ジャワサイ、最後の生息地で繁殖を確認
2011/02/28
ジャワサイ最後の生息地といわれるインドネシア、ジャワ島にあるウジュン・クーロン国立公園。ここで最近、2組のジャワサイ母子の映像が撮影されました。ウジュン・クーロンは、1960年代からWWFがジャワサイ保護活動に力を入れてきた場所です。もう一つの生息地であったベトナムでは、2010年に起きた密猟以後、生息が確認できていません。そのため、このインドネシアの国立公園がジャワサイにとって世界で唯一の生息地と考えられます。ここに生息するジャワサイは40頭前後。今回撮影に成功した動画は、その保全活動を進める上でも、非常に重要なデータとなります。
2組のジャワサイ母子の撮影に成功!
2010年の終わり、WWFインドネシアとウジュン・クーロン国立公園管理局が設置した自動ビデオカメラが、2組のジャワサイとその子どもたちの撮影に成功しました。
2010年11月には、ジャワサイの母親とオスの子どもが、12月には別の母親のサイと1歳ぐらいのメスの仔サイが深い森の中を歩く姿が捉えられました。
これらの動画は、ウジュン・クーロン国立公園以外ではほぼ絶滅しているとみられるジャワサイが、唯一残された生息地で現在も繁殖していることを証明する大変貴重なものです。
ウジュン・クーロン国立公園管理局のアグス局長は、「この2頭の子どものサイの存在を明らかにした動画は、世界でこの国立公園にのみ生息し、絶滅の危機にあるジャワサイの個体数の動向に関する重要な情報である」と言います。
WWFでは、1960年代からこの地域でジャワサイの保護活動をはじめ、過去10年間に設置されたカメラとビデオカメラで14頭の子サイの撮影に成功しています。
しかし、その多くがオスだったことから今回のメスの子どものサイを確認できたことは、この国立公園に生息する個体群が将来的にも存続可能であることを示す朗報です。
「唯一の生息地」という危険
このウジュン・クーロン国立公園では、国立公園管理局やWWFなどの国内外のNGO、研究者などが協力して保護活動を行ない、生存を脅かす大きな要因となってきた密猟を厳しく取り締まることに成功しています。
しかし、ジャワサイに限らずどんな生物にとっても、ある一カ所のみに生息地が限られることは、種の存続にとって非常に危険な状態です。
ジャワサイは、動物園など飼育下にあるものがおらず、万が一この生息地の個体群が、伝染病や地震、津波など襲われた場合には、この種が地球上から姿を消す可能性が高いことを意味します。
インドネシアは、世界でももっとも地震の多い国の一つであり、この国立公園からわずか50キロの地には、過去に甚大な被害をもたらしたことのある活火山があります。
ウジュン・クーロン国立公園は、決して安息の地ではないのです。
50年の経験を活かして
絶滅に瀕している野生生物の保護は、WWFが設立された1960年代から力を入れて行なってきた活動です。
政府や研究機関などさまざまな組織と連携し、南アフリカでは、1900年頃にはたった一つの保護区に50頭未満しかいなったシロサイを、今では9カ国に約2万頭が生息するまでに回復させることにも成功しています。
また南アジアでも、インドサイの生息数回復に向けた生息地の分散に取り組んでいます。
ジャワサイが長期的な視野においても安定した生息数を保つためにためには、病気や天災などにより被る深刻なダメージからジャワサイを守る必要があります。
このためWWFでは、約半世紀にわたるこれまでの保全活動で培った経験とノウハウを活かし、現在の生息地から一部の固体を他の地域に移すことで、生息地を分散して個体数を増やそうという新たな取り組みを計画しています。
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