グレートバリアリーフで過去最大規模の白化現象
2016/05/02
世界屈指の豊かなサンゴ礁「グレートバリアリーフ」では、現在、過去最大規模のサンゴの白化現象が確認されています。主な原因は、気候変動(地球温暖化)やエルニーニョ現象による海水温の上昇と考えられています。これに、陸域からの水質汚染などによる環境変化のストレスが加わると、サンゴが死滅する危険性がさらに高まります。世界各地のサンゴ礁では1998年に世界規模の白化現象が起き、その後も各地でこの白化が報告されてきました。地球温暖化と関連があると考えられているサンゴの白化現象を防ぐためには、各国による気候変動をくいとめるための取り組みと国際的な協力が強く求められます。
グレートバリアリーフを襲った白化現象
オーストラリア北東部、南北2,000キロ以上にわたって広がる世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフ。
1981年にユネスコの世界自然遺産に登録されたこの海は、400種のサンゴ、1,500種の魚類が生息する、世界屈指の豊かさを誇る海洋生態系であり、絶滅危機種のウミガメやジュゴンなどの大型海洋生物の生息域でもあります。
このグレートバリアリーフで2016年3月、大規模なサンゴの白化現象が生じていることが分かりました。
これを明らかにしたオーストラリア、ジェームスクック大学のテリー・ヒューズ教授の調査報告によれば、グレートバリアリーフの北部1,000キロ圏内の約95%でサンゴが白化。過去に例のない規模になっているということです。
白化とは、水温の変化や汚染といったストレスをサンゴが受けると、共生している褐虫藻(藻類の一種)がサンゴの体内から抜け、サンゴの体が白く変色する現象のことです。日本の沖縄でも見られる現象です。
この褐虫藻はサンゴに酸素や栄養を供給しているため、白化が長期にわたると、サンゴが広範囲に死滅してしまいます。
白化現象を引き起こすもの
こうした大規模な、白化を引き起こすストレスの原因としては、地球温暖化の影響や、エルニーニョ現象による海水温の上昇などが考えられています。
特にエルニーニョ現象は、1998年と2010年にも世界的なサンゴの白化現象を起き起こしており、2014年に発生したエルニーニョについても影響が懸念されていました。
また、陸上からの排水に含まれる農薬や化学肥料が引き起こす水質汚染や富栄養化なども、ストレスを増大させる大きな要因になっています。
グレートバリアリーフでは近年、サンゴ礁における土砂などの投棄や、陸域からの土砂の流入による水質の悪化によるサンゴへの悪影響が指摘されていたことから、こうした問題がサンゴの白化を深刻化につながっていることも懸念されています。
ヒューズ教授は、今回生じた大規模な白化について「サンゴがどの程度が死亡するか、まだ断定できないが、翌月まで続けばおそらく半数程度は死んでしまう可能性がある」と推測。
また、南部へも広がった場合、グレートバリアリーフ全体が白化の危機にさらされるおそれもあります。
白化からサンゴを守るために
海の環境が元に戻れば、サンゴは白化しても回復しますが、繰り返しサンゴが海水温が高い状態にさらされると、サンゴ自体が衰弱するため、他の病気にかったり、再び白化するおそれが高くなります。
またサンゴ礁は、海の熱帯林と呼ばれる生物多様性が高い海域です。サンゴの衰弱や死滅は、そこに生きる魚介類、ウミガメや水鳥など、サンゴ礁の海に頼って生きる多くの野生生物の生存にも大きくかかわります。
白化からサンゴを守ることは、これらの海の自然のつながりを守ることでもあるのです。
WWFオーストラリアでは、オーストラリア政府に対し、長年にわたりグレートバリアリーフの水質汚染の防止やサンゴ礁保全計画の改善を要請。その保全に力を入れてきました。
今回の大規模な白化についても、WWFオーストラリアは同国大統領に対し、国として一刻も早く再生可能な自然エネルギー100%を実現することと、海洋汚染への対策強化を求めた緊急声明を発表。賛同者への署名を呼び掛けました。
しかし、ひとたび生じた大規模な白化現象を、短期間で終息させることは不可能です。
これを防ぐには、日常的な海の汚染を無くすと共に、世界規模で進む地球温暖化をくいとめねばなりません。
日本含めた各国による積極的な温暖化防止の取り組みと協力が、グレートバリアリーフをはじめとする世界のサンゴ礁の保全には、欠かせないのです。