インターネット上の活発な象牙取引規制に大きな抜け穴~抜け穴を許さない包括的な措置が急務~
2017/08/08
記者発表資料 2017年8月8日
1. 活発なネット上の象牙取引:大手ネットオークションだけでも4週間で4,520万円の取引高
2. 規制のない個人間取引:大手フリマサイト(C to Cマーケット)では、海外から違法に持ち込んだ象牙製品が無規制で販売。これを含め、ネット上の取引の大部分が、合法性が担保されない状況にあると判明
3. 政府は個人を含むすべての取引を網羅する規制を導入し、eコマース企業は、これを待たずに象牙製品の取引停止の検討を
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:德川恒孝 以下、WWFジャパン)内で、野生生物取引部門を担当するトラフィックは、2017年5月~6月、インターネット上の象牙取引に関する調査を実施し、このほど結果を報告書『日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート』にまとめました。これは、2014年に続く調査となります。
この報告書は、ネット上の取引を、(1)サイバーモール(楽天市場、ヤフーショッピングなどの電子商店街)、(2)オークション(ヤフオク!:以下ヤフオク)、(3)C to Cマーケット(メルカリ、ラクマ)のカテゴリーに分けて、取引の実態調査を行い、2014年と比べた法遵守の程度、および多様な取引形態における国内法の規制の有無を分析したものです。
それによると、ヤフオクだけでも、取引高は4週間で4,520万円にのぼることが推定されました。国内の象牙製品の生産高は1989年比で10分の1と縮小を続ける一方、ネット上の取引は活発で多様化していることが明らかとなりました。
(1)は新たに製造された印章が主な取り扱い品目(70%前後)であるのに対し、(2)は調度品(彫刻や根付けなど)と装身具(ネックレス、イヤリング、ブローチなど)で過半(63%)を占めました。(3)は装身具が70%程度となっています。これは、中古の象牙製品が、(2)と(3)のプラットフォームを利用して、個人や事業者により活発に売買されていることを示唆します。さらに、事業者を名乗らない出品者にも、ネット取引をビジネスに利用していると思われる者が多く含まれていました。
(1)と(2)では、2014年と比較して、出店店舗・出品者の法遵守状況が大幅に改善しました。これは、eコマース企業による監視活動の成果といえます。しかし、問題は、すべての象牙製品の合法性(違法に持ち込まれたものでないこと)を担保する法規制がないことです。個人の売買においては、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)が求める事業者への届出制度(2017年6月の改正によって、改正法の施行後は登録制度となる)等の規制的措置はおよびません。また、全形象牙を除く象牙製品は、一切の合法性の証明の必要なしに取引が可能となっています。
1989年に、ワシントン条約で象牙の国際取引が原則禁止されました。にもかかわらず、メルカリでは、近年、輸入の実績のない海外諸国(タイ、コンゴ)から日本に持ち帰ったと明記されたアクセサリーの広告が数件確認されました。これらは、ワシントン条約に違反したものですが、種の保存法では取引を規制することはできず、抜け穴が放置されています。オンライン取引の現状に、法整備が追いついていません。
ワシントン条約COP17(2016年)で、密猟または違法取引の一因となっている国内市場に関しては、閉鎖を求めるという厳しい勧告がなされました。日本は、ワシントン条約の締約国として、自国の市場が密猟や違法取引に寄与しないことを確実にする責任があることから、日本政府は、早急に、個人による取引を含むすべての象牙取引に適用される厳格な規制を実現する必要があります。ただし、eコマース企業については、これを待たずに象牙製品の取り扱い停止を検討するのが望ましいと言えます。トラフィックでは、今回調査したインターネットでの象牙取引に続き、日本の国内市場の残る問題を明らかにするため、実店舗を対象にした包括的調査も実施しています。
報告書
問い合わせ先
トラフィック 北出智美 Tel: 03-3769-1716 E-mail:TEASjapan@traffic.org
WWFジャパン C&M室 担当:大倉・新井 TEL:03-3769-1714 E-mail:press@wwf.or.jp