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ジュゴンについて


ジュゴンは、クジラ類に似た胴体と小さな頭を持つ大型草食獣で、「人魚」のモデルになったといわれる哺乳類です。亜熱帯から熱帯にかけての浅く、温かい海に生息し、主に海草を食べています。日本国内では、沖縄島東部の沿岸域にわずかに生息していますが、その主要な生息域である名護市辺野古の海では、米軍基地の移設計画が進められており、絶滅が懸念されています。

© Andrey Nekrasov / WWF

ジュゴンが生きる沖縄の海

熱帯から亜熱帯にかけてのインド洋と太平洋に生息する海の哺乳類ジュゴン。しかし、今その生息域の各地で減少しており、世界的にも絶滅が心配されています。

日本の沖縄の海もジュゴンが生息していますが、その数はわずかに50頭以下といわれており、まさに絶滅寸前の状況です。今、手を打たなければ、ニホンオオカミがかつて絶滅し、ニホンカワウソやニホンアシカの姿が見られなくなってしまったように、ジュゴンもまた、姿を消してしまうかもしれません。

それは、単に一つの種がいなくなる、ということだけではなく、日本の自然環境自体が、それだけ貧しくなり、豊かさを失うことを意味しています。

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ジュゴンという動物

 

イラスト (C)WWF-Canon/ Helmut DILLER

 
分類 海牛目 ジュゴン科
学名 Dugong dugon
大きさ 体長3m 体重450kg
寿命 70年以上(歯の年輪によってわかる)
繁殖 6~17年で成熟し繁殖可能となります。妊娠期間は13~15ヶ月。一回の出産で一頭の仔を生みます。
個体の増加率は低く、5%以下といわれ、種を維持するためには捕獲できるのは全個体数の2%以下といわれています。
食物 主食は海草。この他、ゴカイ、カニ、ホヤなどを補助栄養とすることがあります。
レッドリストの評価 VU (危急種)

ジュゴンの特徴

  • 鼻の孔は平たい吻端の上方にあり、頭を少し持ち上げるだけで、海水面上に鼻が出、呼吸をすることができます。

  • 口の周りは直径2ミリもある太い毛で覆われています。ジュゴンはこのヒゲで海草類を集め、採食します。

  • 体色は灰色で腹部がやや淡く、体表には短い毛がまばらに生えています。

  • 前あしは、しゃもじのような形をしています。ジュゴンは、特に海草を食べるとき、海底をゆっくり這うようにして移動するため、前あしの先端は角質化して硬くなっています。

  • 左右に半月型に広がった尾は、泳ぐ時に使われます。クジラ類の尾と似た形をしています。一回の潜水時間は6分から7分といわれています。

© Shutterstock / vkilikov / WWF

ジュゴンの生息域

ジュゴンの正確な個体数は分かっていませんが、世界全体で、およそ10万頭が生息していると言われています。最も多いのはオーストラリアで8万頭、他の30を超える国々の沿海に2万頭が生き残っていると推定されています。
 ジュゴンは、太平洋とインド洋の、アマモ類などの海草が育つ熱帯から亜熱帯の浅い海域に生息しています。つがいで行動することはなく、授乳中の母子のみ、群で行動します。単独行動も多く見かけられます。

藻場という環境

ジュゴンにとって重要な生息環境の一つが、採食場所となっている藻場(もば)です。アジモやアマモなどの海草が生育する藻場は、沿岸域の浅い海に見られるウェットランド(水辺の自然環境)です。
 海草は数週間で新しく入れ替わり、枯れた葉が海底に堆積して豊富な有機物となります。この有機物を利用するバクテリアや低生生物が繁殖し、さらにこれらを食べるさまざまな生物が集まるため、藻場は生命が豊富で生産性の高い、とても豊かな自然となっているのです。
 藻場はまた、魚類の産卵場や稚魚が育つ場であり、ジュゴンを始め、マナティー、アオウミガメなどの海草を食べる大型動物が生息する場所でもあります。

© James Morgan / WWF

沖縄のジュゴン

日本にもジュゴンは生息しています。沖縄の海は、実は世界中でジュゴン見られる最も北限の場所なのです。しかし、現在生き残っている個体数は50頭以下といわれ(日本哺乳類学会のレッドデータブックによる)、絶滅寸前となっています。かつて、沖縄の近海にジュゴンは広く分布していましたが、1960年代以降の確認は稀になり、確かな生息は確認されていません。絶滅した可能性が高いとされています。

世界の海牛類

ジュゴンは海牛類の仲間です。海牛類は、ジュゴン科とマナティー科に分類されており、インド洋および太平洋にはジュゴンが、大西洋と大西洋に注ぐ大河川の流域には近縁種のマナティーが分布しています。
 ジュゴンは海洋にのみ生息していますが、マナティーは淡水と海洋の両方の環境で見ることが出来ます。 ただし、ジュゴンとマナティーが、同じ海域で見られることはありません。
また、 マナティーとジュゴンは、形がよく似ていますが、よく見ると、尾の形が違います。マナティーが丸く、ボートのオールのような形をしているのに対し、ジュゴンの尾はクジラやイルカのような、半月の形をしています。

世界の海牛類の分布図

分布域
和名 学名
ジュゴン Dugong dugon
アフリカマナティー Trichechus isenegalensis
アマゾンマナティー Trichechus inunguis
アメリカマナティー Trichechus manatus
ステラーカイギュウ Hydrodomalis gigas(絶滅)

幻の巨大ジュゴン ステラーカイギュウ

ジュゴン、マナティー、いずれも熱帯から亜熱帯にかけての、陸地に近い浅い沿岸域に生息しています。
 唯一の例外は、北のアリューシャン列島に生息していた、全長8メートル、6トンにもなる巨大なジュゴン、ステラーカイギュウでした。しかし、この大型のジュゴンは、18世紀に乱獲により絶滅してしまいました。現存するジュゴンは1属1種のみということになります。

 

WWFの野生生物を守る取り組み

密猟や生息地の破壊などによって追い詰められていく生物を絶滅から救うために、WWFは長い経験と国際的なネットワークを活かし、さまざまな保護プロジェクトを行っています。

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