地球温暖化の脅威を増大させるリアウ州の森林伐採
2010/10/14
インドネシアのスマトラ島における熱帯林の伐採が、地球温暖化を促進させる、二酸化炭素の大量排出の原因になっています。WWFでは、報告書「Riau deforestation, carbon and species loss」にその調査結果をまとめ、世界の森林伐採と地球温暖化の関係性と問題を改めて指摘。このほど、その日本語版を公開しました。
森の消滅が温暖化を招く
スマトラ島中部のリアウ州は、低地熱帯雨林が今も残る、島内で最も貴重な地域の一つです。しかし、ここでは過去25年間に、州全体の6割以上に相当する、420万ヘクタールもの熱帯雨林と泥炭林が失われてきました。
その原因は、木材や、紙の原料となるパルプ・チップの生産を目的とした樹木の伐採や、ヤシ油(パームオイル)を採取するためのアブラヤシの植林です。
特に、アジアの大手製紙会社、APP社とAPRIL社による森林伐採が、広範囲で、しかも多くが違法な形で行なわれてきたことが、破壊の大きな要因となってきました。
このリアウ州の森林破壊について、WWFとRemote Sensing Solution GmbH、および北海道大学が共同で調査を行なったところ、州内の森が蓄えてきた大量の炭素が、森林破壊によって大気中に放出されていることが分かりました。
この結果をまとめた2008年の報告書「Riau deforestation, carbon and species loss」によると、その二酸化炭素(CO2)の量は1990年から2007年までの年平均で、およそ2.2億トン。オランダ1国分の排出量(1995年時点)の122%に相当します。
スマトラ島の一行政単位であるリアウ州から、一つの国の排出量に相当する二酸化炭素が排出されていることは、森林破壊がいかに、世界の温暖化を促進する大きな問題であるかを物語るものといえるでしょう。
希少な野生生物も危機に
リアウ州はまた、アジアゾウの亜種でスマトラ島にだけ生息するスマトラゾウや、同じくこの島の固有亜種であるスマトラトラなど、世界的に絶滅が心配される野生生物の生息地でもあります。
過去25年間に、スマトラトラは個体数が70%減少、スマトラゾウは84%も減少したと見られ、現在、州内に生き残っている個体数は両種ともに200頭前後と見られています。
森林の破壊がこれらの野生生物から生息場所を奪い、人と動物の衝突事故が多発するようになったことで、殺される動物が増えたこと、また、伐採によって森が分断され、密猟者が生息地の奥深くまで侵入するようになったことが、その原因です。
2008年12月にバリ島で開催された、温暖化防止のための国連会議で、インドネシアの林業大臣は、無計画な森林資源の利用をやめ、森を保全することを約束しました。また、リアウ州知事も、州内に残された森を保護することを公約しています。
WWFは、これらの行政責任者による約束が確実に実行されれば、貴重な熱帯林の保全と、そこに生きる希少な野生生物の保護、そして地球温暖化の防止が進むものと期待し、その実現を、政府や企業に対して働きかけています。
報告書 :Riau deforestation, carbon and species loss
>>> この記事の関連情報はこちら :WWFインターナショナルのサイト(英文)