イベント報告:外来種って「ワルモノ」なの? WWFの人に聞いてみよう


普段の暮らしの中でも身近に見られる外来種。この人の手によって持ち込まれた動植物が今、さまざまな問題を引き起こしています。しかし、放された生きものたちに罪があるわけではありません。この問題をどう考え、どう取り組むのか。それを考えていただくイベント「外来種って「ワルモノ」なの?WWFの人に聞いてみよう」が、2018年4月29日、東京の多摩六都科学館で同館にて開催されました。

外来種の問題

日本に本来生息していた「在来」の生物を捕食したり、すみかを奪ってしまう「外来種(外来生物)」。

他にも、人にも感染する病気を媒介するケースや、植生や景観そのものを変えてしまう、といった問題を引き起こすことも知られています。

外来種の脅威により、生息が脅かされている世界の野生生物は、およそ4,800種。

その脅威は、地球温暖化や自然破壊、密猟などと並ぶ、野生生物を絶滅の危機に追い込む大きな問題になっています。

一方で外来種は、普段の暮らしの中でも目にすることのある、身近な存在、にもなりつつあります。

そんな外来種について考えてもらうイベント「外来種って「ワルモノ」なの?WWFの人に聞いてみよう」が、2018年4月29日、東京の多摩六都科学館で開催されました。

ゴールデンウィークの2日目にあたるこの日。

生きものの大好きな小学生の皆さんをはじめ、80名以上の方がご参加くださいました。

多摩六都科学館

イベントの様子。同館レクチャールームにて。

身近な外来種たち

イベントでは、WWFジャパンのスタッフが、まず身近な外来種の例として、「ミドリガメ」の名前で知られるミシシッピアカミミガメを紹介。

北米産のこのカメが、いつ頃、どんな目的で持ち込まれ、どのような人や環境にどのような影響を及ぼすか、をお話しました。

写真を見た瞬間に、会場からは「ミシシッピアカミミガメ!」という元気な声が上がったほどの、超有名な外来種ではありましたが、その影響については、なかなか知られていないことも。

ペットとして飼われていた個体が野外に放され、他の野生の生きものを食べてしまうこと、は知っていても、サルモネラ菌を媒介することもある、といった説明には「ええ!」という声も聞かれました。

さらに、なじみ深い日本の「ワカメ」が、外国で外来種になっている例や、セイヨウオオマルハナバチのように、農業に活用するために海外から持ち込まれた動物が、意図せず外来種になってしまう例。

北海道に放されたカブトムシのように、日本国内の動物でも、もともとすんでいなかった場所に移動させることで、外来種問題が起きてしまう例があることも紹介。

影響だけでなく、その問題を防ぐための方法にも、さまざまなポイントがあることをお伝えしました。

説明するWWFスタッフ

ミシシッピアカミミガメ

コイ。実は純粋に野生のコイはほとんどいません。多くは人の手で放されたものです

自然、そして命と向き合う

生態系を壊し、他の生物を損なってしまう外来種。

ですが、それを自然界に持ち込んだのは人間です。

外来種とはいえ、持ち込まれたその場所で生き延びているその個体に罪があるわけではありません。

「ワルモノ」が外来種ではなく、ヒトの側であることも、これは明らかなことです。

しかし、外来種の生息する現場では、自治体によるミシシッピアカミミガメの捕獲が行なわれています。

また、外来種法では特に影響の大きな外来種を「特定外来生物」として指定し、持ち込みの規制や駆除といった対応が進められています。

その一方で、生態や習性などを知らないままペットにしてしまい、途中で困って飼えなくなった動物を、野外に放してしまう例が、今も後を絶ちません。

こうした問題を防ぐため、特に日々の暮らしの中でもできることとして、WWFジャパンではこの日、次の三つのことを皆さんにお伝えしました。

カブトムシ。「国内外来種」例としてご紹介しました。外来種は海外からやってくるとは限りません。

アライグマ。可愛さから人気が出てペットとして輸入されましたが、気性が荒く、飼えなくなった人が放してしまい、野生化しました。知識がないまま飼ってしまったことで、外来種化した一例です。

  1. 自然のなかで見つけた生きものは、生きたまま移動させない
  2. ペットショップで新たなペットを買うときは、どんな生きものかよく聞く
  3. その個体が死ぬまで、放さずに飼ってあげる

外来種の問題は、簡単に解決するものではありませんが、一人ひとりが理解を深め、上のような対応をするだけでも、大きく状況は改善され、失われる命も減らすことができます。

イベントにご参加くださった皆さんにはこれを機会に、生きものと向き合う視点と責任を、これからもしっかり考えていただければと思います。

外来種の展示も実施

なお、今回のイベントに際しては、4月28日~30日まで、会場となった多摩六都科学館の科学学習室にて、実際にさまざまな外来種を来館者の皆さまに見ていただく展示「飼う 其の前に~知っておこう!外来種問題」も行なわれました。

科学館のスタッフの皆さんが、この施設ならではのさまざまな教材や収蔵品を使ったこの展示。

5センチほどの小さなかわいいミシシッピアカミミガメが、数年で30センチほどの大きさまで育つことの説明のほか、アメリカザリガニ、ブラックバス、ヒアリといったさまざまな外来種の生体や標本も並べられ、見に来た子どもたちも興味津々の様子でした。

今回の一連のイベントのご参加くださった方にいただいたアンケートでは、

  • 面白い、でもかわいそう
  • 外来種に対する皆さんの関心の高さをうかがえました
  • 外来種はイメージで悪者と思っていましたが、もともとの場所とは違うところで生きなければならなくなったのだと知りました
  • 生きものを観察したらその場所に返して帰るようにしたい
  • 約束を忘れずにペットを飼いたいです

といったコメントをいただくことができました。

WWFジャパンとしても引き続き、この外来種問題に取り組んでゆきます。

ご参加くださった皆さま、そしてイベントを開催くださった多摩六都科学館の関係者の皆さまに、心よりお礼申し上げます。

科学学習室での展示「飼う 其の前に~知っておこう!外来種問題」

ヒアリ。最近大きく話題になった、毒を持つ南米産の外来昆虫。2ミリほどの標本を顕微鏡で見せる展示が行なわれました。

イベント概要:外来種って「ワルモノ」なの? WWFの人に聞いてみよう

日時 2018年4月29日(日)
講師 WWFジャパン
自然保護室 国内グループ・リーダー 並木崇
C&M室 普及教育担当 松浦麻子
場所 多摩六都科学館(東京都西東京市芝久保町5-10-64)
レクチャールーム
来場者 84名
主催 多摩六都科学館
特別協力 WWFジャパン
備考 展示「飼う 其の前に~知っておこう!外来種問題」
2018年4月28日~30日
多摩六都科学館 科学学習室

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