【WWF声明】INC-4では一定の進展があったが、多くの国が望む法的拘束力ある世界共通ルールに合意できず。日本政府には共通ルールへの明確な支持を改めて求める。
2024/05/08
2024年末までのプラスチック汚染を根絶するための国際条約文書制定に向け、2024年4月23日から29日にかけてカナダ・オタワで開催された第4回政府間交渉委員会INC-4が閉幕した。
WWFの声明ポイントは以下の通り:
- INC-4ではプラスチック汚染根絶に向け優先すべき重要な管理措置についての議論に一定の進展が見られた。しかし今この瞬間もプラスチック汚染は拡大し続けており、各国が自主的に施策を決められる余地が大きく残るINC-4での交渉結果は、これを食い止めるには十分ではない
- 条約制定に向けた最後の交渉となる次回11月のINC-5までに、各国が公式の会期間作業を実施することに合意したことを歓迎する。各国政府には公式・非公式を問わず、あらゆる機会を使ってINC-5に向けて国際調整を推進することを期待する。
- 日本政府は共通ガイドラインの下で各国が自主的に選択できる管理措置の導入を主張しているが、問題あるプラスチックの禁止やプラスチック生産の削減を含め、条約を法的拘束力ある世界共通のルールに基づいたものにすることへの明確な支持を改めて求める。
INC-4では議長から示されたシナリオに沿って積極的に意見交換が行われ、リスクの高い製品・化学物質の禁止や段階的削減、拡大生産者責任、共通の製品設計要求、実行を担保するための財政パッケージなど主要な分野を含む条項のすり合わせに一定の進展が見られた。しかし、条約にプラスチックの生産や消費を削減することを含められるかどうかは依然として不透明である。
さらに、法的拘束力のある世界共通のルールに基づく野心的なものにするのか、それとも各国が自主的に施策を選択できる現状維持型のものにするのか、という条約の成否にかかわる最も重要な点についての決定は、次回11月の韓国・釜山でのINC-5に持ち越された。
プラスチックの大量生産・大量消費や問題のあるプラスチックの生産を続けることは、今地球が瀕している温暖化、生物多様性の損失、汚染という三重危機の全てを悪化させることになる。しかし、交渉のペースは全くこれらの危機の解決には全く追い付いておらず、更に加速させる必要がある。
WWFは、各国がINC-5までに公式の会期間作業を実施することに合意したことを歓迎する。これは、問題があり避けるべきプラスチック製品や化学物質のリスト、削減やリユース・リサイクルを可能とする製品設計、実行段階で必要となる財政パッケージなど、条約に盛り込むべき主要な事項についての検討を促進するための大きな機会となる。しかし、プラスチックの持続可能な水準での生産と消費につき、一次プラスチックポリマー(バージンプラスチック)の生産削減のような重要施策は検討対象から外れており、これらの導入を進めるためには別途の非公式な作業が欠かせない。
ついては、WWFは全ての国の政府に対しINC-5前にあらゆる努力をすることを呼びかける。INC-5に際し各国政府が野心的な条約を制定する準備ができているために、例えば公式の会期間作業に加え、専門的な事項を話し合うミーティングや大臣会合を開催すること、非公式な情報共有の機会を作ることなどが有効である。
加えて日本政府に対しては、地球の三重危機を克服するためにも、プラスチック汚染の解決に最もインパクトのある以下の3つの優先事項につき、各国が自主的に決められる措置ではなく法的拘束力のある世界共通のルールとして条約文書に落とし込んでいくことを改めて求める。
- 一次プラスチックポリマーの生産・消費の持続可能な水準への国際的削減
- 危険性があり現実的に根絶可能なプラスチックを特定した上での国際的禁止
- 削減・リユース・安全なリサイクルを可能とする製品設計・性能の国際的要求
WWFインターナショナルGlobal Plastics Policy Lead, Eirik Lindebjergのコメント:
カナダで各国政府は、条約で実際に何をするのかについての建設的な議論を通じて一定の前進をした。しかしながら、条約の基盤を大多数の国が求めている法的拘束力のある世界共通ルールとするのか、それとも、一部の後ろ向きの国の意見を取り入れて、各国が自主的に決められるものにするのかという、重要な決定はなされなかった。各国政府は、おのおのが自主的に導入できる断片的なアプローチでは地球の危機をさらに悪化させているプラスチック汚染を解決できないことを自覚しなければならない。そして、次回のINC-5でプラスチック汚染にライフサイクル全般で対処する野心的な条約とするための準備につき、あらゆる努力を惜しむべきではない。
WWFジャパン プラスチック政策マネージャー 三沢行弘のコメント:
INC-4では、公式な会期間作業の合意など一定の進展がみられたが、次回INC-5に向けて示される予定の条約ドラフトには、結局は野心の低い国も含め全ての国の意見が反映されることになり、INC-5で野心的な条約に合意できるかどうかは、未だ定かではない。既に大勢を占める野心的な条約を望む国は必ずしも先進国に限られず、アフリカ、島嶼国、アジア、南米などからも出てきている。日本政府には、INC-5までの公式・非公式の会合において優先度の高い事項を中心に有益な情報提供や調整に努めるとともに、法的拘束力のある世界共通のルールを基盤とした野心的な条約を明確に支持し、アジアを含め他国に積極的に働きかけていくことを期待したい。