自然と調和した再生可能エネルギーの普及を願って
2020/10/02
気候・エネルギーグループの市川です。
北海道の勇払原野(ゆうふつげんや)をご存じでしょうか?
渡り鳥の重要な生息地(湿地)としてラムサール条約の指定地となっているウトナイ湖を含む、一帯の湿地・平原地です。
現在、この場所で風力発電の開発が計画されており、WWFジャパンでは、2020年9月29日に、他団体と連名で、同地での開発を見直すよう事業者に要望書を提出しました。
開発予定地が、ラムサール指定地の近郊であるだけでなく、国際的な重要野生生息地(IBA)や生物多様性保全上の重要地(KBA)などに隣接しており、複数の絶滅危惧種の鳥類にとりわけ大きな影響があると懸念されたためです。
気候変動問題を解決するために、再生可能エネルギーの普及拡大が急務となっています。しかし今回のように、自然環境への影響が大きくなり得る場所での開発は、開発と保全の両立が叶わないだけでなく、再生可能エネルギーそのものへの懸念増大にもつながりかねず、残念なケースと言えます。
現在、気候変動による、野生生物への影響は増大しています。IUCN(国際自然保護連合)の発表では、気候変動が要因の1つで絶滅の危機にある種の数は、年々増加の一途にあります。
さらにWWFイギリスが以前発表した研究報告書においては、気候変動が深刻化した場合(4.5℃上昇)、世界の動植物種の約半分近くが絶滅の危機に晒される可能性があると警告をしています*。
気候変動が深刻化することで、生物への甚大な影響が懸念されていることを踏まえれば、さらに、そして一刻も早く、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やしていくことが必要です。
開発と保全の両立を図ることが、いま、社会に求められています。
参考文献
*WWF UK (2018), Wildlife in the warning world
*研究対象は全ての生物種に対して、35の優先地域、8万の代表種を対象として、4.5℃の温度上昇が起きた場合の評価