インドネシアの川に住むイルカの静かな保護活動
2024/09/24
世界で3番目の大きさを誇るインドネシアの島。カリマンタン島。その大きさは日本の本州の3倍を超えます。
そのカリマンタンで最大流域面積を持つマハカム川。西から東にゆっくり、力強く流れるその川は多くの人の生活を支えています。
今回は、そんなマハカム川に住むイルカ、イラワジイルカ(日本名:カワゴンドウ)にまつわる「静か」なWWFの保護活動をお伝えします。
マハカム川に住むイラワジイルカの数は現在では80頭ほど。川の汚染や、工事などによる環境に変化に加え、混獲(本来漁獲する意図がない種、個体を漁獲してしまうこと)が原因でその個体数は大きく減少してしまいました。
小魚を追い求め濁流を泳ぐイルカが、誤って漁網に突っ込む、網を突き破る、あるいは絡まってしまうことは稀ではないのです。
そこでWWFは、少ないマハカム川に住むイルカを保護にむけて静かな音を使った保護活動を始めました。
漁網にピンジャーという機械をとりつけ、ピンジャーからイルカにも聞こえる音をだすことでイルカを網から遠ざけるのです。
WWFがピンジャー導入の実験を行い、モニタリングしていた6ヶ月の間はイルカの混獲件数をゼロに抑えることができました。
イルカを漁網から遠ざけることは地元の漁師の漁獲高を上げることにもつながります。
イルカが漁網に絡まったり、穴をあけると、魚が思うように捕まえられなかったり、網の修復に時間やお金がかかってしまうからです。
イラワジイルカはキーストーン種とも呼ばれています。キーストーン種というのは数が少ないながら生態系への影響が大きく、その地域の生態系の健全さを測る指標となるような種をさします。イルカはマハカム川の食物連鎖の最上部に位置し、流域全体の生態系のバランスを保つ役割も果たしているのです。
しかし、流域全体で80頭まで減少してしまった、マハカム川のイルカ。
一度、姿を消した種がよみがえることはありません。
WWFのネットワークとご支援いただいた皆様の力で提供できたピンジャー、そして地元漁師の協力で混獲という最大の減少原因は解決に大きく近づきました。しかし、川の汚染、やダム建設等の外的要因は依然残っています。自然環境を守るためのWWFの活動はまだまだ続きます。