プラスチック国際条約INC-3では条約内容の交渉が先送りに――各国に次回会合に向けて早急な準備作業開始を呼びかけるとともに、日本政府には義務的国際ルールを基盤とした野心的条約への支持を求める


2024年末までにプラスチック汚染を根絶するための国際条約文書を策定することに向け、2023年11月13日から19日深夜までケニア・ナイロビで、第3回政府間交渉委員会(INC-3)が開催された。議長から事前にゼロドラフト(素案)が示されていたが、各国の意見を全て取り入れた膨大な改正ドラフトが出来上がっただけで、条約内容について交渉開始に至らなかった。さらに、次回INC-4での主要分野の交渉進展に必須となる科学的・技術的な情報、財政上・実行上の情報を、事前に収集・共有するための会合間作業の設置にも合意できなかった。

WWFの声明ポイントは以下の通り:

  • INC-3では各国の意見を全て反映した膨大な改正ドラフトを完成させること終始し、条約の内容についての交渉が先送りとなったことは遺憾
  • 各国には、次回INC-4に向けて主要分野の科学的・技術的情報等を事前に収集・共有するための、非公式な「会合間作業」を早急に開始することを呼びかける
  • 日本政府はプラスチック汚染を終わらせる高野心連合に参加しており、義務的国際ルールを基盤とした実効性のある条約を明確に支持するよう求める

INC-3では、一部の産油国から「ゼロドラフトには私たちの意見が十分反映されていない」等の意見が上がったため、各国の意向を全て反映した膨大な改正ドラフトが作成されたが、条約内容についての交渉は先送りとなった。また、カナダ・オタワで2024年4月に開催される次回INC-4で、条約の内容について交渉を進めるために必要となる、主要分野について科学的・技術的情報や、財政上・実行上の情報を事前に収集・共有するための公式の「会合間作業」の実施について合意に至らなかった。
WWFは、INC-3の結果を受け、INC-4で主要分野について交渉を進展させるために、日本を含む各国が、非公式の「会合間作業」を速やかに立ち上げることを呼びかける。
なお、日本政府はプラスチック汚染を終わらせるための高野心連合(HAC)に参加しており、2023年11月3日には、バージンプラスチックの生産と消費の持続可能な水準への削減を含む対策を呼びかけた、HACの共同大臣声明にも署名している。
上記を鑑み、WWFは、日本政府には、問題あるプラスチックの禁止等において、野心的な世界共通ルールに基づく条約を明確に支持することを求める。
また大量生産の継続を前提としたままリサイクルを強化するだけでは汚染も温暖化も解決できないことを再認識し、高野心連合の大臣声明で既に署名しているバージンプラスチックの生産・消費の削減を明確に支持した上で、条約において原料採掘を含むライフサイクル全体での法的拘束力のある方策導入を推進することも要請する。

以上

WWFインターナショナル プラスチック政策責任者 Eirik Lindebjergのコメント:
「各国代表には、プラスチック汚染を根絶できる条約を制定することが求められている。交渉の遅れは、次の世代に汚染された環境を残すことを意味する。簡単なことではないが、何をしなければならないかは明白だ。各国は、プラスチック汚染による危機を解決するために必要な国際ルールを特定し合意するために速やかに行動しなければならない。多くの国が問題の緊急性を理解し、プラスチック汚染を根絶するための方向に進む準備ができている。大きな課題に直面しているが、これまで十分に手を打ってこなかった数十年間からの歴史的転換に向けて、条約において法的拘束力のある野心的な方策を導入する決意を示し続けることが必要だ。」

WWFジャパン プラスチック政策マネージャー 三沢行弘のコメント:
「INC-3で条約内容の交渉が先送りになり、次回INC-4までの会合間作業実施にも合意できなかったことは残念だが、まだ状況を打開することは可能だ。そのためには、公式な会合間作業に代わる非公式の情報収集・共有の取り組みを、有志国が呼びかけて早急に実施することが求められる。高野心連合で、バージンプラスチックの削減や問題のあるプラスチックの根絶等で義務的な条項に基づく国際条約を目指す共同声明に署名した日本には、次回INC-4において世界共通の義務的ルールを基盤とした野心的な条約を明確に支持すること、さらに各国に呼びかけINC-4に向けて非公式の準備作業を先導していくことを期待したい。」

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