海洋の保全
2009/09/14
大洋や、世界各地の沿岸域では、自然環境の開発や、汚染、資源の乱獲による環境の悪化が報告されています。WWFは、国際的な視点に立った漁業資源の持続可能な利用を目指す社会的な仕組みの普及に取り組んでるほか、沖縄県石垣島にある世界屈指の規模のアオサンゴの群落をはじめ、貴重な生態系がのこる世界各地のサンゴ礁やマングローブ、干潟など、沿岸域の自然保護をめざしています。
失われる母なる海の自然
地球の表面の三分の二を覆う海。そこには、陸上の全ての生命を合わせたよりも、はるかに多くの生命が存在しています。
とりわけ、多様な生き物が数多く集まる のが、サンゴ礁やマングローブ林といった、陸地に近く浅い海。これらの場所は、魚たちの産卵場所であり、稚魚が育つ「ゆりかご」の役割も果たしています。
また、南極や北極といった、一見何もいなさそうなところでも、海の中は生きものたちであふれています。
しかし、その海も今やさまざまな危機にさらされています。
WWFは、世界の海に生息する、哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類あわせて675種の野生生物の個体数が、1970年から2008年の間に、平均でどれくらい変化したかを調べ、指数として計算しました。
この海の「生きている地球指数」は、38年の間に、約22パーセントの減退を示しています。
何千年、何万年にもわたり、人類やさまざまな野生生物に、豊かな恵みを与え続けてくれていた、世界各地の海の環境が、このわずかな期間の間に、著しく悪化しているのです。
海の生物の4種に1種が生息していると言われるサンゴ礁の自然も、既に3割が失われてしまったともいわれています。
沿岸地域で進む開発、大洋での過剰な漁業、海水温の上昇や汚染などが、海の生きものを危機に追い込んでいるのです。
最初の命が生まれた海という環境。それは、文字通り「生命の母」と呼ぶにふさわしい広さを持ち、豊かさと、恵みとを与えてくれます。
WWFは、この海の自然と恵みを未来に引き継ぐために、マングローブやサンゴ礁に代表される沿岸の生態系の保全活動をはじめ、世界各地で漁業資源の問題や、タンカー事故などによる海洋汚染の問題に取り組んでいます。
海の恵みを守るために
日本の沿岸には、河口、干潟、藻場、磯、砂浜、サンゴ礁、マングローブなど、人間の生活と深いかかわりをもつ環境が広がっています。
こうした沿岸の自然環境は、陸域から流れ込む水を浄化したり、魚介類の生育場所となるなど、重要な役割を持っています。
しかし、埋立や干拓、廃棄物捨て場、護岸、砂利の採集などが行なわれ、自然の海岸が失われてきました。これは、世界各地の沿岸域についても、同様です。
また、日本の海洋へのかかわりという点では、水産業も重要です。日本は世界最大の水産物消費国です。日本による水産資源の適切に管理と、持続可能な利用が実現できれば、世界の水産資源にも大きな良い影響を広げることができます。
WWFジャパンは、干潟やサンゴ礁など国内の沿岸域の重要な生態系の保全を訴えるとともに、日本が消費国として世界の海に大きなかかわりを持っている漁業や、その流通についても、持続可能な資源利用の推進に取り組んでいます。
持続可能な漁業の推進
サンゴ礁の保全活動
WWFは、多くの生き物の命を支えているサンゴ礁に注目し、世界のあちこちで保護活動を進めています。
WWFジャパンは1980年代から貴重なサンゴ礁の保全活動に取り組んできました。そうした現場の一つに、世界でも最大級のアオサンゴ群集が生息する、石垣島白保の海があります。WWFジャパンはこの海の保全活動の拠点として、2000年4月、多くの方々のご支援のもと、白保集落内にWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」を開館。2021年12月まで、スタッフが現地に駐在し、さまざまな保全活動に取り組みました。