被災地・福島県松川浦での生物調査速報を公開


津波の被災地の自然は今どうなっているのか?2011年9月に福島県相馬市の松川浦で実施した、底生生物調査および鳥類調査の結果速報がまとまりました。WWFの「暮らしと自然の復興プロジェクト」の支援地域の一つでもある松川浦は、東日本大震災以前から、生物多様性豊かな沿岸の湿地として知られている場所です。

被災した松川浦の自然

松川浦は福島県相馬市に位置する面積738haの汽水湖です。ホソウミニナ、イソシジミなどの底生生物の生息地として環境省「日本の重要湿地500」に選定されています。

これまでに確認された底生生物は200種以上とされ、仙台湾(宮城県石巻~福島県相馬市までの海域)に点在する干潟の中では最大となっています。

また、福島県立自然公園、日本百景にも指定され、生物多様性ならびに景観の優れた自然環境です。湖内ではノリとアサリを中心とした漁業が盛んである他、魚類の中間育成場として沖合の漁業を支えています。

今回の震災では、地盤沈下が起こるとともに、海底の土砂が海から持ち込まれたり、逆に持ち去られたりしたことで、底生生物の生息環境が大きく変化したと考えられます。
アサリ漁やノリ養殖の再開見通しもいまだに立っていません。そのため、底生生物の生息状況とその生息環境である底質(海底の土砂の環境)の調査、把握が必要です。

また松川浦は、環境省「モニタリングサイト1000」の底生生物およびシギ・チドリ類の調査地でもあります。

シギ・チドリ類をはじめとする鳥類は湿地生態系の上位に位置し、自然環境の豊かさを示す生物指標のひとつ。ところが、松川浦は地元の調査体制が整っておらず、今後の継続性が課題となっていました。

また、水産業との対立すると見なされやすいのも鳥類です。地元の調査体制を確立するとともに、水産業との共存を考えてゆく必要があります。

行なった調査と結果

今回の調査は、2011年9月10~11日の期間に、底生生物および底質を東北大学の鈴木孝男氏に、鳥類をNPO法人バードリサーチの守屋年史氏に委託実施しました。

底生生物・底質については、松川浦4地点で調査を実施。底質は泥分が失われた地点や、砂質が持ち込まれた地点など、地点によって異なった影響が認められました。
底生生物については二枚貝がほとんど見られず、種の多様性は大幅に低下していることがわかりました。

また、鳥類については、松川浦6地点と、その後背湿地9地点で観察を実施し、2日間で39種の鳥類を確認しました。渡り鳥である、シギ・チドリ類は9種類、2010年秋季に行なわれた調査結果と比較すると、確認された種に違いはあるものの、顕著な違いは認められませんでした。

今回は速報であり、詳細な影響評価はさらなる調査や分析を重ねる必要がありますが、これは津波が襲った被災地の自然の現状を知る、一つの手がかりとなるものです。
WWFジャパンでは、今後も調査を継続する予定です。

調査について、詳しくは、以下の速報をごらんください。

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被災した松川浦。5月に撮影したもの

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流木の上にシギ類が並んで止まっていた

流された漁船

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9月の調査で確認された渡り鳥のシギ類

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9月の調査

報告書(PDF形式)

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