大盛況!「FSC森林サミット2011 in 山梨」開催報告
2011/10/12
2011年9月10日と11日、山梨県甲府市で「FSC森林サミット2011 in 山梨」が開催されました。全国からFSCや林業、森林管理、紙や木材など森林資源を利用する製品の流通や販売に関わる人々が参加し、現状の問題点やFSC認証を受けた森林や製品を普及するための戦略など、さまざまな議論が行なわれました。また、今回のサミットは関係者だけでなく一般の人々にも森とそこから生まれる紙や木材などに触れ、その価値を楽しみながら理解してもらうことを目的としたイベントや展示コーナーも設けられ、全体ではのべ1000人あまりが来場。活気あふれる2日間となりました。
白熱!2日間にわたった数々のセッション
FSC(森林管理協議会)の森林認証制度は、環境や地域社会に配慮して木材を生産する森林と林業、そして流通や加工のプロセスを「認証」する制度です。
認証を受けた木材製品につけられるFSCマークは、適切に管理された森林から生産された製品の証。生産者や消費者も、環境に配慮しながら森林資源の利用を広げられる仕組みです。
FSCは1993年にWWFなどの協力によって成立し、世界中の森で認証の輪を広げてきました。
2010年までに、FSCの認証を受けた森林は、世界79カ国にあり、その総面積は約1億4000万ヘクタールに拡大しています。
このFSC認証を広げるためのイベントが、日本で開催されました。場所は、国内で最も広いFSC認証林がある山梨県です。
2日間の会期中に開催されたセッションは、全部で10。その一つに「新しい認証の形・プロジェクト認証」がありました。プロジェクト認証とは、通常のFSC製品を認証する場合に必要なCoC(Chain of Custody:加工流通過程の管理)を取得せずに、プロジェクト(建築物、船、芸術作品など)そのものを認証する仕組みです。
もちろん原材料の50%以上がFSC認証木材であること、それ以外の部分についても基準は設けられていますが、一連の工程に関わる全ての事業者や個人などがCoCを取得する必要はありません。
その例として、2010年に完成した静岡県浜松市天竜区役所の新庁舎(一部)や、WWFジャパンが2006年に製作したサバニと呼ばれる沖縄で古くから使われてきた木造の小型漁船が紹介されました。
天竜区役所のプロジェクト認証を担当した浜松市職員藤江俊允氏からは、地域の資源をうまく活用することができ、メディアなどでも数多く取り上げられたことにより、天竜の森林と木材の価値を向上することにつながったとの発表がありました。
会場からは、現場に携わる人ならではの突っ込んだ質疑応答が盛んに行なわれ、プロジェクト認証への関心の高さが伺えました。また、今回のサミットでは、認証材を使った国際彫刻シンポジウムが開催されましたが、この彫刻作品もプロジェクト認証による認証を受けています。
木に触れ、森に触れる
会場となった山梨県立大学には、FSCの森林認証を取得した全国の森を紹介するパネルともに、FSC紙を使用した紙ヒコーキ大会、紙の原料となる木材チップでいっぱいのプール、積み木など、子供たちも森の恵みに直接触れ、遊びながら学べるコーナーが設けられました。
また全てのセッションの終了後には、CoCを取得した集成材工場の見学や、山梨のFSC森林認証を取得している県有林を訪れるエクスカーションも行なわれました。ここでは、参加者が森林管理のプロから、森林を上手に管理しながら、将来にわたって使い続けるためにどんな計画的な管理が行なわれているかを、実際に林道から森に入ったりもしながら話を聞き、森の中でも熱の入った議論が行なわれていました。
FSC本部より発表された「ジャパン・キャンペーン」
さらに、サミットには、ドイツのFSC本部より来日したアンドレ・デ・フレイタス事務局長も参加。「FSCにとって日本が重要な国であることは間違いない。このキャンペーンが需要の促進、市場の拡大につながるようサポートをしてゆく」と述べました。
サミットの直前の9月9日には、FSC本部から、日本国内でFSC普及のためのキャンペーンを行なう、との発表もあり、その詳細は今後、FSCジャパンが主体となって具体化する予定です。
FSCジャパンの太田猛彦議長は、「この機会を活かし、FSCが日本国内でますます普及していくよう力を尽くしたい」と言います。
FSCの森林認証制度に認められた製品を選んで購入することは、環境に配慮された製品を選ぶことであり、同時に、そうではない製品を市場から排除することでもあります。
WWFでは今後も、FSCという信頼の置ける制度によって認証された製品の価値が理解され、このマークのついた製品がより市場で選ばれるよう普及に取り組んでゆきます。