「わいるどアカデミー+(ぷらす)」2014年夏休み特別企画 開催報告
2014/08/15
2014年7月26日、第7回目のWWF会員のつどい「わいるどアカデミー+(ぷらす)」を開催しました。今回は夏休み特別企画として、ジュニア会員とご家族を中心に、68名の皆さまがご参加くださいました。会場は、東京・お台場にある体験型科学館「ソニー・エクスプローラサイエンス」。『紙とお菓子はスマトラ産?~熱帯の森とつながるわたしたちのくらし』をテーマに、インドネシア・スマトラ島でのWWFの活動をご紹介しつつ、急速な破壊が進む森を守るために皆さんができることについて考えました。
紙とお菓子はどこから来るの?お子さんを対象に、森を守る取り組みを紹介
さまざまな環境保全に取り組むWWFの活動を、担当スタッフからサポーターの皆さまに報告し、直接交流することを目的とした会員のつどい「わいるどアカデミー+(ぷらす)」も、おかげさまで3年目に入りました。小中学生の皆さんが環境問題について楽しく学べるよう、親子でご参加いただける夏休み特別企画は、昨夏に続き2回目です。
会場は、お台場の「ソニー・エクスプローラサイエンス」。ソニーグループはWWFのスマトラ島森林保全プロジェクトをご支援くださっており、この島の森林をテーマとした本イベントの開催にあたり、会場をご提供いただきました。
当日は、家にある紙製品やお菓子をそれぞれご持参いただき、その原材料がいったいどこから来ているのか、皆さんと一緒に考えました。
急速な熱帯林の消失が、私たちの暮らしにつながっている
いつも食べているクッキーのパッケージをご覧いただくと、原材料に「植物油脂」と書かれています。ポテトチップスやチョコレートなど、ご持参いただいたほとんどのお菓子に同じ表示が見られました。
これは「パーム油」と呼ばれる、アブラヤシの果肉から搾られる油のことで、今では大豆油を抜いて世界でもっとも多く生産される植物油脂です。お菓子だけでなく、マーガリン、即席めん、カレールーなどの食品から、石けん、洗剤、化粧品に至るまで幅広く使われており、スーパーマーケットにある商品の実に半数近くに含まれているといわれます。
多目的で使用できることに加え、1haあたりの収穫量も他の植物油脂に比べ多いことから、近年ますます需要が伸びている一方で、アブラヤシ農園の開発のために熱帯林が急速に壊されています。問題はパーム油そのものではなく、生産のしかたにあるのです。
同じことが、紙の原料となる木を栽培している植林地でも起こっています。貴重な自然林が大規模に皆伐されてしまったり、泥炭地が開発されて、大量の温室効果ガスの排出につながったりもしています。この状況に、世界有数の紙消費国である日本も、深く関与しているといえるでしょう。
日本が輸入しているコピー用紙の約7割が、インドネシアから来ています。WWFジャパンでは、インドネシア・スマトラ島の熱帯林を守る活動を行なっていますが、切り拓かれた森の写真をお見せすると、会場からはどよめきの声が起こりました。
森が失われれば、絶滅のおそれがあるスマトラゾウやオランウータンをはじめ、スマトラサイ、スマトラトラやマレーグマなど、多くの野生生物のすみかを奪うことにもなります。一方で、生息地を失ったゾウが村や畑に出没し、農地を荒らすなどして地域住民との摩擦も生じていることもご説明しました。
会場では、自動撮影カメラによって記録された、森に暮らす動物たちの映像もご紹介しました。スマトラトラの3頭の子どもがカメラをのぞきこむ愛らしい映像や、世界中で300頭未満しか生息していないとされ、カメラを設置して3年目でやっと捉えたスマトラサイの貴重な映像など、ふだん見られない森の中での動物たちの様子をご覧いただき、喜んでいただけたようです。
安心のしるし「FSC®」マークと「RSPO」マーク
自分 たちがふだん何気なく食べたり使ったりしているものが、大好きな動物たちの命やすみかを奪っているとしたら...。私たちには何ができるのでしょうか。そのひとつの答えとして、日々の買いものでは「安心のしるし」を選んでほしいとお伝えしました。それが、紙製品につけられる「FSC」マークと、パーム油を使った商品についている「RSPO」マークです。
これらのマークは、森の環境や地域社会へ配慮した、持続可能な方法でつくられた製品につけられます。違法伐採の取り締まりや、保護区を設定するよう生産国政府へ働きかけるといった取り組みももちろん欠かせませんが、世界中で急速に消費が進む現在、消費国やひとりひとりの消費者の力を借りることにも、大きな意味があります。私たちのこういった意思表示が、企業を動かすことにもつながります。
木を伐るのは一瞬、森に戻すのは何十年、何百年
最後に、WWFジャパンが行なっている、違法伐採の跡地に植林をして森を再生する取り組みもご紹介しました。しかし、元のような生きものたちが暮らす豊かな森がよみがえるまでには長い年月を要します。
貴重な自然を未来に引きついでいくため、まず必要なことは、今残されている森をしっかりと守ってゆくこと。そのためには、木を伐らないようにするだけでなく、森を持続可能な形で利用していくためのしくみづくりが欠かせないのです。
会場のお子さんからは、「いつも使っているノートが森を壊していたかもしれないことを初めて知りショックだった」「紙が木でできていることがわかってうれしかった。森がすくなくなるのはかなしいなぁ」「これからはFSCマークのものをなるべく買おうと思った」などの感想が聞かれ、自分の生活と森がつながっていること、森を守るためにできることがあることを理解していただけたようでした。
親子でご参加いただける「わいるどアカデミー+(ぷらす)」夏休み特別企画は二度目の試みでしたが、WWF職員の質問に積極的に手を挙げて答えてくださるなど、ご家族一緒に楽しんでいただけたようです。お父さん、お母さんからも、「楽しみながら、話をきくだけでなく自分でも考えたり、持参したノートを見てマークを探したりできてよかったです。」「小学1年ですぐに飽きるかと心配していましたが質問やクイズ、一緒に旅する形式が多く、たのしめて学べたようなので安心しました。」といったご感想をいただきました。
次回は初めて関東圏を飛び出して、兵庫・神戸でアフリカの森についてご紹介する企画を予定しています 。わいるどアカデミー+(ぷらす)は、今後も不定期ながら継続していきますので、どうぞ、ご注目ください。