インドのトラの数が増加 最新調査結果より


世界のトラの生息国と、WWFを含めた複数の環境団体が2010年11月に合意した「トラ回復計画」の進展に朗報。インド政府は2011年3月、2010年の個体数調査の結果、国内のトラの個体数が前回2006年の調査時よりも増えていたと発表しました。2006年には1,411頭だったのが、最新の調査では1,706頭が確認されたということです。

インドのトラの推定個体数が増えた

インドには、世界の野生のトラのおよそ半数が生息しています。2006年の調査で確認されたインドのトラは1,411頭でしたが、最新の調査では1,706頭が確認されました。

この最新の数字は、インド環境森林省がWWFを含むパートナー団体の協力のもと、2010年に行なった推定生息頭数調査の結果によるもので、2011年3月に公表されました。

調査は、フィールドデータの収集、衛星データの解析、カメラトラップからの情報などを総合して、生息頭数を推定したものです。

今回公表された2010年の生息頭数には、2006年の調査時には対象外であった、世界最大のトラの生息地の一つ、スンダーバンズ地方の保護区に生息する70頭が含まれていますので、これをのぞくと、1,636頭となります。それでも、確認された数は225頭増えていることになります。

西ガーツ山脈でも増加

また、今回の調査対象地域には、インド南西部の西ガーツ山脈の一帯も含まれています。

ここは、WWFが世界の中で優先的に自然保護を行なうべき、重要保全地域(Priority Places)として選び出している場所のひとつで、実際に保全活動を行なっている地域でもあります。

この豊かな自然が残る西ガーツ山脈での調査では、渓谷(Moyar Valley)や高原(Sigur Plateau)に、50頭以上のトラがいることが分かりました。西ガーツ山脈全体では、2006年の412頭から、今回の534頭へと推定個体数が増えています。

WWFインターナショナルの事務局長であるジム・リープは今回の一連の調査結果について、次のように述べています。「こうした数字は、野生のトラの未来に希望を与えるものです。インドはトラの回復計画において、引き続き重要な役割を果たすことができます」。

世界の野生のトラの回復のために

しかし、このインドでの調査は、トラ保護活動が抱える問題の大きさをも、あらためて指摘する結果となりました。

保護区になっていない地域で、トラの生息地がかなり減っていることが分かったのです。分断化した生息地をつなげる「緑の回廊(corridor)」を保全する必要性にも、インド政府は言及しています。

また、こうした問題は、トラが生息している各国にも共通した懸念でもあります。世界の野生のトラの生息数は約3,200頭。絶滅の危機は、今なお大きなままです。

野生のトラは現在、インドネシア、マレーシア、カンボジア、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、中国、ロシアの13カ国に生息していますが、これらの国々は、2010年11月にロシアのサンクトペテルブルクで開催されたトラサミットに集まり、「トラ回復計画」(Global Tiger Recovery Programme=GTRP)に合意。今後に向けたトラ保護のための国際的な方針を打ち出しました。

この13カ国とWWF、トラフィック、世界銀行のグローバル・タイガー・イニシアティブ、グローバル・タイガー・フォーラム、ワシントン条約などは、今後とも協力しながら、トラ回復計画(GTRP)を進めていきます。

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野生のトラは、20世紀はじめには世界で10万頭ほどいたと推定されている。それが20世紀の100年間で約3,200頭にまで減少した。

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野生のトラが生息するためには、その食物となるシカなどの草食動物をはじめとした、多くの野生生物が息づく自然環境が必要となる。

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西ガーツ山脈の森林地帯。生息地の消失は現在トラの最大の脅威になっている。トラの生息地はすでに94%が失われた。しかも、アジア各地の分布域では、生息地が分断化された状態で生息している例が増えている。

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西ガーツ山脈には他にも多くの希少な動植物が生息する。絶滅危惧種のシシオザル(Macaca silenus)もその一種。

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