「ひみつの熱帯林へようこそ!」親子向けワークショップを開催


2017年5月14日「ひみつの熱帯林へようこそ!」というワークショップを実施しました。スマトラトラやスマトラゾウなど、希少な動物が今も命をつなぐ、インドネシアの熱帯林。森は今、日本でも身近な食品や日用品に使われるパーム油という植物油を生産するために、急速に失われています。当日は、ジュニア会員とそのご家族を含む25名の皆さまと、身近なお買い物からできる森林保全について親子で考える時間となりました。

熱帯林へ迫る危機

インドネシアのスマトラ島やボルネオ島の熱帯林。その自然は、日本での暮らしと特に強い関わりを持っています。
なぜなら、その森を伐り拓いて生産される、紙や木材、そしてパーム油(植物油の一種)の一部が、日本にも輸入され、消費されているからです。特に近年、森林減少の主な原因の一つとなっているのが、「パーム油」を作るためのアブラヤシ農園(プランテーション)の開発です。

そこでWWFジャパンは、WWFインドネシアと協力し、その森を守る活動に取り組んでいます。

その一環として、2017年5月14日に東京港区のWWFジャパン事務局で開催した、親子向けワークショップ「ひみつの熱帯林へようこそ!」では、まず最初に、調査用の自動カメラで撮影した映像を使い、熱帯林でくらす動物たちの様子を観察しました。映っていたのは、泥浴びをするスマトラサイや、親子で散歩をするスマトラトラ。知っている動物が写ると、参加者のお子さんもすかさず名前を答えてくれました。

しかし、続く映像では、スマトラトラが歩いていた場所に、アブラヤシ農園を造成するため、ブルドーザーが入っていく様子が捉えられていました。

スマトラ島やボルネオ島では、急速に進む開発により森林が激減し、スマトラ島の低地熱帯林は、もうほとんど残されていません。森というすみかを失った多くの野生動物はまた、絶滅の危機に瀕しているのです。

その現状には「想像していたより悲惨だった」と驚きの声を残す方もいらっしゃいました。

アブラヤシ農園の開発に土地を整備するため、火が放たれた後の森。

パーム油を作るためのアブラヤシ農園。緑色の森に見えますが、一種類の木しか生えていません。

こうして生産されたパーム油の一部は「植物油」という表記で、身近なお菓子にも含まれています。

今回、WWFジャパンでは、ご参加くださった皆さまに、お気に入りのお菓子をお持ちいただきましたが、その原材料のラベルを確認してみると、当日集められたすべてのお菓子に「植物油」などの記載があることがわかりました。

パーム油はさらに、お菓子だけでなく、食品をはじめ日用品にも幅広く使われています。

日本ではパーム油を含む場合、「植物油」、「植物油脂」、「ショートニング」などと表示されるため、これらの表記を探します。

大切なのは、選ぶ意識と、関心の声

おいしい食べ物を作るため 、清潔な生活をおくるために生産されるパーム油。
でも、そのために熱帯林や生きものの命が犠牲になっているとしたら? 
そこでワークショップでは、毎日の小さなお買い物からできることを紹介しました。

ひとつは「RSPO」のマークの付いた製品をお店で選ぶこと。
これは、森を守り生産されたパーム油を含む商品につくマークです。日本でもRSPOマークのついた洗剤や石鹸、シャンプーがだんだん増えてきています。こうした商品を選ぶことで暮らしの中から森を守る応援ができるのです。

会場ではお菓子のパッケージからRSPOのマークを探してみたところ、外国のお菓子にはついているけど、日本のお菓子にはついていないという意見もありました。

残念ながら、日本ではRSPOマークのついた食品の商品は、まだほとんどありません。そこで「森を壊さないで作ったパーム油を使ってください 」と食品メーカーにリクエストすることも、企業を動かす大きなきっかけとなることをお伝えしました。こうした関心の声は、問題解決に繋がる大切な意思表示なのです。

また今回は、RSPO認証の取得を目指しているスマトラ島のアブラヤシ農家の方々からいただいた、このワークショップに参加する皆さまへメッセージもお伝えしました。自然に配慮した、持続可能なパーム油の生産を目指しRSPOの取得に取り組む思いを読んで、「お返事を書きたい」という参加者のお子さんもいました。
今回メッセージを寄せてくださった農家の方々へは、WWFジャパンでお返事をお預かりし、翻訳して、後日現地へお届けする予定です。

RSPOのマーク、手つかずの森が開発されていないか、生物多様性が守られているか、確認して作られたパーム油が使われている印です。

RSPOのマークがついているかどうか、メモをとりながらみんなで探してみました。

ワークショップではRSPOのパーム油でバスボムを作りました。毎日食べたり使ったりしていても、実際にパーム油を見る機会はないため「これがパーム油なの?」と香りをかいだり、手でさわってみたりしながら楽しんでいただけました。

かけがえのない熱帯林を守るために

WWFでは、パーム油を使わない、買わない、という選択ではなく、アブラヤシの農園開発と森林破壊のつながりを断ち切るために、RSPOという取り組みを通じて、生産地での問題を解決することを目指しています。

RSPOのパーム油が日本でも当たり前に使われるようになるためには、1人1人の選択や行動が必要です。そしてその行動は熱帯林とそこにすむ生きものの命につながっています。

参加したお子さんからは、一番心に残ったことについて「自然のかんきょうがこんなにあっかしていた」「パーム油でもRSPOの商品を買ったほうがいいことがわかりました。」「RSPOマークがいっぱいになることをねがいます」といった、ご感想をいただきました。

また親御さんからも「私たちの生活が、世界の環境を破壊していたことに気づかされました。」「身近なものにたくさんのパーム油が使われ、そのために森や動物が困っていることがよくわかりました。そのことを子供と一緒に考えられて良かったです。」とご感想をいただきました。

ワークショップは、熱帯林を守るために身近なところからできることについて親子で考えていただける時間となりました。

パーム油の生産における問題や、解決のためにできることをまわりの方々にもお伝えするきっかけとなれば嬉しいです。

ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。

アブラヤシ農家さんへ、お子さんからのお返事。パームは英語で「手のひら」という意味があるので、小さな手をなぞっていただきました。

参加してくださったお子さんたちと、記念撮影

開催情報

日時 2017年5月14日
場所  WWFジャパン事務局(東京都港区)
参加人数 25名
主催 WWFジャパン

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