油流出事故から2カ月 海へ帰ったペンギンたち


2011年10月、ニュージーランド北島の沖でタンカーが座礁する事故が発生。油が流出し、周辺の自然と、そこに生息する水鳥類に大きな被害が及びました。WWFニュージーランドは事故直後より、その救護活動と、油汚染を除去する取り組みに従事。そして、事故からおよそ1カ月半が過ぎた11月22日に、救助・保護されていたペンギン類の一部が海に還されました。

タンカー事故への緊急対応

2011年10月5日、ニュージーランド北島のタウランガ沖でタンカーが座礁、約350トンの重油が流出する事故が起きました。この沿岸は、絶滅の恐れがあるニュージーランドチドリの重要な生息地であるほか、さまざまな水鳥たちが暮らす海域でもあります。 

今回の油汚染では、2,000羽以上の海鳥が犠牲になったことが確認されており、油で汚染されたコガタペンギンを始め、ミズナギドリ、ウミツバメ、カツオドリ、アジサシ類など、計数百羽の水鳥たちが、WWFニュージーランドや同国政府の野生生物油汚染対策チームにより救出され、油の洗浄や手当てなどの処置を施された上で、これまで保護されていました。

重油で汚れたビーチは、大勢のボランティアたちが清掃にあたりました。そして11月22日、野生生物油汚染対策チームは、保護していた鳥たちのうち、第一弾として49羽のコガタペンギンを海に返しました。

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保護されたコガタペンギン

WWFニュージーランド海洋担当のボブ・ズールは、今回の野生復帰に際して以下のように語っています。

「今、ペンギンたちを海に返せば、再び油に汚染される可能性が残されています。しかし、野鳥を長期間保護するのもまた、リスクがあります。病気や体調の悪化、継続したストレス、社会性の喪失、人なれの問題など、さまざまなトラブルが考えられます。野生生物油汚染対策チームは、いろいろな要素を熟慮した上で、今、ペンギンたちを野生に戻すという選択をしました。この選択は正しいと思います。現在はちょうど、今年二回目の繁殖期でもありますから」。

事故後のこれからに向けて

WWFニュージーランドは、今回のタンカー事故直後から、スタッフをタウランガの現地に送りこみ、海鳥の救護や海岸清掃に参加したほか、他のNGOと共に野生生物汚染対策チームの一員にも加わってきました。また、この地域の環境影響についても調査し、今後の変化に注目しています。

実際、油汚染の事故が起きると、何年にもわたり環境中に油が残ってしまう場合があるため、長期的にもその影響が懸念されます。

今回の事故についても、周辺の環境にどのような影響が及んだのか。その全貌を明らかにするには、数年にわたる調査の結果を待つ必要があると考えられます。

それでも、事故直後の多くの汚染が取り除かれ、野生の鳥類が生きる環境が戻り始めたことは朗報であり、対策に尽力した人たちの努力が、良い形で報われた証といえるでしょう。

「今回の事故で、多くの動物たちが死んでしまったのを目の当たりにしました。ですから、健康で、すっかりきれいになった鳥たちが故郷の海へと戻っていくのを見るのは、とても励みになります」ズールは言います。

WWFニュージーランドは近々、地域の市民グループによる環境復元活動を支援してゆくことにしています。

 

 

 

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清掃にあたるWWFニュージーランドのスタッフ

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重油で汚染された事故直後の海岸

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海へ戻されたコガタペンギン

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