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大阪・住吉大社で田んぼをめぐるツアーとセミナーを開催

この記事のポイント
生物多様性ってなんだろう。大阪・住吉大社の境内の中にある、田んぼ(御田)にすむ生きものたちをご紹介しながら、御田の歴史や地域の方々との関わり、身近な暮らしとのつながりなど、生物多様性をより身近に感じてもらうイベントを実施。オンライン含めて約150名が参加しました。
目次

田んぼをめぐるおはなし。身近な生きものたちのつながりから、生物多様性について考えるきっかけづくりに。

身近なところから生物多様性を感じることのできる、御田ツアーと生物多様性のセミナーを開催いたしましたのでご報告いたします。

大阪市住吉区にある住吉大社
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大阪市住吉区にある住吉大社

場所は、大阪市住吉区にある住吉大社。すみよっさんと呼ばれ地元の方に慕われる神社の境内にある田んぼ(御田)は約2000平方メートルの広さがあります。そこでは、毎年6月に、田んぼの神さまを祭る、古い様式を脈々と守り伝えた御田植神事が開催されます。今回は特別に、その御田で現地解説ツアーが開催されました。

学芸員の長谷川氏による生きものや植物の解説
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学芸員の長谷川氏による生きものや植物の解説

御田には神事のために組まれた櫓が中央に配置され、青々とした苗がきれいに植えられていました。晴れやかな水田をめぐりながら、大阪市自然史博物館の学芸員、長谷川匡弘氏による、ここでしか体験できない貴重な解説に、参加者のみなさんが食い入るように聞いていました。

御田の生きものを真剣に見入る子どもたち
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御田の生きものを真剣に見入る子どもたち

御田に息づく希少な植物や生きもののお話。実際に御田の水を汲み上げてよく見てみると、そこには小さいながらも生きものが動いているのが見えます。長谷川氏からは「変わりゆく都市に残る変わらない自然を調べてみたい、住吉大社の御田を調べたいと思い、勇気をもって聞いてみたところその熱意が伝わり調べ始めました。ここにはほんとうに希少な生きものが残っていてみなさんに紹介したいと思います。この水は、この御田の水です。よく見てみると、小さな生き物が、しかもたくさんの種類がいます。」

屋内会場に移動し3人のセミナー開始
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屋内会場に移動し3人のセミナー開始

河口真理子氏がモデレーターとして進行
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河口真理子氏がモデレーターとして進行

御田から境内にある神館に会場を移し、河口氏からの「なぜ住吉大社に田んぼがあるのでしょうか」の質問から、第2部の生物多様性セミナーが始まりました。

岡氏からは、「古代から日本では自然に神様が宿るという考え方がある中で、1800年の歴史を持つ住吉大社は海の神様を祭っています。神様へのお供えとしてお米を捧げているが、そのお米を自分たちで作ろう、となり境内に田んぼをつくったと伝えられています。御田植神事だけではなく、いまでは田んぼの土を集めて子どもたちに提供して水の中に土を入れると生きものを見つけることができる『なぞの土』を配ったり、食育学習のプロジェクトを進めるなど、地元の子どもたちと取り組んでいます。」

河口氏からは、「では、その土とはいったい何でしょう」という質問に、

長谷川氏からは、「岩石が風化しものに動植物などの遺体など様々な生きものが関わって土ができていきます。御田の植物として、カワヂシャ、ハマヒエガリなどは希少で市内では非常に少なくなっています。境内に育つウツギにはコガタウツギヒメハナバチというウツギと関係性の深いハチが訪れます。また、住吉大社の古木の腐った部分のウロが残っていて、こちらも生きもののすみかとなっています。こういった、生きもの同士のつながりがある、それが残っているということが大事だと思います。」

岡氏と長谷川氏から身近な暮らしとのつながりのお話
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岡氏と長谷川氏から身近な暮らしとのつながりのお話

つぎのテーマとして、河口氏から「土は生きている、ウツギとヒメハナバチなど生きもの同士にはパートナーや関係性がある、生きものどうしがつながっている。神事で田植えをするその田んぼにも生きものの循環がまわっていて、私たちはお米を食べることができて、ありがたいことなんだなあと思います。では、このつながりである生物多様性をどう具体的にとらえたらいいのでしょうか」とのご質問に長谷川氏、岡氏が答えてくれました。

長谷川氏からは、「多様性は生きものが多様、遺伝子が多様、環境が多様というのはわかるのですが、大阪市内の田んぼと郊外の田んぼを植物の種数を調べたところ、じつは大阪市内の方が種数が多くて、それは外来種が多いからというのがわかりました。生物多様性は、生きものが多いことだけではなく、やはりいろんな生きものとのつながりがあることが大事だと考えています。」

岡氏からは、「生物多様性という言葉がある前から、日本では自然に対しては抗わないという文化であります。長谷川先生から教えていただき、住吉大社にも希少な生きものがいると知ったからには、守りたい。では、守るにはどうすればよいか、次の世代に残すにはどうしたらよいかを真剣に考えています。すみよっさんがこれまでの1800年受け継がれているように、つぎの1800年を続けられるようにとの使命感があります。」

河口氏からは、「今日のお話を受けて、サイエンスの長谷川さんと神道の岡さんと、生物多様性を真ん中に置いてつながっている、面白い関係があるのが明らかになったのではないでしょうか。生物多様性は難しいとは言われますが、八百万の神、ミジンコもヒメハナバチもキツネもすべての生きものや恵みというのを言い換えて、サイエンスっぽく言うと、それが生物多様性ではないかなと思っています。生かされているネットワークがあるよ、それは感謝すべきことであり、簡単に崩れてしまうことであることなのですから、リスペクトしていくことを今日持ち帰っていただきたいと思います。」

最後に、セミナーを聞いていた参加者からの質問で、普段の生活で誰でもできることは何か、に対して登壇者3人からメッセージを発していただきました。

長谷川氏からは「大切に食べること。食べ物は、生物多様性の結果できているもの。私たちはいろんな各地の生物多様性をいただいています。その多様性を食べているからには大事にしてほしいと思います。」

岡氏からは「感謝。ありがとうございます、という言葉が大切だと思います。夜の住吉大社にはゴキブリがいます。でも、ゴキブリがいることでたくさんの落ち葉の分解を手伝って土をつくっています。生きものが境内を守っていると気づくことがたくさんあり、やはり感謝の気持ちが大事です。」

河口氏からは「お二人の意見に賛成です。付け加えると、自分でお料理をつくってみる、自分で食べ物を育ててみてください。そうすることで自然に感謝する気持ちが生まれくる、その気持ちを持ってほしいと思います。」

質疑応答も盛り上がりセミナー終了後も意見交換
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質疑応答も盛り上がりセミナー終了後も意見交換

パネル展示にも興味津々の参加者
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パネル展示にも興味津々の参加者

子どもたちも熱心にパネルで勉強しています
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子どもたちも熱心にパネルで勉強しています

登壇者3人で撮影、楽しい有意義なお話をありがとうございました
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登壇者3人で撮影、楽しい有意義なお話をありがとうございました

【動画】当日のセミナーの様子

<イベント概要>
「生物多様性ってなんだろう~田んぼをめぐるおはなし~ 大阪の住吉大社で田んぼ生きもの解説&セミナー」
日時:2023年6月17日(土)15時~17時
場所:住吉大社
参加者数:150名
主催:住吉大社、大阪市立自然史博物館、WWFジャパン

関連リンク

■住吉大社
住吉大社の由緒摂津国の一之宮で、全国に約 2300 社ある住吉神社の総本社。 神功皇后摂政 11 年(西暦 211 年)に鎮座。 祭神は、海中から出現された底筒男命・中筒男命・表筒男命と神功皇后を祀る。社殿は神社建築史上最古の「住吉造」で、大阪市内唯一の国宝建造物。 大阪人からは「すみよっさん」と親しまれ、正月には 200 万人の参詣を数える。古来より遣隋使・遣唐使に代表される航海の守護神として崇敬され、また安産・厄除・外交 の祖神とも仰がれている。
https://www.sumiyoshitaisha.net/

■大阪市自然史博物館
大阪市長居公園にある博物館。人間をとりまく「自然」について,成り立ちやしくみ,その変遷や歴史を展示するとともに、普及活動・研究も活発に行っています。巨大なナガスクジラ、ナウマンゾウたちが皆さんのお越しをお待ちしております。
https://www.omnh.jp/

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