「わいるどアカデミー+(ぷらす)」第5回を実施しました!
2014/04/04
WWFの活動について、担当職員からサポーターの皆さまに直接報告し、またスタッフと参加者とが交流することを 目的とした「わいるどアカデミー+(ぷらす)」。「カメルーン、ゴリラ、そして人 ~カメルーンの自然環境に起こっていること~」と題した第5回を、 2014年3月4日に、東京町田市のモンベル・グランベリーモール店で実施、8名の皆さんにご参加いただきました。
写真展会場に出張開講!
「わいるどアカデミー+(ぷらす)」はこれまで、WWFの東京事務所で実施してきましたが、今回初の試みとして、会場を変えて実施しました。
会場はモンベル・グランベリーモール店(東京都町田市)。アウトドア用品の企画と販売を手掛ける株式会社モンベルからは、アフリカ・カメルーンでのプロジェクトのため、2013年5月にテントやリュックサックなど多くの現物支援をいただきました。
さらに2014年に入ってからは、全国13か所の販売店舗で写真展「アフリカの野生を守る~カメルーン・ロベケ国立公園より~」を巡回実施することで、広報活動にもご協力いただいています。
グランベリーモール店でも2014年2月22日~3月9日の期間に写真展を実施しました。
そこで今回、写真とWWFスタッフによるトークを同時に楽しんでいただこうと、写真展の会場で「わいるどアカデミー(ぷらす)」を企画しました。当日は、WWFのアフリカプロジェクト担当である岡安直比が講師を務めました。
カメルーンとはどんな国?
カメルーンという国名は聞いたことがあっても、この国について具体的なイメージを思い浮かべられる日本人は、そう多くないかもしれません。
トークはまず、カメルーンの自然環境の特徴から始まりました。WWFジャパンが支援するカメルーンのプロジェクトの、中心となるのが「ロベケ国立公園」です。
ロベケ国立公園は、カメルーンを初め中部アフリカの6か国にまたがる、広さ370万平方キロ(日本の9.8倍)におよぶコンゴ盆地の一部。
この広大な盆地には、世界で2番目の面積を持つ熱帯の森が広がり、10,000種以上の植物や1,000種以上の鳥類、400種以上の哺乳類といった多様な生物のすみかとなっています。
また、ここに降った雨の大部分は、海に届く前に再び蒸発して雲となり、また盆地の中へ雨になって戻るなど、閉じられた水の循環が見られ、海からの水分の供給があまりないことが大きな特徴です。
このため、気候変動などによっていったん雨不足が起きると、生態系が大きく影響を受ける可能性が高い、脆弱な場所でもあります。
この盆地の森の北部にはサハラ沙漠に繋がるサバンナが広がり、カメルーンという国では北と南で、この森とサバンナという、まったく異なる自然の姿を見ることができます。
岡安は、バラエティーのある自然環境の中で、北ではライオンやキリン、そして南ではチンパンジー、ゴリラなどの大型の哺乳類が確認できることを説明しました。
多発する密猟や違法取引との闘い
多種多様な生物が息づくカメルーンですが、国民の寿命や収入、教育などを指標化した、国連開発計画による「人間開発指数2011」によれば、指標の算出された187カ国中150位と、発展途上の国といえます。
この国は今、世界でも貴重な自然を脅かす、さまざまな問題に直面しています。そのひとつが、象牙目当てのゾウの密猟です。
象牙は、東南アジアや中国などの経済成長に伴い需要が高まっており、その需要に応えるための密猟が、より組織化された密猟団により、国際的な規模で行われるようになっています。密猟団にはしばしば、他国から雇われた傭兵も加わります。
2月の岡安の現地出張中にも、カメルーン北部に51人の密猟団が、スーダンから入り込んだとの情報が飛び込んできています。
高性能の武器や探査機を備えた密猟者たちと対峙する可能性のあるレンジャーは、時として生命を危険にさらしながら、日々の活動に臨んでいることを説明しました。
2012年から始まった、WWFジャパンの支援
次に岡安は、WWFジャパンの支援で実施できたこと、これからの計画について説明しました。
WWFジャパンがカメルーンのプロジェクトを支援し始めたのは2012年。以来、多くのサポーターの皆さまに、継続してご支援をいただいています。
ロベケ国立公園を含む一帯は「サンガ・トリナショナル・ランドスケープ」として、2012年に世界自然遺産にも登録されています。
この名称が示すように、3つの国にまたがる区域になりますので、最も重要なのが、国境を越えたパトロールです。
WWFジャパンを通じた日本の皆さまからのご支援は、実際に現場をパトロールする森林省のレンジャーの訓練や機材整備などに充てられています。
また現場からは、他にも緊急に必要な物資の提供を求められることがしばしばあります。
今回、特に緊急性が高かったのが、移動のための自動車の確保。このリクエストに応えるため、WWFジャパンのサポーターの皆さまのご支援により、2013年の末に、パトロールのためのランドクルーザーも1台購入しました。
さ らに、この地域の生物多様性の保全を進めるため、野生動物の分布を改めて調査する必要があり、WWFジャパンの支援によって、WWFロベケに担当者を雇 用。資金不足で放置されていた野生動物の観察拠点(モニタリングポスト)7か所が再稼働していることを、モニタリングポストから観察された動物や鳥の動画 とともに紹介しました。
地域経済に貢献するエコツーリズムの開発
長期的な保全活動の効果を得るためには、活動の基礎となる調査や法的な取り締まりを強化するとともに、地域住民の生計を助けながら人々が活動に参加できる手段を確立することも必要です。
そのひとつが、エコツーリズムの開発です。
岡安は、現地の自然環境を損なわずに観光客を惹きつけるプログラムとして、野生のゴリラを人がある程度近距離から観察できるよう、ゴリラを人に馴らす取り組み(「ゴリラの人付け」)を開始したことを説明しました。
現在、ロベケ国立公園や周辺の村を訪れるツアー客は、年間200~250名ほどですが、これを500名に増やすことができれば、採算の取れるビジネスとして見通しが立つようです。
またエコツアーが確立すれば、ツアー客として一般の人が環境保全に貢献する機会も増えることになります。
「ゴリラの人付け」にはまだしばらく時間がかかりますが、じっくり取り組んでゆく必要があることを解説しました。
取り締まりの実効性を案じるサポーターからの質疑応答
密猟の取り締まりは容易ではないことが、参加者にも課題として印象に残ったようでした。
トーク後の質問でも、国の軍隊を動員するなど、規模を増しつつある密猟団に対処する策を講じた方がよいでのは、とのご意見がありました。
これに対しては、密猟団の活動が複数の国に関係し、また密猟団の目的が人命を奪うことではないため、国境警備以外の場所で国の軍隊動員が難しいこと、むしろ根本問題である、おおもとの需要を断ち切ることが重要だという見解をお話しました。
「わいるどアカデミーぷらす」では、毎回密猟に関するご質問をいただきます。国や地域に関係なく、サポーターがWWFの最も根幹となる活動に関心を寄せていらっしゃることがうかがわれました。
写真展会場を利用した「わいるどアカデミー+(ぷらす)」は、8月下旬に神戸・西宮市でも開催します。関西圏での開催は初めてになります。
詳細は後日ウェブサイトでお知らせいたしますので、皆さまのご参加をお待ちしています!