南アフリカのサイの密猟、前年を下回るも依然1000頭越え


過去10年あまりにわたり、サイの大規模な密猟が続いてきた南アフリカ共和国。高値で違法に取引される角を狙われ、2013年以降は毎年1,000頭を超えるサイが、国境を越えて入り込む密猟者の犠牲になってきました。2017年2月、南アフリカ共和国政府は、2016年の一年間に1,054頭のサイが殺されたことを発表。2015年の1,175頭を下回る結果にはなりましたが、いまだに密猟が続いている現状があらためて明らかになりました。

南アフリカを襲う密猟の嵐

南アフリカ共和国をはじめとするアフリカ南部には、シロサイとクロサイの2種のサイが生息しています。

1970年代以降、大規模な密猟により、東アフリカでは10万頭いたクロサイが2,400頭まで激減。

中部アフリカに生息していたシロサイの亜種のキタシロサイも、内戦の影響下で保護活動が十分にできない状況の中で、野生の個体が絶滅してしまいました。

そうした中でほぼ唯一、サイが安定して守られてきたのが、南アフリカ共和国です。

しかし、2008年以降、同国内でも密猟が急増。2013年以降は毎年、1,000頭を越えるサイがその犠牲になってきました。

南アフリカ共和国政府は密猟の防除とサイの保護施策を展開、WWFなどの保護団体もその支援に尽力してきましたが、密猟の勢いは多年にわたって続き、2014年までその数は増加の一途をたどってきました。

2年連続の減少、しかし・・・

懸命の保護の取り組みにより、サイの密猟は2014年の1,215頭をピークに、2015年には1,175頭、2016年には1,054頭へと減少に転じています。

アフリカ最大の野生生物保護区の1つでありホワイトライオン(体色の白いライオンの個体群)が生息することでも知られるクルーガー国立公園は、ここ数年、サイの密猟が激化した場所の一つでしたが、ここでも保護のための多大な努力が傾けられ、殺されるサイの数を約20%減少させることに成功しました。

しかし、犠牲をゼロにするにはまだほど遠く、何より2010年時点で、総個体数が約2万頭とされたシロサイ、同じく4,800頭あまりとされていたクロサイにとって、年間1,000頭が密猟され続ける状況は、深刻な危機と言わねばなりません。

画像をクリックすると拡大します。

ツノを切り取られたメスのシロサイ(手前)。

また、場所によっては密猟数が2015年を上回っている地域もあり、問題が根本的に解決したとは言い難いのが現状です。

WWF南アフリカのサイ保護プロジェクトを統括するジョー・シャウ博士は、次のようにコメントしています。

「南アフリカでの密猟が急増してから、10年が過ぎました。
サイを守るために、多くの力と多額の資金が費やされる中で、保護に取り組む人々にも大きな負担が強いられてきました。

軍隊も密猟防止にかかわっており、これは短期的には密猟に対する勝利をもたらすかもしれません。

しかし、保護活動が継続し、保護区やその周辺に住む貧しい人々にも、それに参加してもらえるようにするためには、長期的な財政的、社会的な負担がかかります。

野生生物犯罪を根本的に解決するには、より包括的なアプローチが必要なのです」

求められる国際的な協調

サイの密猟における根本的かつ最大の問題は、高値で取引される角の取引です。

このサイ角は、科学的な裏付けがないにもかかわらず、ベトナムでガンの特効薬などの謳い文句で売買され、それが世界中のサイの密猟を呼ぶ原因になってきました。

こうしたサイ角の需要は、ベトナムを中心に、アジア諸国では今もまだ根強く残っています。

WWFインターナショナルで野生生物保護活動を統括する、マーガレット・キナード博士は次のように言います。

ベトナムのブラックマーケットで取引される犀角。

「違法なサイ角の取引を取り締まらない限り、私たちは密猟との戦いに勝つことはできません。

ベトナムなどの消費者国では、国レベルで行なわれている取引の取り締まりに加え、人身売買などの他の深刻な犯罪への対応と同様に、サイ角の売買についても、厳しい法の執行と訴追を行なうがあります」

また、こうした問題の背景にある、あらゆるレベルでの社会的、政治的な汚職も問題です。

WWFとトラフィックでは現地の保護活動への支援を継続するとともに、サイ角の取引についての調査、取締のための提言に、これからも取り組んでゆきます。

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