日本の湿地は守れるか 問われるCOP10の意義


2010年10月22日、名古屋で「日韓を中心とした湿地と生物多様性に関するホットイシュー」という会合が開催されました。今も各地で失われる湿地の生物多様性の現状が報告されたこの会合は、COP10を誘致した日本に「足元の環境をしっかりと守ってほしい」という強いメッセージに満ちたものとなりました。

日韓の湿地と生物多様性 上関からの報告も

この会合には、日本、そして韓国から、干潟や湿地の保全に取り組んでいる市民グループが集い、各地で危機にさらされている沿岸海洋の生物多様性の現状を語り合いました。
WWFが 長年にわたって保全を訴えてきた沖縄本島の泡瀬干潟や、九州有明海の諫早湾干潟についても、地元で活動を続けている市民グループから報告がありました。

また、今まさに原発建設工事の強行がニュースになっている、山口県上関からもお話がありました。

ご報告をされたのは、「長島の自然を守る会」の高島美登里さん。
上関原発の建設予定地で、海の埋立てが計画されている瀬戸内海の田ノ浦と、祝島を含む周辺の島々の、豊かな生物多様性について、そして、地元住民の反対にもかかわらず理不尽に進められる原発の建設計画の現状を語ってくださいました。

失われ続ける湿地の生物多様性

このフォーラムでお話くださった方々は、いずれも何年にもわたって、干潟をつぶしてしまうような開発計画に対し、見直しを求め続けてきた人たちです。

ただ反対するだけではなく、計画の代替案を出したり、自主的な環境アセスメント(環境影響調査)を実施して、科学的な情報を集めて提示するなど、多くがボランティアでありながらも、信頼性のある確かな取り組みを行なってきました。

それでも、一度始まった事業は、なかなか止まらない。

皆さんはそのような経験をしてきているだけに、会合の場は「日本は、COP10を誘致して、生物多様性の保全をうたったのだから、実際に今、危機にさらされている足元の環境をしっかりと守ってほしい」という強いメッセージであふれていました。

問われるCOP10の価値

今でこそ、「干潟や湿地は生物多様性に富んだ環境だ」ということが日本でも広く知られるようになりましたが、少し前までは、ただのじめじめした「役に立たない土地」だといわれていました。

その状況を大きく変えるきっかけとなったのが、1993年に北海道の釧路市で開かれた、世界の湿地の保全を目的とする国際条約「ラムサール条約」の締約国会議です。

今回開かれている、生物多様性条約のCOP10も、かつての釧路会議のように、日本の自然環境の保全を大きく前進させるきっかけとなり得るのか。名古屋会議における日本政府の信念と、この先の取り組みのあり方が今、問われています。

 

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