久米島で新属新種のヌマエビ類を発見
2011/06/02
沖縄島の西約100kmに位置する久米島(沖縄県久米島町)沿岸の水深35m程にある海底鍾乳洞で、新属新種のヌマエビ類が発見されました。このヌマエビ類は、2011年2月に実施されたWWFジャパンの「久米島応援プロジェクト」の海底洞窟生物調査で採集され、眼が退化傾向を示すなどの特徴を有しています。ヌマエビ類の多くは、通常は河川に生息していますが、海産のヌマエビ類は世界的にも例がなく、学術的にも貴重と考えられています。この発見については、2011年6月4日に琉球大学で開催される沖縄生物学会にて発表されます。
知られざる生命の世界「海底鍾乳洞」
九州南端から台湾にかけて連なる南西諸島は、固有種(その島々にしか生息していない生物)の宝庫であり、世界的にも貴重な日本の生物多様性のホットスポットとして知られています。
その島々の一つ、沖縄県の久米島で新種のヌマエビが発見されました。
これは、2011年2月3日~7日に琉球大学の藤田喜久博士らが行なった「久米島応援プロジェクト」での調査で見つかったものです。
発見場所となった久米島沿岸には、大小さまざまな海底洞窟があり、過去10年近くの間にも、こうした海底洞窟環境から、クメジマドウクツガザミ(Atoportunus dolichopus)やクラヤミヒラオウギガニ(Neoliomera cerasinus)といった甲殻類が発見されています。
こうした洞窟の多くは、水深35mを海底に存在するため、研究者による網羅的な生物相調査はこれまでなかなか行なわれてきませんでした。
しかし今回、「久米島応援プロジェクト」では、地元の漁業者やダイバーの方々のご協力を得て、調査を実施。新たな種が発見されることになりました。
世界的にも珍しい海産の「ヌマエビ」
今回、国内でも最大級の海底鍾乳洞である、久米島の海底洞窟「ヒデンチガマ」から採集された新種のヌマエビ類には、学術的にも高い価値が認められると考えられます。
世界に約450種以上が知られるヌマエビ類は、基本的に河川や湖沼などの淡水環境に生息する甲殻類です(中には、川の河口の汽水域(海水と淡水が混ざる水域)や、地下水にも生息するものもいます)。
しかし、今回の新種のヌマエビが見つかったのは、水深35mの海底の鍾乳洞で、完全な海産種です。これは、世界で初めての発見と考えられます。
甲長2.5 mmの小型種で、形態的特徴としては以下の点が挙げられます。
- 頭胸甲に眼窩上棘と前側角棘を有すること
- 額角は短く、周縁に歯を欠くこと
- 眼が退化傾向にあること
- すべての胸脚に発達した外肢を備えること など
この種は、眼窩上棘を有する点でヌマエビ亜科に属しますが、同亜科に含まれる6属のいずれにも該当しない特徴を有しており、未記載属未記載種(新属新種)であることが分かりました。
また、この発見は、コエビ類が海域から河川に、生息域を移行していった進化過程を考える上でも興味深く、学術的価値も高いものといえます。
藤田喜久さんらは今後、2011年6月4日に琉球大学で開催される沖縄生物学会にて、この発見について発表し、記載論文を執筆・投稿する予定です。
調査体制:
藤田喜久(NPO法人海の自然史研究所/琉球大学大学教育センター・非常勤講師)
上野大輔(琉球大学理学部/NPO法人海の自然史研究所(当時))
成瀬貫 (琉球大学熱帯生物圏研究センター)