関連情報:目標案がいかに公平で科学的に妥当であるかについての各国の説明
2015/04/24
2020年以降の新枠組みにおける国別削減目標案を、国連に提示する際には、なぜ自国の目標案が公平で科学的に妥当だと考えるのか、説明が求められています。最終的に2015年末にパリで開催されるCOP21で目標が決定されるまでに、各国や研究機関などがお互いの目標案について比較検討することが予想されます。2015年11月1日には、各国の目標案を足し合わせて2度未満に抑えるために科学的に妥当かを検証する報告書が出されることになっています。ここでは、主要な国の科学的な妥当性と公平感の説明について、ご紹介しています。
国名 | 概要 | 公平性と野心度 |
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スイス | ・2030年までに、1990年比で、温室効果ガス排出量を50%削減する。 ・2025年までには、1990年比で、35%の削減が予期される。 |
・IPCCの示す2度未満の排出経路(2050年40~70%削減)に沿っている ・90年比54%産業活動が増加し、人口も18%増加したにもかかわらず、総排出量及び一人当たり排出量は減少しており、2010年の一人当たり排出量は世界平均(6.4 tCO2eq) ・限界削減費用は高い(削減ポテンシャルは主に業務と運輸部門) ・2030年までの策定された公約は、スイスで一人当たり排出量をCO2換算で1-1.5トン削減するスイス政府の長期ビジョンとさらに一致 |
EU | ・2030年までに、1990年比で、温室効果ガス排出量を国内で少なくとも40%削減する。 | ・目標は、1990年比で2020年までに20%の排出削減(オフセットの使用を含む)という現在の取り決めを大幅に上回る ・EUの目標は、IPCCが示す先進国全体で80-95%削減が必要という(1990年比)というラインに沿っている。さらにそれは、1990年に比べ地球規模の排出量を2050年までに少なくとも半分にする必要性と一致する。 ・EU加盟国は、GDPが44%以上成長している同じ時期に、すでに1990年レベルの約19%まで排出量を削減している。 ・その結果、EU加盟国の一人当たり二酸化炭素排出量の平均は、CO2に換算して1990年の12トンから2012年には9トンに減少しており、2030年には6トンに減少すると予測されている。 ・EU加盟国の排出量は、1979年にピークを打っている。 |
ノルウェー | ・2030年までに、1990年比で、温室効果ガス排出量を国内で少なくとも40%削減する。 | ・ノルウェーの40%削減は、2050年に2度未満に抑える経路のラインに沿っている。 ・IPCCによるコスト効率的な地域配分において、OECD諸国が実施しなければならない削減幅の最も高い数値である。 (IPCC WGIII, table 6.4). ・京都議定書第2約束期間(2013-2020)における目標は、平均して84%と一致しており、2020年に30%減というノルウェーの目標と一致する。 ・ノルウェーのINDCは、欧州連合内で行われる。 |
メキシコ | ・2030年までに、BAU比で、温室効果ガスおよび短期寿命気候汚染物質の排出量を合わせて25%削減(うち、GHGのみでは22%削減)。 ・ただし、国際炭素価格、資金・技術支援等の条件次第では、同40%削減(うち、GHGのみでは36%削減)へ引き上げることを示唆。 |
・メキシコは、気候変動の影響を非常に受けやすい発展途上国であり、温室効果ガスの国内排出量は、世界全体の排出量のわずか1.4%、全ての分野を含む我々の正味一人当たりの二酸化炭素排出量は、CO2換算で5.9トン ・それでもメキシコは、責任感のある国として、経済成長と排出量をデカップリングする先進的な開発への道にコミットする。 メキシコの目標は公平で野心的である。なぜならば、はじめて条件のないGHG削減目標として、2030年に22%(ブラックカーボンを入れると25%)を掲げるからである。これらの削減は他の削減行動の追加である。 |
アメリカ | ・2025年までに、2005年比で、温室効果ガス排出量を26~28%削減する。28%削減へ向けて最大限の努力をする。 | ・アメリカ合衆国は、2020年に2005年比で17%排出量削減する2020年目標を実現する経路に乗るために、すでに相当な政策措置を講じている。 ・2025年の目標を達成するためのさらなるアクションは、温室効果ガス排出量削減の現在のペースの大幅な加速を意味する。 ・2025年目標を達成することは、2005年比で、現状持っている2020年目標を9-11%も上回る更なる排出量削減を必要とする。これは、年間2.3-2.8%の削減率になっており、2005年-2020年の年間ペースの削減率のほぼ倍となる。 ・アメリカは、温室効果ガスの減少に強くコミットしており、(中略)経済全体にわたる削減目標を、2025年に2005年比で26-28%とおいており、28%削減することに最大限の努力をはらう。 ・全世界の気温上昇を2度未満に保つには、相当な削減量が必要であり、2025年の目標は、脱炭素化への道筋と一致している。 ・この目標は、2020年から2050年までの80%またはそれ以上の経済全体の排出量削減へ向けて直線の排出量削減経路と一致している。 |
ロシア | ・2030年までに、1990年の、70~75%に抑制する(※90年比20~25%削減)ということが、長期的な指標になりうる。 ・ただし、森林による吸収量を最大限に算入できることが条件。 |
・2000年から2012年にかけて、GDPは172.9%に達したが、GHG排出量(森林吸収源除く)は、111.8%に留まった。経済成長とGHG排出量は、早めに示した目標(2020年までに最大75%に抑制(90年比)、さらに2030年に向けて発表するINDCs)で切り離すことができる。 ・その目標はGDP単位あたりのGHG排出量も削減するだろう。 ・ロシアの森林吸収源が十分に考慮されるなら、2030年までに70-75%にGHG排出量を抑制することは、社会・経済の発展に何の障害も引き起こさず、土地利用や持続可能な森林管理政策の目的を果たし、エネルギー効率のレベルを上げ、エネルギー単位を下げ、再生可能エネルギーのシェアを増やすことになる。 ・ロシアの北方林は、気候変動を緩和し、水資源を守り、土壌浸食を阻止し、地球上の生物多様性保護のために世界的な重要性を持つ。ロシアは北方林の70%と、世界の森林資源の25%を占める。合理的使用、保護、維持管理と森林再生、すなわち森林管理は、GHG排出量を削減するためのロシアの政策の最も重要な要素の一つである。 ・2030年に90年比で25~30%GHG排出量を下げることは、ロシアの低炭素型の開発を進め、2度未満に抑えるという長期的な目標と整合する。この目的は将来の気候に関する合意に所属するすべての国が努力してはじめて達成される。 |