フェアワイルド ~人と野生植物に「フェア」な世界の基準
2010/09/21
薬品や香料(アロマ)、食品などに含まれる、さまざまな成分の中には、自然の植物に由来した天然の成分が多く含まれています。しかし、そのために特定の植物が、過剰に採集され、絶滅の危機に追い込まれるケースは少なくありません。「フェアワイルド」は、こうした問題を解決するため、持続可能な形で採集された植物を、国際的な基準で「認証」する国際基準です。
利用される40万トンもの自然植物
私たちは普段の暮らしの中で、さまざまなところで自然の植物の恩恵にあずかっています。
薬品や香料、食品、染料、さまざまな製品の原料として、自然の植物に由来した天然の成分を利用しているのです。この植物の恵みは、私たち人類の暮らしに、欠かすことの出来ない、大切な恵みです。
しかし、その利用が過剰になってくれば、採集される植物は数を減らし、絶滅してしまうかもしれません。
実際、薬用や香料として利用されている植物の種数は、世界に5万~7万種といわれていますが、そのうちの1万5,000種が、実際に絶滅の危機に瀕しています。
今、世界で年間に利用されるこれらの自然の植物は、合計で40万トン以上。
適切な保護と利用のバランスを考えなければ、消費の拡大に応じて、危機にさらされる植物は、今後更に増えてくることになるでしょう。
天然の植物の利用を考える
発展途上国では、自然の植物が約8割の人々の健康管理に大きく役立っており、人々の暮らしに欠かせないものとなっています。また植物の採集で生計を立てている人も多く、先進国でもそれを輸入し、消費しています。
消費量が問題ならば、人工的に栽培すればよいかというと、必ずしもそうではありません。
栽培が非常に難しい植物や、栽培のコストが高く、採算が取れないケースも多くあるからです。
人の健康や生計に配慮するならば、天然の植物の利用を一方的に規制するのではなく、持続可能な形で「使い続ける」ことができるように、社会的な仕組みとルールを整える必要があります。
世界の人と植物のための「フェアワイルド」
そこで、「フェアワイルド」の基準が誕生しました。
この基準は、野生の植物の保護を目的としたエコロジカルな要素と、フェアトレード(途上国の人々の権利と利益を尊重して行なわれる取引)を活用した、地域への支援を要素とした、世界で初めての国際的な基準です。
さらに、この「フェアワイルド」の基準を満たし、「認証」を受けた、薬用や香料の植物製品には、オリジナルのラベルが付けられ、消費者にもそれが自然に配慮したものであることが、一目で分かる仕組みになっています。
先進国の消費者も、このラベルの有無を見ることで、その製品が、途上国の自然や人々に配慮して採集され、生産された製品であることを、確認できます。
「フェアワイルド」認証は、認証が開始された2008年から、世界的に広がりを見せており、2010年にも、13の国で23の野生の植物採集を行なっている企業が、認証の取得に動いています。
「フェアワイルド」の認証を受けられる製品
「フェアワイルド」の基準は、WWFやトラフィック、IUCNなどが開発した「薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採集に関する国際基準(ISSC-MAP)」を、包括しており、「フェアワイルド・ファウンデーション」という機関によって、現在運営されています。
その基準は、野生の植物などの適切な採集と、その取引について、守るべき11の主要なテーマを掲げています。
- 野生の植物資源の維持
- 環境に対する悪影響の回避
- 法律、規則、協定の遵守
- 慣習上の権利および利益の配分の尊重
- 採集者と雇い主の間での公平な契約関係の促進
- 野生からの採集活動への子供の参加の制限
- 採集者とそのコミュニティーへの利益の確保
- フェアワイルドの採集事業で働くすべての労働者へのフェアな労働条件の確保
- 責任のある管理手法の適用
- 責任あるビジネス手法の適用
- フェアワイルドの購入者による関与の促進。
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