、密猟や違法取引に寄与しないことを確実にする責任があります。

オンライン取引については、CtoCを含め、厳格に管理することが困難な取引形態として、早急に停止する必要があります。WWFジャパンは、日本政府をはじめ、他のeコマース企業や国内関係者が、厳格な措置を早急に導入することを強く要望します。

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