6月8日世界海洋デー 生物多様性条約締約国会議に向けさらなる公海の保全を


2010年6月8日の世界海洋デーに、WWFは地球上の「公海」が、不十分な管理の下で開発されることによって、数十億人の人口の食糧問題と、生計を支える基盤が脅かされる、と警告を発しました。今までのところ、世界の各国政府は、公海での過剰な漁業の規制に失敗し続けています。

求められる公海での適切な漁業管理

海洋面積の2/3以上を占める公海。この公海は、高い生物の多様性が多くの海域で保たれているにもかかわらず、各国の国内法の管轄外になるため、各地で深刻な状態に陥っています。
公海の65%で漁業資源が過剰に利用され、また、貴重でこわれやすい深海サンゴや海山(かいざん:深海底から1000m以上盛り上がっている海面下の山)は、トロールなどの無差別的な漁法により、壊滅的な被害を受けています。

科学的知見に基づいて、規制を遵守させながら漁業を管理する、国際間での試みも、公海ではほぼ失敗に終わっています。そのような状況のもとで、違法漁業が罰せられることなく恒常的に行われており、その利益は全体で年間12億米ドルにおよぶと推定されています。

政府が漁業に対して公布している一部の補助金も、この状況を悪化させており、大規模漁船団の横行を許している上、資源量の少ない魚種をも漁獲対象としています。国際的に見れば、このような大規模な漁船団の漁獲能力は、許容範囲の1.5~1.6倍に相当するといわれています。

海洋資源を適切に管理することは地球上の数十億もの人々の将来を支える源となります。2010年5月にニューヨークで発表された国連の『グリーン経済報告書』によると、世界中には、漁業者が3500万人、また漁船が2000万隻存在すると推計されています。約1億7000万人が水産業に直接または間接的に従事していて、水産業に経済的に関わる人々は5億2000万人にのぼると推定されています。

活発化する公海保全の動き

陸上はその約14%が保護区に指定されていますが、海洋保護区(Marine Protected Areas; MPAs )は海の面積の1%にも満たなく、公海上ではほぼ皆無です。

WWFインターナショナル公海政策顧問のアリステア・グラハムは語ります。
「公海はもっと注目されるべきです。各国はこの世界共有の財産の管理者としてもっと真剣に責任を負うべきです。海洋保護区は自然資源の管理手法であるだけではなく、そこに暮らす人々、文化、経済に恩恵をもたらす持続可能な発展に必須の手法でもあるのです。」

公海保全の動きが最近になって活発化していることは、無法地帯となっている海洋にとって一つの希望といえます。

2009年11月、南氷洋に約94000平方kmの海域が南極海洋生物資源保存条約の委員会によってサウスオークニー海洋保護区として登録され、海域での漁業操業が禁止されました。オスパール条約(北東大西洋の海洋環境保護のための条約)の次回会合では、公海に5つの海洋保護区が新設され、大西洋中央海嶺のチャーリーギブス断裂帯の300,000平方キロメートルを含む海域が保全されることになります。

大西洋中央海嶺は北極から南氷洋にかけてS字型に走る海嶺で、アイスランドとアゾレス諸島の間の公海をまたいでいます。高さ3500メートルあまりの急傾斜の嶺が大西洋を東西に分けています。ここには深海サンゴ群集や鯨類、カメ類が生息しています。その嶺を横切るように存在するチャーリーギブス断裂帯は深さ4,500メートルまで落ち込んでおり、深海生物種が急斜面沿いに回遊する唯一のルートとなっています。

日本にも求められる公海の保全

海洋が緊急な保全措置を要していることは世界の指導者たちにも認識されています。

2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)において、2012年までに生態学的に代表性をもった海洋保護区ネットワークを創設することが合意されました。

また、生物多様性条約締約国会議でも、第7回会議において同様の決議がなされ、第8回会議において2012年までに少なくとも海洋の10%が実効的に保全されるべきとの指針が出されています。

2010年10月に日本で開かれる第10回会議では、公海の保全のために生態学的に重要な海域を選び出し、保護することに合意することも求められています。

日本の法的な海洋保護区は、水深10mより浅い海では3.7%、排他的経済水域に対しては0.01%しかありません。排他的経済水域の保全を推進していくとともに、公海の保全管理にも積極的に貢献することが日本に求められています。

関連情報

WWFインターナショナルのサイト(英語)
High time for the high seas up protection now urges WWF

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