迫る参院選 各党の気候変動・エネルギー政策は?
2016/07/07
2016年7月10日の参議院議員選挙は、地球温暖化の防止に向け世界が合意した「パリ協定」の採択後、日本で初の国政選挙となります。パリ協定が示した「脱炭素化」の方向に向けて、各政党が選挙公約/マニフェストの中で、どのような方針を掲げているのか、WWFの視点から、気候変動・エネルギー分野について「10の項目」を比較しました。
WWFジャパンの10のチェック項目
2016年7月10日に行なわれる参議院選挙を前に、WWFジャパンは、気候変動・エネルギー問題の観点から重要な10の項目について、各政党が発表している選挙公約・マニフェスト・もしくはそれに類するものを確認し、比較しました。
この比較表に記された記号の意味は以下の通りです。
【〇】気候変動を抑制し、持続可能な社会づくりを目指す方向に合致している
【△】前向きな方向は示されているが充分ではない
【×】後ろ向きである、もしくは言及がない
総じて、今回の選挙での選挙公約等で、気候変動/地球温暖化対策を前面に押し出している政党はあまりなく、パリ協定採択という歴史的な転換点を経た直後の国政選挙としては、極めて残念な内容であることが分かりました。
- ※政党名の略称について:自民=自由民主党、民進=民進党、公明=公明党、共産=日本共産党、お維新=おおさか維新の会、社民=社会民主党、生活=生活の党と山本太郎となかまたち、大切=日本のこころを大切にする党、元気=日本を元気にする会、改革=新党改革
10のチェック項目の詳細
1.より野心的な2030年目標への変更を掲げているか?
日本がパリ協定の下で現在掲げている2030年に向けた排出削減目標は、パリ協定の「世界の平均気温上昇を2度より充分に低く保ち、1.5度にする努力を追求する」という目的に対しては不十分であるということがすでに分かっています。各政党が、その改善を掲げているかを確認しました。
2.増加し続ける石炭火力発電所への規制を掲げているか?
現在、日本での石炭火力発電所からの排出量の増加が大きな問題となっています。現在、計画されているものが全て稼働してしまえば、大量のCO2排出がされる社会構造が今後40年間などの長期にわたって固定化されてしまいます。この傾向に歯止めをかける方針・政策を打ち出しているかどうかを確認しました。
3.排出量取引制度もしくは炭素税などの炭素価格つける政策を掲げているか?
日本にはまだ温室効果ガス排出量を着実に削減していく政策がありません。効果を確かめられている代表的な手法として、排出量取引制度や炭素税があります。こうした政策を支持しているかどうかを確認しました。
4.気候変動(地球温暖化)対策に関する基本法の制定を掲げているか?
2016年5月に「地球温暖化対策推進法」という法律が改正されましたが、本来、気候変動問題の解決に必要な範囲が多岐に渡ることを考えると、気候変動対策「基本法」を制定し、より包括的な法制度を整えていく必要があります。この点を掲げているかどうかを確認しました。
5.再生可能エネルギー目標を引き上げることを提案しているか?
現在、政府が掲げている再生可能エネルギー電力に関する目標は、日本にあるポテンシャルに比して小さなものです。今後、再生可能エネルギーの拡大を、現状の政府目標以上に掲げているかを確認しました。
6.原発の段階的廃止を提案しているか?
東日本大震災・東京電力福島第1原発事故から5年がたっても、事態は収束に向かっていないこと、核廃棄物の処理に目処が立っていないことなどを考えると、原子力というエネルギーからは脱却していく必要があります。少なくとも、原発の段階的廃止を掲げているかどうかを確認しました。
7.省エネルギー目標の強化を掲げているか?
日本にも、まだまだ省エネルギーの余地があり、今後は、さらに省エネ対策を強化していかなければなりません。現状、政府が掲げている省エネルギー対策よりも、さらに高い水準を目指しているかを確認しました。
8.2050年に向けた長期計画・戦略の策定を提案しているか?
パリ協定では、2030年や2035年といった中期での目標だけでなく、2050年やそれ以降などの長期を見据えた戦略・計画の策定が求められています。この長期計画・戦略の策定をきちんと明言しているかどうかを確認しました。
9.石炭火力発電への海外支援の中止を宣言しているか?
現在、世界では石炭を始めとする化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)の動きがあり、世界銀行などの公的機関や、アメリカ政府・フランス政府なども海外の公的な石炭支援を原則とりやめる方針を打ち出しています。日本は石炭に関する最大の支援国であり、この方針を転換することを打ち出しているかを確認しました。
10.適応計画の地域での実施を重視しているか
気候変動の影響に着実に対応していくため、適応対策の整備が必要です。気候変動の影響は、地域差が大きいため、地域ごとの対策が鍵となります。2015年に閣議決定された政府での適応計画を受け、地域での適応計画の整備・実施を掲げているかを確認しました。
より詳細については、こちらをご覧ください。