認証パーム油を使うには? RSPOへの手引き
2013/08/16
RSPOとは
ビジョンと使命
持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil、以下RSPO)には、メンバーが共有すべきビジョンと使命があります。
ビジョン:
- RSPOは持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する
使命:
- 持続可能なパーム油製品の生産・購買・融資・利用を促進する
- 持続可能なパームのサプライチェーン全体にわたり信頼される国際的標準の策定、実施、検証、保証、および定期的見直しを行う
- 市場での持続可能なパーム油の取引による経済・環境・社会への影響を見守り、評価する
- 政府、消費者を含むサプライチェーンを通じた全てのステークホルダーと積極的に関与する
ガバナンス
RSPOの運営は7つのセクターからそれぞれ総会で選出された16名の理事により構成される理事会が担い、理事の任期は2年です。その下に4つの常任委員会とテーマごとのワーキンググループが置かれ、重要な決定は正会員が集う総会においてコンセンサスにより採択されます。
原則と基準(Principles and Criteria、P&C)
RSPOが考える持続可能なパーム油生産には、関連する法制度に違反していないだけでなく、経済的に存続可能であること、環境的に適切かつ社会的に有益であることが求められます。それらの要件を具体的に示したのが「RSPOの原則と基準」です。8つの原則の下に43項目の基準が定められ、個々の基準ごとにその具体的指標とガイダンスが示されています*。例えば新規開発において原生林はもちろんのこと、二次林であっても自然保護上または地域住民の生活に重要な場所であれば開発は認められません。原則と基準の内容は状況の変化に対応できるよう、5年おきに見直しが行われます。
アブラヤシ生産における8原則
- 透明性へのコミットメント
- 適用法令と規則の遵守
- 長期的な経済・財政的実施可能性へのコミットメント
- 生産者、搾油工場の適切なベストプラクティス
- 環境への責任と自然資源、生物多様性の保全
- 農園・搾油工場労働者、影響を受ける地域社会への責任ある対応
- 責任ある新規農園開発
- 継続的改善へのコミットメント
- ※原則と基準は見直しを経て、2013年4月25日に開催されたRSPO臨時総会にて承認され、改定されました。
RSPOへの参加
RSPO認証パーム油を調達し利用していることを対外的に主張するには、まずRSPOの会員になる必要があります。
1)会員の区分、会費
以下の3つの会員区分から該当するメンバーシップを選びます。
会員区分 | 対象者 | 基本情報 | |
---|---|---|---|
Ordinary Member (正会員) | アブラヤシ生産者、製油業・商社、消費者製品製造業、小売業、銀行・投資家、環境・自然保護NGO、社会・開発NGOのいずれかに属する団体 | 【会費】2000ユーロ/年 (農園面積500ha以下の小規模生産者は500ユーロ/年) 【権利】 ・総会における投票権 ・RSPOの全ての情報へのアクセス権 ・理事会メンバーへの立候補 ・理事会及び作業部会への参加 |
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Affiliate Member (賛助会員) | パーム油のサプライチェーンに直接の関わりを持たない組織・個人 | 【会費】250ユーロ/年 【権利】 ・総会のいずれの会議にも参加可能 ・投票権は持たない |
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Supply Chain Associate Member (準会員) | パーム油のサプライチェーンにおけるビジネスに関わっているが、その規模が年間500トン以下である組織 | 【会費】100ユーロ/年 【権利】 総会での投票権はなく、決められた範囲の情報アクセスが認められる ※資格は入会後2年間有効、その後は毎年更新 |
2)会員の行動規範(Code of Conduct)
会員には守るべき行動規範が定められています。RSPOの取組に積極的にコミットすることが求められ、特に正会員は年次報告として取組の進捗を報告することになっています。
具体的には以下を参照ください。
- RSPOホームページ
RSPOホームページ >membership>RSPO Code of Conduct
3)入会の申請
申請はRSPOのホームページからオンラインで行えます。受理された申請はホームページ上でのパブリックコメントを含む、各ステークホルダーからのインプットを受け、最終的に理事会の承認をもって決定されます。
- RSPOホームページ
RSPOホームページ>membership>How to Apply
4)Green Palm会員
申請はRSPOのホームページからオンラインで行えます。受理された申請はホームページ上でのパブリックコメントを含む、各ステークホルダーからのインプットを受け、最終的に理事会の承認をもって決定されます。Book&Claim、いわゆる証書取引制度はRSPO認証制度の枠の外にあり、RSPOを補完する取組と考えてもよいかもしれません。英国の油脂会社で、RSPO創設にかかわったメンバーでもあるAarhus Karlshamn UK Ltdの子会社であるBook&Claim Ltd社がRSPOの承認のもとで管理運営しています。グリーンパームを購入するにはグリーンパームの会員になる必要があります。入会には入会費500USドルを最初に一度支払うだけでよく、すでにRSPO会員である場合はグリーンパーム入会費が免除されます。
RSPOのメンバーになった後は?
アブラヤシ農園から始まり最終製品ができるまでの各工程を認証することにより、全工程にわたるchain of custody(管理の連鎖)が繋がり、最終製品中に使用されているパーム油の追跡が可能となります。
そのためRSPOでは、生産段階で「原則と基準(P&C)」に則って持続可能な生産がおこなわれていることの認証(P&C認証)と、認証パーム油(Certified Palm Oil)がサプライチェーンのすべての段階を通じ間違いなく受け渡されるシステムが確立されていることの認証(SCCS認証)の2種類の認証制度を設けています。いずれもRSPOは直接審査・認証業務は行なわず、第三者であるRSPO認定の認証機関が実施します。審査の結果はRSPO事務局に送られ、その要約はホームページ上で公開され30日のパブリックコメントにかけられます。認証の有効期間は5年間ですが、毎年順守状況がチェックされ、場合によっては期間内であっても取り消されることもあります。
日本におけるパーム油のユーザー企業はSCCS認証の取得が主と考えられますが、認証を取得し、認証パーム油を利用した商品には、RSPOのロゴマークを使用することができます。
1)生産段階での認証(P&C認証)
生産現場での基本的な認証単位は、搾油工場(Mill)とそこにパーム油果房を供給する全ての直営農園、契約農園、独立農園が含まれます。審査はRSPO認定の認証機関が「8つの原則と43の基準」を中心に最低3人の審査員によって、2回にわたり実施されます。最初の審査では基準とのギャップが特定され、2回目にそれらの改善状況を中心にチェックされます。
2)サプライチェーン認証(SCCS認証)
SCCS(Supply Chain Certificate System)認証とは、認証パーム油を使用して作られた製品を取り扱う製造・加工・流通過程でSCCS認証の要求事項を満たしているかを認証する制度です。認証パーム油を海外から仕入れる商社、油を加工する企業、商品を製造するメーカーなど、最終製品が出来上がるまでの各工程でSCCS認証製品の所有権を持つ組織は認証取得の対象となります。
4つのサプライチェーンモデル
パーム油の複雑なサプライチェーンを反映して、3つの認証モデルと1つの証券化モデルがあります。
1)アイデンティティプリザーブド(Identity Preserved、IP)
認証された生産現場から最終製品製造段階に至るまで完全に他のパーム油と隔離され、どの生産農園から得られたのかが特定でる認証モデルです。
2)セグリゲーション(Segregation、SG)
複数の認証された農園から得られた認証パーム油からなり、他の非認証パーム油とは混ぜ合わされることなく、認証油だけで最終製造者まで受け渡される認証モデルです。生産農園を一つに特定できませんが、認証農園から生産された原料であることが保証されます。
3)マスバランス(Mass Balance、MB)
認証農園からの認証油が流通過程で他の非認証油と混合される認証モデルです。物理的には非認証油も含んではいますが、購入した認証農園とその数量は保証されます。
4)ブックアンドクレーム(Book & Claim、B&C)
物理的な認証油の移動を伴う3つの方式とは異なり、グリーンパーム・プログラムのもとで認証油の証券が生産者と最終製品製造者、販売者との間でオンライン取引されるモデルで、グリーン電力類似の方式といえます。これによりサプライチェーンの認証油流通体制が未整備で調達困難な場合でも、認証生産者を直接的に支援することが可能になります。ただし、この方式は将来的に認証油だけの取引が可能になるまでの間の暫定的な仕組みとして位置づけられています。
5)サプライチェーンモデルの比較
基本的にはトレーサビリティのより確かな、IPもしくはSG方式を採用することが最も望まれますが、特にパーム核油などは調達先のサプライチェーンがまだ対応できていないことがあります。そのような場合、認証油が入手可能になるまで待つことなくグリーンパームの購入から始めることが期待されます。採用するサプライチェーンモデルによって、会員の要件や使用できるロゴとそれに付記する表記などが異なります。
サプライチェーン モデル | IP アイデンティティ プリザーブド | SG セグリゲーション | MB マスバランス | B&C ブックアンドクレーム |
---|---|---|---|---|
使用可能な ロゴマーク |
||||
表記 | 認証された持続可能なパーム油が含まれています | 認証された持続可能なパーム油の生産に貢献しています | ||
トレーサビリティ | ◎ | ○ | △ | × |
コスト | ¥¥¥¥ | ¥¥¥ | ¥¥ | ¥ |
表見出し2 | RSPO正会員またはRSPO準会員 | Green Palm会員 |
企業がRSPOに参加する意義
RSPOの認証を受けたパーム油が最初に市場にデビューしたのは2008年になってからで、認証制度としてはまだ若く、改善すべき点も少なくありません。サプライチェーンの対応にもまだ多くの課題を抱え、企業の認証油採用へのハードルは必ずしも低いとはいえません。しかしRSPOに会員として参加する企業の数はここ1、2年で世界的に大きく増加しています。 参加する理由は企業によって様々あると考えられますが、大きく分けると以下の3つに整理することができるでしょう。
- リスクへの対応:より持続可能な生産者を選択することで、安定した原材料調達に対するリスクや、疑惑がもたれる生産者からの調達によるブランドへのリスクなどからの回避につながります。
- 差別化:認証マークなどを取得することにより競合他社との差別化や販促に活かすことができます。
- 企業ポリシーとの整合性:たとえ使用するパーム油が少量であったとしても、この問題を無視し続ければ現行の企業経営もしくはCSR方針との整合性や一貫性が保たれなくなるでしょう。
理由はどうあれ1社でも多くのパーム油ユーザー企業がRSPO認証油の調達を積極的に推進することが、アブラヤシ生産現場の有り様を変えてゆく原動力であることは間違いありません。
国内RSPOメンバー企業リスト(2014年10月末現在、入会年月日順)
☆ | 正会員 | 入会年月日 |
---|---|---|
1 | 三菱商事株式会社 | 2004年8月4日 |
2 | 不二製油株式会社 * | 2004年9月8日 |
3 | サラヤ株式会社 | 2005年1月18日 |
4 | ライオン株式会社 | 2006年3月26日 |
5 | 伊藤忠商事株式会社 | 2006年6月13日 |
6 | 株式会社コープクリーン | 2006年7月24日 |
7 | 花王株式会社 | 2007年4月4日 |
8 | 三井物産株式会社 | 2008年3月11日 |
9 | 株式会社資生堂 | 2010年8月10日 |
10 | ミマスクリーンケア株式会社 | 2010年8月31日 |
11 | 磐田化学工業株式会社 | 2010年9月1日 |
12 | 太陽油脂株式会社 | 2011年3月25日 |
13 | 株式会社J-オイルミルズ | 2011年11月1日 |
14 | 味の素株式会社 | 2012年8月9日 |
15 | 丸善薬品産業株式会社 | 2012年8月27日 |
16 | 阪本薬品工業株式会社 | 2012年9月14日 |
17 | 日清オイリオグループ株式会社 | 2012年9月14日 |
18 | 玉の肌石鹸株式会社 | 2012年10月12日 |
19 | 日油株式会社 | 2012年10月15日 |
20 | 三洋化成工業株式会社 | 2013年8月14日 |
21 | 双日株式会社 | 2014年2月11日 |
22 | 第一工業製薬株式会社 | 2014年7月24日 |
23 | 月島食品工業株式会社 | 2014年10月24日 |
☆ | 準会員 | 入会年月日 |
---|---|---|
1 | 日光ケミカルズ株式会社 | 2011年2月10日 |
2 | 川研ファインケミカル株式会社 | 2012年4月6日 |
3 | テイカ株式会社 | 2012年8月17日 |
4 | 高級アルコール工業株式会社 | 2012年9月28日 |
5 | ADEKAケミカルサプライ株式会社 | 2012年10月18日 |
6 | 池田物産株式会社 | 2013年3月30日 |
7 | 東邦化学工業株式会社 | 2013年4月29日 |
☆ | 賛助会員 | 入会年月日 |
---|---|---|
1 | 株式会社エックス都市研究所 | 2008年10月22日 |
- ※不二製油株式会社はFuji Oil Group(ベルギー)としてRSPOに加盟しています。