生物多様性条約COP10:2020年までの10の課題
2010/10/18
2010年10月18日、名古屋に各国の代表が集まり、生物多様性の保全を話し合う「生物多様性条約(CBD)」の第10回締約国会議(COP10)本会議が始まりました。この議で、課題となっている点は何なのか? WWFが特に注目する10のポイントをお伝えします。
CBD・COP10「10の課題」
課題1:生物多様性の価値を明らかにする
自然資本勘定という考え方があります。これは、国家が予算策定する際、生物多様性の保全を確実に予算に組み込むため、自然環境の価値を計算し、考慮するというもの。これにより、さまざまな政策の決定に際して、生物多様性や環境の保全に対する認識も、より強く反映されるようになります。
課題2:野生生物の生息地を保全する
さまざまな生物が生きる自然の生息環境の喪失は、地球の生物多様性を損なう、最も大きな要因になっています。人口増加や経済的圧力、社会的圧力が、その原因です。今も残されている多様で豊かな自然環境を守りながら、持続可能な形で自然資源を利用した社会作りを進めねばなりません。
課題3:森林の減少をくいとめる
前回の生物多様性条約会議で、67カ国の政府代表が「2020年までに森林減少正味ゼロ(ZEDD)を達成する」というWWFの提言に賛同し、署名しました。しかし、世界の森林は、今も毎分サッカー場36面分ずつ失われています。とりわけ熱帯林の消失は、地球温暖化をも促進させる、深刻な問題となっています。
課題4:水を守る
河川や湖沼などの、内陸の淡水をめぐる自然環境は、急激に失われており、過去10年で消失のスピードは4倍になったといいます。これは、自然破壊を伴う開発と、過剰な水の利用の結果です。水資源を枯渇させないためにも、水辺の自然(ウェットランド)の保全が急務です。
課題5:環境に悪影響をもたらす補助金を撤廃する
世界各国の制度の中には、自然を壊したり、資源を枯渇させてしまうことにつながる補助金が、数多く存在しています。これらは、漁業や農業、エネルギー事業などに充当され、環境破壊を促進させています。こうした補助金を撤廃し、社会的に環境破壊を止めてゆくことが必要です。
課題6:人類の「エコロジカル・フットプリント」を下げる
自然資源の過剰な消費が、生物多様性損失の大きな原因となっています。エネルギーや食糧の分野での消費を見直しながら、人類の消費活動が地球環境に与えているインパクトを示す「エコロジカル・フットプリント」の数値を、西暦2000年の水準まで下げてゆく必要があります。
課題7:魚などの漁業資源の乱獲を防ぐ
世界各地の海洋で起きている、魚などの水産資源の乱獲が、海の生物多様性に大きな圧力をかけています。資源の枯渇も懸念されており、商業漁船による乱獲をどう規制するかが大きな課題です。また、獲る必要のない生きものまで獲ってしまう、無差別な「混獲」も問題です。
課題8:保護地域を増やす
生物多様性条約では、陸上や海域のそれぞれ10%を保護地域とすることが目標とされています。しかし、目標は達成されておらず、特に海洋ではほとんど進んでいません。さまざまな生態系を保全し、温暖化などの影響を軽減するために、今後は地表の20%以上を保護地域として守ることが、各国政府に求められます。
課題9:生物多様性条約の効果をより拡大する
国際社会には、生物多様性条約のほかにも、貧困問題や貿易関連、地球温暖化など、環境に関連する、さまざまな条約や協定があります。生物多様性条約を、これらの国際協定と連携させ、目標を共有しながら、地球環境を保全するための、より効果的な取り組みと協力を実現する必要があります。
課題10:生物多様性保全のための新しい形
生物多様性条約での決議は、これまで各国の環境政策に、確かな指針をもたらしてきました。しかし、その政策の実現に必要な各国内の関係省庁の協力は、まだ十分に実現できていません。部門を横断した、生物多様性の保全を促進するための、新しい行政のあり方を、後押ししてゆかねばなりません。