選挙公約・マニフェストに向けた各党への提案
2012/09/05
先行き未だ不透明な日本の政局。しかし、総選挙が行なわれる可能性は高くなりつつあります。来たるべき次回の総選挙でも、各党は選挙公約・マニフェスト等を作成すると考えられます。そこで、WWFジャパンは、地球温暖化、生物多様性、海洋、野生 生物の国際取引という4つの分野について、各党が選挙公約・マニフェストに入れるべき事項の提案書を、2012年9月3日、各党に送りました。
東日本大震災後、初の総選挙に向けて
まだ確定ではないものの、「近いうち」に総選挙が行なわれる可能性が高くなりつつあります。もし実施されれば、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故以降、初の総選挙となり、日本にとって極めて重要な選挙になることが予想されます。
そして、おそらく今回の選挙においても、各党は選挙公約・マニフェスト(もしくはそれに類するもの)を準備すると考えられます。
国民に対して示される、この「約束」の中で、こと環境という分野の課題について、各党が何を考え、どのような解決をめざしてゆくのか。公約はそれをうかがい知る、重要な手立ての一つとなります。
また、どこかの党が政権を取ったあかつきには、公約の内容はそのまま「政策」として、重要な意味を持つことになります。
WWFジャパンは2012年9月3日、この選挙公約の策定に当たり、地球温暖化(気候変動・エネルギー)、生物多様性、海洋、野生生物の国際取引という4つの分野について、その中に含まれるべき点を列挙した提案書を各党に対して送りました。
WWFジャパンは、選挙が行なわれた場合、各党が、これらの諸点についてどのような政策を打ち出してくるのかに注目していきます。
気候変動・エネルギー、生物多様性、海洋、野生生物の国際取引分野に関する提言
選挙公約・マニフェストに向けて
各政党マニフェスト等作成ご担当者様
2012年9月3日 WWFジャパン
拝啓
私どもWWFは、約100カ国で活動をしている環境保全団体です。WWFジャパンは、そのネットワークの一員として、地球の自然環境の悪化を食い止め、人類が自然と調和して生きられる未来を築く使命を掲げて活動を展開しております。
この度、未だ見通しは不透明であるものの、「近いうち」に選挙が行われる可能性が高くなりました。東日本大震災・東京電力福島第一原発事故以降、初の総選挙であり、日本にとって極めて重要な選挙となると予想されます。
各党におかれましては、今回の選挙においても、選挙公約・マニフェスト(もしくはそれに類するもの)を準備されることと存じます。その選挙公約の策定に当たり、気候変動・エネルギー、生物多様性、海洋、野生生物の国際取引という4つの分野につきまして、次ページ以降に記載の諸点を含めることをご考慮頂きたく、本提言を送付申し上げる次第です。
ご高覧賜り、今後の選挙公約・マニフェスト作成の議論の参考として頂けましたら幸いです。
敬具
気候変動・エネルギー
1. 野心的な気候変動対策目標と政策を含む基本法の制定
- 政府による既存の2020年目標(温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する)を極力維持し、少なくとも、2020年までに1990年比15%を国内削減によって達成する
- 2050年までに温室効果ガス排出量を1990年比80%削減するという長期目標を設定する
- これらを達成する手段として、キャップ&トレード型の排出量取引制度を導入する
- 既存の地球温暖化対策税を、最終的には炭素税に切り替えることを目途として、段階的に強化していく。
- 上記の目標・政策を含む基本法を2013年度中に制定する。
- 基本法制定後、2050年までの基本計画策定に速やかに着手する。
2. 自然エネルギーの普及目標
- エネルギー安全保障と温暖化防止のために自然エネルギーの急速な大量導入することを国の指針とし、長期的には全てのエネルギー需要を自然エネルギーで供給することを目指す
- 2050年までに、少なくとも電力については100%自然エネルギーを達成する
- 2015年、2020年、2030年といった節目ごとの導入目標を明確にし、固定価格買取制度では、実際の普及ペースを導入目標に照らし合わせながら、調達価格の調整を行う
- 自然エネルギーの大量導入を可能とするような電力システムの改革(系統の広域運用、系統強化・優先給電・優先接続・実効的な自由化を含む)を実施する
3. かつてない水準での省エネルギー目標
- 最終エネルギー消費について、2030年までに2010年比30%の削減を目標とする。
4. 原発の着実な廃止方針
- 原発を将来にわたって着実に廃止していく方針を掲げ、その具体的な工程表を定める。
- 新規の原発は建設しない。
- 地震・津波等のリスクに特に脆弱である原発については、ここ1〜2年の間に運転停止をし、廃炉工程を開始する。
- それ以外の原発については、運転開始後30年を最長として、なるべく早期に運転停止・廃炉にする。
生物多様性
1. 愛知目標を達成する為の法改正
- 愛知目標を合意した議長国として、目標を達成する為には、生物多様性の根幹である種の保存が不可欠であり、種の保存法を抜本的に改正すること。
- 愛知目標を合意した議長国として、目標を達成する為に、十分な保護区の確保が必要であり、自然公園法や自然環境保全法など保護区を担保する法律の改正に着手すること。
<参考>
- 愛知目標11:陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に生物多様性と生態系サービスに重要な地域を保護区にする為に、自然公園法、自然環境保全法、鳥獣保護法など保護区制度を有する法制度の改正を行う。
- 愛知目標12:(既知の絶滅危惧種の絶滅及び減少が防止され、また、特に減少している種に対する保全状況の維持や改善が達成される)を確実に実行するために種の保存法の抜本的な改正を行う。
海洋
1. 自然環境に配慮した震災復興
- 被災地の産業が海洋沿岸生態系サービスへの依存度が高いことを鑑み、防災施設の再建やがれき処理等の復興作業にあたっては自然環境や生態系への影響を可 能な限り低減する。
- 震災前への現状復帰だけを目標とせず、既知の沿岸の環境問題についても解決を図り、自然環境や生物多様性のさらなる向上を目指す。
2. 海洋空間計画の策定
- 海洋保護区の設置、洋上発電の調整、持続的な漁業の推進などを通じた生物多様性の保全を推進する統合的海洋管理の一手法として、海洋空間計画(Marine Spatial Planning)を策定する。
野生生物の国際取引
1. 野生生物取引が世界の生物多様性に与えている影響を削減するための法改正
- 現状の種の保存法では、ワシントン条約、生物多様性条約をはじめとする国際条約に照らしても、世界基準で取引の規制を果たせる法体制とはなっていない。世界有数の生物資源消費国として、日本の取引が世界の生物多様性に与えている負荷を確実に軽減するために、種の保存法の抜本的な改正を行う。
2. 違法な野生生物取引を撲滅するための法改正
- 国内外の希少種、特に絶滅のおそれのある種に対して、希少であればあるほど、密猟や密輸があとをたたない。日本がこうした取引に加担することがないよう、罰則を強化するなど、種の保存法の抜本的な改正を行う。
3. 野生生物資源の持続可能な利用を促進する仕組みづくり
- 木材や薬用植物、水産資源など、日本はさまざまな生物資源の輸入大国である。こうした資源を搾取、過剰利用するのではなく、持続可能な形で将来世代にわたって使っていけるよう、緊急的に仕組みづくりを推進する。