黄海・鴨緑江河口の干潟で生物調査を実施


2010年9月8日、中国東北部の遼寧省丹東市の北井子鎮で、干潟の生物調査を行ないました。この調査は、WWFが「黄海エコリージョン支援プロジェクト」の一環として、2010年から支援を開始した取り組みの一つです。渡り鳥のシーズンと言うこともあり、干潟には数千羽の鳥たちの姿を見ることができました。

海の豊かさを象徴する「渡り鳥」

東アジアを代表する大陸棚を持つ海、黄海。この海にそそぐ鴨緑江の河口には、最大で3万羽を上回るシギやチドリなどの渡り鳥が飛来する、国際的にも重要な干潟が広がっています。

このたくさんの渡り鳥の存在は、海の自然環境にとって、非常に大きな意味を持ちます。

鳥たちが多く見られるということは、食物となって、その生存を支えられるだけの底生成物、たとえば、ゴカイや貝、カニなどが豊富に存在している、ということ。つまり、自然がとても豊かで、生きものの生産性が非常に高く、漁場としても豊かな場所であることを、示しているからです。

中国東北部に位置する鴨緑江河口には、8月の終わりからは、アラスカやロシアの北方のツンドラで夏を過ごし、繁殖を終えたハマシギやダイシャクシギなどが飛来し、干潟で栄養を補給した後、多くがここからさらに南を目指して飛び立ちます。

しかしこれまで、現地の海では、鳥の食物となる貝やゴカイの仲間について、どのような種類が、どれくらい生息しているのか、調査されてきませんでした。

自然の現状を明らかに

鴨緑江河口の干潟の一部にあたる、遼寧省丹東市の沿岸には、1997年に渡り鳥の保護区に指定された「鴨緑江浜海湿地国家級自然保護区」があります。

しかしここでも、これまで調査のための資金が確保できず、また、干潟の泥の中にすむ小さな生きものを識別できる研究者もいなかったため、調査が実施できませんでした。

そこで、WWFでは「黄海エコリージョン支援プロジェクト」の一環として、2010年より、遼寧省政府の海洋漁業庁に協力する形で、干潟の底生生物調査の支援を開始。
この9月には、春の3月~4月、および6月に行なった2回の調査に続く、3回目の調査を実施しました。

この調査では、あらかじめ決められた大きさの枠を使い、まず、決まった量の泥を掘り上げます。そして、この泥をふるいに入れ、泥だけを流し、ざるに残った中の生物を探し出していきます。

腰をかがめながら、ゆうに一抱えもある泥を掘り出し、ふるいにかけるのは、大変な重労働ですが、調査ではこの作業を、1日あたり一つの調査地区内につき5つの地点で、4~8回行ないます。

保護区全体には、この調査地区が5つあり、さらにこれを、春夏秋の3回分行ない、加えてサンプルをそれぞれ複数回取る作業も行なっています。

保全対策の基礎として

今回、調査を担当してくれたのは、遼寧省政府の海洋水産科学研究院に所属する、宋倫さんほか、3名の若手研究者の皆さんです。

また、WWFジャパンからも、担当者2名が現場入りし、沖合数キロメートルまで潮の引いた干潟で、渡り鳥たちが飛び交う中、調査を行ないました。

これらの調査の結果は、干潟を利用している渡り鳥たちが、生きる上で必要とする食物の現状を把握し、それが十分に維持されているのか、もっと積極的に回復させる対策が必要なのかどうか、といった判断してゆく上で、欠かせない情報になります。

それは、長期的には、漁業資源を保全し、その持続可能な利用を促進してゆくための、基盤にもなるものです。
WWFでは、2012年12月まで、この鴨緑江河口での調査支援を継続してゆく予定です。

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多くの渡り鳥が訪れる干潟。しかし、沿岸では開発も進んでおり、ナマコなどの養殖場が急激に拡大している。

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干潟の生きものたち。

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泥をかき出しての調査。泥にもぐっている生きものを探す

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