地球温暖化対策とエネルギー政策に関する要望書


要望書 2011年10月18日

環境大臣 細野豪志殿

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン 会長 德川恒孝

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

日頃より当団体の環境保全活動にご理解ご協力をいただき、誠にありがとうございます。
さて、今年3月の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故によって、日本のエネルギー政策を根本から見直す必要が生じていることは、国民のほとんどが同意する所だと存じます。

以前より温暖化をはじめとする地球環境問題に取り組むWWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)では、今後の日本のエネルギーのあり方として、第一に、自然エネルギーで100%のエネルギーを賄うことをめざし、第二に、これまでにないような水準での省エネルギーを実施し、第三に、新規の原子力発電所は造らず、既存の原子力発電所は段階的に廃止していくという3つを基本方針とし、三位一体で進めていくことが重要であると考えております。2011年2月にWWFインターナショナルは「2050年100%再生可能エネルギー」レポートを発表し、現在WWFジャパンは日本版を作成中で、11月に発表する予定です。

また、この3つの方針を実現するために、日本のエネルギー基本計画を改善することについて、全国および海外から賛同署名を募っております。賛同者は、10月17日までの時点で、国内から4万1757人、海外から1392人となっており、現在も増え続けております。

このたび、細野豪志国会議員が環境大臣に就任されたことを機会に、WWFジャパンは、地球温暖化対策とエネルギー政策に関する別添資料の要望4点について、ぜひ細野環境大臣みずから国内政策と国際交渉の両面にわたってリーダーシップを取って推進していただくことを要望いたします。
なにとぞご高配のほど、よろしくお願い申し上げます。

敬具

地球温暖化対策とエネルギー政策に関する要望

1.温室効果ガスに関する「25%削減目標」を維持する事、そして目標を実現するための政策を導入すること

東日本大震災後、地球温暖化対策よりも先行してエネルギー政策の根本的な見直しは始まった。エネルギー政策の見直しそのものは国家戦略室や経済産業省を主導に行われているが、エネルギー政策は温暖化対策の要であるため、「温室効果ガス排出量を2020年までに90年比で25%削減する」という目標と整合した形で進めていく必要がある。環境省も、この観点から自然エネルギーや省エネルギーの野心的目標の提案などの形で、積極的に関わるべきである。

そして、この目標を達成していくために必要な政策として、排出量取引制度や「本格的な」炭素税の具体的な導入を速やかにはかっていくべきである。特に、排出量取引制度については、昨年末の閣僚委員会にて無期限の検討課題として棚上げにされてしまった。これを再び、真剣に検討し、法律を成立させ導入していくべきである。

2.地球温暖化対策基本法案をCOP17前に成立させること

昨年3月から議論されている地球温暖化対策基本法案が、店ざらしにされている。同法案は、上記の温室効果ガス排出量削減の中期目標に加え、長期での削減目標(2050年までに90年比80%削減)、「基本計画」の策定、自然エネルギーの中期目標(2020年に一次エネルギーの10%)なども含んでいる。原子力推進部分を取り消すなど、変更が必要な箇所もあるが、同法案を11月下旬から始まる国連気候変動会議(COP17・COP/MOP7)前に成立させることは、日本が引き続き気候変動問題解決にきちんと貢献していくことを国際社会に対して示す上で、何よりも明確な証となる。

3.COP17・COP/MOP7に出席すること、そして世界の温暖化対策をまとめるための交渉を建設的にリードすること

日本は、国連気候変動会議交渉においては、「京都議定書の延長には反対」を強く主張する交渉を行なってきた。その背景としては、次期国際枠組みは、すべての主要国が参加する公平な枠組みでなければならないという主張がある。しかし、その「すべての主要国が参加」できるような枠組み確立へ向けて、建設的な交渉を展開してきたかといえば、大きな疑問符がつく。むしろ、「京都議定書延長に反対」との立場に固執するあまり、交渉全体の雰囲気を損なってきた経緯がある。

今回の会議では、建設的かつ柔軟な交渉姿勢で、世界的な合意へ一歩でも近づけるように、交渉をリードしていく必要がある。そのためにも、大臣自らがイニシアティブをとって交渉に臨むことが必要である。

4.原子力発電所の段階的廃止を前提とした原子力安全行政を進めること

環境省の外局として原子力安全庁が設置されることになった。これからの原子力行政は、これまではできなかった厳しい安全性確認を行うべきである。

同時に、原子力発電所を段階的に廃止していく方向性を前提とした中で、安全確保に不可欠な技術や人材などの継続的な確保を検討していくことが必要である。新規建設は行なわないことに加え、既存の原子力発電所を全廃してくための原則とスケジュールを前提とした政策を進めていくことが必要である。

以上

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