「ロンドン宣言」発表!世界の密猟に緊急措置を
2014/02/20
2014年2月13日、イギリスのロンドンで開催されていた「野生生物の違法取引に関するロンドン会議」において、参加各国は世界的な野生生物の密猟に対し、断固とした緊急措置を誓う「ロンドン宣言」を発表しました。過去に前例のない、この強い行動の呼びかけについて、同日、WWFとトラフィックは共同声明を出し、その内容を歓迎するとともに、国際社会の協調と措置の実現を強く求めました。
「野生生物の違法取引に関するロンドン会議」
2014年2月12日と13日、イギリスのロンドンで、違法な野生生物の取引を撲滅し、世界で最も象徴的な野生生物種を保護するための対策を話し合う「野生生物の違法取引に関するロンドン会議(London Conference)」が開催されました。
この会議は、デービッド・キャメロン首相、ウィリアム・ヘイグ外相、オーウェン・パターソン環境・食料・農村地域相、またWWFイギリスの総裁であるチャールズ皇太子が主催し、各国への呼びかけによって実現したものです。
会議には、日本を含めた46カ国の首脳や閣僚、政府高官らのほか、ウィリアム王子、ヘンリー王子も出席。
さらに、ワシントン条約(CITES)や、国際刑事警察機構(ICPO)、世界税関機構(WCO)、いくつかの国連機関、アフリカ開発銀行(AfDB)、地球環境ファシリティ(GEF)、世界銀行など、犯罪対策において重要な役割を担う国際機関も参加しました。
そして2月13日、会場のランカスターハウスで、参加各国の代表は、「ロンドン宣言(London Declaration)」に署名。世界的な違法野生生物取引に対処するための断固とした緊急措置をとることを誓いました。
この宣言によって各国が合意した緊急措置には、違法に取引された野生生物に由来する製品の市場を、世界から根絶させるための、次のような内容が含まれています。
- 法律の執行の強化
- 効果的な法制度と抑止力の確保
- 地域社会の有益な関与を通じた持続可能な生活の促進
2日間におよぶ非公開の交渉の後、発表されたこのロンドン宣言に記された文言は、違法な野生生物取引による経済、社会、環境への大規模で有害な影響を意識した強力なものとなりました。
またその中では、法体制と国の管理体制を弱体化させ、政治的腐敗を助長している、国際的な組織犯罪のネットワークが関与する密猟や違法取引が、近年ますます増大していることにも言及しています。
国際社会の関心事としての野生生物をめぐる犯罪
今回「ロンドン宣言」に合意した46の国には、実際に起きている野生生物の密猟や、違法取引によって大きな影響を被る国々も含まれています。
たとえば、ゾウの個体群が深刻な密猟の脅威にさらされているコンゴ民主共和国やガボン、ケニア、タンザニア。さらに、アフリカからアジアに密輸される象牙の主要な中継国であるトーゴ、フィリピン、マレーシアなど。違法な象牙の一大市場を持つ中国も含まれています。
さらに、サイの密猟と、角の違法取引の中心となっている、南アフリカ共和国、モザンビーク、ベトナムのほか、トラの爪や歯、骨、皮などの違法取引に深く関係している、インドネシア、ミャンマー、ロシア、中国も参加しました。
ロンドン宣言に合意したことにより、これらの国々は、違法取引などの野生生物犯罪を撲滅するための役割を引き受け、果たすことが求められます。
また今後、各国や国際機関による協力と支援についても、さらなる拡充が目指されることになるでしょう。
WWFイギリスの野生生物保全を担当するヘザー・ソールは、「ロンドン宣言」の合意を歓迎しつつ、次のようにコメントしています。
「ロンドン宣言に署名した各国政府は、野生生物犯罪は、重大な犯罪であり、食い止められなければならないという強力なメッセージを送りました。
違法取引は、野生生物を減少させるだけでなく、レンジャーの命を奪い、汚職を蔓延させて国の経済発展を妨げ、社会を不安定にします。
これは、一つの国や地域での話ではなく、国際社会の関心が求められる緊急かつ危機的事態でといえるでしょう。これに対抗するには、国際的な政府レベルでの支援が必要です。
今こそ、各国は「ロンドン宣言」のもと、野生生物犯罪と闘うため現実的な施策を講じ、資源を投じるべき時です」
また、野生生物の違法取引を監視する国際機関トラフィックのスティーブン・ブロード代表も、全会一致で決まったこのロンドン宣言による行動の呼びかけが「前例のないもの」として評価。
さらに、
「私たちの現在の課題は、こうした野生生物犯罪への圧力を維持するとともに、宣言の力強い誓約を実行するべく、協調した行動がとられるように導くことだ」とコメントしています。
国際社会の場で、野生生物犯罪が大きな議題とされたこと。そして、その緊急の対応措置が合意されたことは、今後の密猟や違法取引を取り締まり、無くしてゆくための取り組みにとって、大きな勢いとなるものです。
「ロンドン宣言」をふまえ、WWFとトラフィックは引き続き各国に対し国際社会での協調と措置の実現を強く求めてゆきます。