養殖ティラピアのASC認証製品、第1号が誕生
2012/09/18
世界の持続可能な漁業推進の一翼を担う、ASC(水産養殖管理協議会)の養殖水産物の認証制度。その認証の第一号が、2012年8月、インドネシアで誕生しました。ASCの認証は、自然環境や地域社会に配慮した養殖水産業を、第三者の立場から認証するもので、認証製品には一目でわかる、独自のラベルが付与されます。海のエコラベル「MSC」とならぶ、マークとして、今後の広がりが期待されます。
ASC認証第一号の誕生。
2012年8月20日、ASC(水産養殖管理協議会)は、リーガル・スプリングス社(Regal Springs)所有のインドネシアの養殖場が、ASC認証基準に基づいて、責任ある養殖ティラピアの認証製品を世界で初めて生産したと発表しました。
WWFアメリカの養殖部門の副部長で、ASC理事会の会長議長でもあるホセ・ヴィラローン(José Villalón)は、初のASC認証製品が誕生したことについて次のように言っています。
「この変化は、養殖産業にとって建設的なことであり、業界全体に水面のさざ波のように広がるでしょう。養殖ティラピアのASC認証は、まさに養殖産業にとって、来るべき姿を示しています。今後、多くの企業が養殖水産物の責任ある生産に追随することになるでしょう。
ASC認証のティラピアは、オランダ、ドイツ、オーストリア、スイス、デンマーク、スウェーデン、フランス、ベルギー、スペイン、カナダで販売される予定です。さらに、ホンジュラス、台湾、エクアドル、マレーシアのティラピア養殖場が、正式に認証のための審査を受ける予定と発表。今後、ASC認証製品の供給が飛躍的に増加することが期待されます。
世界の海洋への大きな影響
現在、世界で消費されている、魚や貝などの水産物のおよそ半分は、養殖によるものです。養殖は世界でもっとも急速に成長している食糧生産システムです。
すでに、天然の漁業が、漁獲可能なぎりぎりの量まで、あるいはそれを超えるレベルで行なわれている以上、さらに増加する水産物への需要に応えるためには、この養殖による水産物の供給が必要となります。
しかしその一方で、養殖産業の急速な拡大は、養殖場の開発による自然破壊や、周辺への環境汚染、また養殖魚などが野外に逃げることによる、病気などの拡散や、外来生物の問題を引き起こす危険性をはらんでいます。
環境保全に取り組むWWFは、この養殖産業がもたらす、環境や地域社会への負の影響に対して懸念を抱いてきました。
そこでWWFは、この拡大する養殖産業に働きかけ、養殖が人々と自然環境に与える影響を最小化し、拡大する水産物需要を満たすと同時に天然の漁業への負荷を取り除く水産物を生産する取り組みを進めてきました。
その取り組みの一つが、ASCの設立支援です。
ASCは、WWFとオランダの持続可能な貿易を推進する団体IDH(Dutch Sustainable Trade Initiative)の支援により設立された第三者機関で、自然や社会に配慮した持続可能な養殖業の認証と、その普及を目指しています。
このASCには、研究者や環境保護団体だけでなく、生産者や生産者団体、小売業者などの水産物の流通関係者が参加し、さまざまな視点から、認証制度の基準作りを進めてきました。
水産物養殖の業務を改善する
WWFとしても、養殖産業が効率を上げ、環境に配慮した持続可能な方向に向かうよう支援する活動を行なってきました。
まず、養殖水産物の責任ある生産の推進を支援するため、WWFは8つのアクアカルチャー・ダイアローグ(水産養殖管理検討会)という円卓会議を立ち上げ、まとめ役としての役割を担ってきました。
この円卓会議を通じて、WWFは、世界中の養殖業、小売り業、非政府組織(NGO)、科学者、企業関係者などと共に、養殖水産物の12種について責任ある養殖の基準を策定しています。
基準策定が完了したものについては、WWFは「養殖改善プロジェクト(Aquaculture Improvement Projects)」を通じて養殖業務の改善を支援することに、活動の焦点を移しています。このプロジェクトはASC認証の基準を養殖業者が理解し、規律を遵守するために生産手順を変更し、ASC認証を自力で進めるための支援に焦点を当てています。
現在WWFでは、パンガシウス(ナマズ類)、エビ、サケ、ティラピアなどいくつかの種について、世界中の養殖業者と共に活動しています。その活動を通じてASC認証を取得した養殖水産物が増えれば、消費者が地元の魚市場で買い物をするとき、あるいはお気に入りのレストランで食事をするときに、確実に、環境保全および社会的な面で最良の選択ができるようになります。
お店やレストランにASC認証の養殖水産物を扱うように、お客様の声として求めると同時に、ASCによって環境保全の上でも社会的にも責任ある製品と認証されている養殖水産物を買うことによって、未来から預かっている豊かな海を将来世代に引き継ぐことができるのです。
ASCの持続可能な基準に則して、水産業が世界中で適正に管理されれば、養殖産業は2050年までに90億人になると予測されている人口の食料問題に対する解決策の一つとなるでしょう。
天然の水産物を対象とした「海のエコラベル」のMSCと共に、今後のASCの拡大が期待されます。
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